Sedated : Hozier

2017年05月14日




Just a little rush, babe *1
快感なんてほんの少しなんだよ
To feel dizzy, to derail the mind of me *2
その後には眩暈のような混乱と理性の逸脱
Just a little hush, babe *3
静寂なんてほんの少しなんだよ
Our veins are busy but my heart's in atrophy *4
血管はせわしなく働き、心臓は消耗し衰える
Any way to distract and sedate *5
気を紛らわし気を静めるどんな方法も
Adding shadows to the walls of the cave *6
洞窟の壁に新たな影を加えるだけなんだ

※ You and I nursing on a poison that never stung *7
君と僕は毒の乳を飲んできた。それは苦痛をもたらすものではないが
Our teeth and lungs are lined with the scum of it *8
僕たちの歯と肺の内側は、毒の浮きかすで被われている
Somewhere for this, death and guns
この行き着く先は、銃による死
We are deaf, we are numb *9
僕たちは耳が聴こえず、感覚は麻痺している
Free and young and we can feel none of it ※
自由と若さ。そのいずれも感じることができない

Something isn't right, babe
何かが間違ってるんだよ
I keep catching little words but the meaning's thin *10
僕はわずかな言葉をつかまえている。けれども、その意味は乏しい
I'm somewhere outside my life, babe
どこか本当の自分の生命の外側にいるみたいだ
I keep scratching but somehow I can't get in
この境界を爪で引っかいているのに、どうしても中に入れない
So we're slaves to any semblance of touch *11
僕たちは "うわべだけの触れ合い", "見せかけの感触" の奴隷なんだ
Lord we should quit but we love it too much *12
ああ、もうやめたいのに。僕たちはそれが好きでたまらない

☆ Sedated we're nursing on a poison that never stung
鎮静剤を打たれてる。僕たちが飲んでいる乳は苦痛をもたらさないが
Our teeth and lungs are lined with the scum of it
歯と肺の内側は毒の浮きかすで被われている
Somewhere for this, death and guns
この行き着く先は、銃による死
We are deaf, we are numb
僕たちは耳が聴こえず、感覚は麻痺している
Free and young and we can feel none of it ☆
自由と若さ。そのいずれも感じることができない

Darlin', don't you, stand there watching, won't you *13
お願いだ。ここにいてくれないか。見守っていてくれないか
Come and save me from it
ここに来て助けてくれ
Darlin', don't you, join in, you're supposed to *14
お願いだ。協力してくれないか。いや、してくれるだろう?
Drag me away from it *15
僕を "それ" から引き離してくれ

Any way to distract and sedate
気を紛らわし気を静めるどんな方法も
Adding shadows to the walls of the cave
洞窟の壁に新たな影を加えるだけなんだ

※~※

☆~☆


備考
  1. rush : (人や群衆の)突進、殺到。(感情の)ほとばしり、奔出。忙しいこと、急ぐこと。襲撃、猛攻。(麻薬等による突然の)快感、恍惚感。
  2. dizzy : 目が回る。頭がくらくらする、混乱した、当惑した。目が眩むような、目まぐるしい。そわそわした、すぐに気が散る。愚かな、馬鹿げた
    derail : 脱線する、脱線させる、狂わせる、頓挫させる
    ※ "to dizzy, to derail" の to は、不定詞の「~すること、~すべき、~するために」等の「目的」よりは、前置詞的な「結果」や「方向 →」すなわち「rush の後に dizzy, derail が来る」という意味合いが強いように思う。そもそも、不定詞の副詞的用法「~するために…する」は「…する結果~となる」、名詞的用法「~するための…」は「…は結果として~をもたらす」と訳しても意味は変わらないのだろうと思う。ただ、これは感覚的な読解なので、文法的に間違っているかもしれない。
  3. hush : (騒動の後の)静けさ、静寂。歯擦音
  4. atrophy : (栄養不良等による)消耗症、萎縮。(機能の)退化、衰え。(道義心等の)衰退、衰微
  5. distract : 気を散らす、心をかき乱す(紛らす・迷わす)、気持ちを動転させる、取り乱させる。楽しませる、気晴らしをさせる
    sedate : (薬で)鎮静させる
  6. ※この一文はプラトンの『国家』にある「洞窟の寓話」を連想させる。そこでは、私たち人間が認識している事物は、あたかも洞窟の中の火に照らされた物体の「影」に過ぎず、そして私たちの世界ではその「影」こそが実体であるとの常識がまかり通っている。人間が真実に近づくためには、その「常識」を覆す困難を押して、火に照らされた物自体を見ること、ひいては洞窟を出て太陽の光に照らされた世界を見ることが必要だとされる。
  7. nurse : [自動詞] (赤ん坊が)乳を飲む。授乳する。看護師として働く、看病・看護する
    sting-stang-stung : 刺す、痛みを感じさせる、痛ませる。苦しませる、とがめる、心を傷つける、責めさいなむ、刺激して~させる
  8. line with : (衣服・鞄等に)裏を付ける、裏打ちする、内側を~でおおう。(財布・ポケット・胃等に)詰め込む、~で満たす
    scum : (沸騰・発酵で液体表面にできる)浮きかす、あく、あぶく。くず、かす。つまらない奴、人間のくず。精液
  9. deaf : 聴覚障害の、耳が聞こえない、耳が遠い。聞こうとしない、耳を傾けない、無頓着な
    numb : 麻痺している、しびれた、感覚を失った。感情が無感覚になった、茫然とした
  10. thin : 薄い、厚みのない。細い、細長い、やせこけた。まばらな、散在した。(液体・気体が)希薄な、こくのない。実質・内容のない、空疎な、浅薄な、貧弱な。
  11. semblance of ~ : ~の外見、うわべ、見せ掛け、装い。~に似たもの、~のようなもの、~の類似
    touch : 触れること、接触、医師の触診。手触り、肌触り、触感。
  12. quit : やめる、よす、辞職する。立ち退く。断念する、敗北を認める
  13. ※ "Don't you stand there." という命令形であれば「そこに立つな」という禁止を表すが、ここでは歌い方が "don't you?" という疑問形であり後の "won't you?" と併せると「依頼や懇願」を表しているのだろうと思う。
  14. join : 接合する、留める、取り付ける。手などをつなぐ、協力する。合流する、一緒になる、合体する。(with ~, in ~ で)力等を~と合わす。参加する、加入する、加わる
    be supposed to do : ~することになっている、~するはずだ、~しなければならない、本来なら~するはずだ。※規則・法律等によるもの、約束等で行動が期待されているもの、一般に信じられているものなどの幅広いニュアンスが込められる。この歌詞の場合はおそらく歌い手の you に対する「期待」なのだろう。
  15. drag : 引きずる、引っ張る。重い足を引きずって歩く。(人を意志に反する状況・行動に)引きずり込む、(人を会合などに)引っ張り出す


 2014年のデビューアルバム Hozier より。主題は薬物依存からの脱却なのでしょうが、よく分からない部分がいくつかあります。
 一つは、*13 から4行で「助けてくれ」と頼んでいる相手の you が、*7 の「君と僕」の you とは別人のように思えることです。この「君」は「僕」と同様に薬物に依存しているのですから、その「君」に「助けてくれ」と頼むのは不自然だからです。しかし、もし別人だと *13 の you が何者なのかが不明です。いわゆる "神" に値するような存在なのかとも思ったのですが、神に対して "Darling" という呼びかけはさすがにしないと思われ、今の所これに関しては結論が出ません。
 もう一つは、*6 の「洞窟」の隠喩です。ただ単に歌詞を高尚に見せたい為にプラトンの寓話を持ち出したのであればつまらない歌詞だとも言えますが、もしかしたら、彼は薬物の使用を精神や感覚を高め高次の意識を手に入れる一手段と考えているのかもしれません。もしそうだとすると、この歌詞はマドンナの "Devil Pray" という歌と共通する趣旨があるのかもしれません。


 <関連記事>
  ☆ Devil Pray : Madonna

Foreigner's God

2016年10月06日

Foreigner's God : Hozier




She moved with shameless wonder *1
彼女は感嘆に価するほどの恥知らずなふるまいをした
The perfect creature rarely seen *2
こんな完璧な被造物はごく稀にしか見られない
Since some liar brought the thunder *3
とある嘘つきが雷のような怒号をもたらして以来
When the land was godless and free *4
この地は神のいない自由な地となった

Her eyes look sharp and steady *5
彼女の鋭く確固とした視線が
Into the empty parts of me
私の中の虚ろな部分に注がれる
But still my heart is heavy *6
だが、私の心は今もなお重苦しく陰鬱だ
With the hate of some other man's beliefs *7
ある者たちの信仰がはらむ憎悪のために

Always a well dressed fraud *8
いつだって詐欺師は良い身なりをしている
Who wouldn't spare the rod *9
そして、常に鞭を惜しむことがない
Never for me
私に対しては

Screaming the name of a foreigner's God *10
異国の神の名を叫ぶその声は
The purest expression of grief *11
悲痛な心の純粋な表れ

Wondering who I'll copy *12
私は、誰に倣おうか惑いながら
Mustering some tender charm *13
わずかばかりの優しい魅力をかき集める
She feels no control of her body
彼女は自分の体を抑えられないと感じている
She feels no safety in my arms
彼女は私の腕の中では安らげないと感じている

I've no language left to say it *14
私には、それについて言うべき言葉はもうない
But all I do is quake to her *15
だが、私の行為はすべて彼女をおののかせる
Breaking if I try convey it *16
私がそれを伝えようとすれば壊れてしまいそうだ
The broken love I make to her *17
私は彼女に壊れた愛をもたらす

All that I've been taught
私が教えられてきたものはすべて
And every word I've got
私の持つ言葉はどれも
Is foreign to me *18
異国のもののように馴染めない

Screaming the name of a foreigner's God
異国の神の名を叫ぶその声は
The purest expression of grief
悲痛な心の純粋な表れ


備考
  1. shameless : 恥知らずな、慎みのない、厚かましい、破廉恥な
    wonder : 不思議な(驚くべき)物・事・人、驚嘆・感嘆を引き起こすもの、奇跡。驚き、感嘆の念。
  2. creature : (人間以外の)動物、生物、人間、創造された物、神の創造物、不快な(恐ろしい)生き物
    ※ "creature" は意味の幅が広く使用者によって異なった意味を持たせられる。
  3. liar : 常習的な嘘つき
    thunder : 雷、雷鳴、落雷。雷のような(鳴り響く)音・声。威嚇、激しい非難、弾劾、怒号、熱弁。
  4. when : 非制限用法の関係副詞。そしてそれから、~するとその時、~したとたんに。"and" の意味が多いが、"but" や "for" などの意味でも用いられる。
  5. sharp : 鋭い、よく切れる、とがった。(勾配やカーブが)急な、険しい。(鼻・顔立ち・像などが)線の鋭い・輪郭のはっきりした。(感情・言葉等が)厳しい・烈しい。頭が切れる、すきのない
    steady : 固定された、安定した、ぐらつかない。むらのない、規則的な、不変の、絶え間ない、いつもの。(精神が)動揺しない、落ち着いた、確固とした、びくともしない
  6. heavy : 元気のない、沈んだ、悲しげな、陰鬱な。耐え難い、辛い、苛酷な。
  7. hate : 激しい嫌悪、憎しみ、憎悪
  8. well-dressed : 立派な服を着た、身なりの良い、身なりのきちんとした
    fraud : 詐欺、欺瞞、ぺてん、裏切り。まやかし物、詐欺師、ぺてん師。詐欺行為、不正手段。仮装。不正直、ずるさ、不実
  9. spare : ~を無しで済ます、予備としてとっておく。使い惜しみする、倹約する、控える。
    rod : 棒、棹。鞭。
    Spare the rod and spoil the child. : [諺] 鞭を惜しめば子供が駄目になる。可愛い子には旅をさせよ。元は旧約聖書『箴言』13章24節「むちを控える者はその子を憎む者である。子を愛する者はつとめてこれを懲らしめる」
  10. foreigner : よそ者、外国人。異質なもの、見慣れないもの、なじめないものという意味合いがある。
  11. pure : 不純物のない、純粋な。混ぜ物のない、単一の、同質の。傷のない、きれいな、清潔な、しみのない。潔白な、純真な、罪のない。肉体的に汚れのない、純潔な
    expression : 表現、表出、表示。発現、言葉、言い回し。表れ、表情、声の調子
    grief : 深い苦悩、深い悲しみ、嘆き、悲痛、悲嘆
  12. copy : (言葉等を)写す、書き写す。(絵・章句等を)複写・模写する。(人・長所等を)まねる
  13. muster : (勇気・精力等を)奮い起こす、(熱意・支持等を)寄せ集める。(軍隊・乗組員等を)集合させる、呼び集める、召集する
    charm : 魅力、魔力、(女性の)容色・色香・愛嬌。お守り、魔除け、呪文、まじない。
  14. language : 国語、個別言語。(一般に)言語、言葉。伝達記号体系、記号言語。(音声・文字によらない)言葉、身ぶり・鳴き声等による伝達手段。言葉づかい、言い方、文体
  15. quake : 地震。震え、おののき、震動、揺れ
  16. convey : 運ぶ、搬送・運送する。伝達する、伝える、告げる。譲渡する
  17. make love to ~ : ~と性交する。~といちゃつく、抱擁する、接吻する。~に言い寄る、~をくどく
  18. foreign : 外国の、他国の、外国から来た、外国産の。異質の、外から侵入した
    foreign to ~ : 無関係の、無縁の、合わない、なじまない、見慣れない、耳慣れない、なじみのない


 2014年のデビューアルバム "Hozier" より。
 詩的な隠喩に満ちた歌詞で意味の分からないところが多いため、自分なりの解釈を込めた意訳はしませんでした。そのため、ほぼ直訳の分かりにくい訳文になってしまいました。表面的には、自由な価値観を持つ「彼女」は「私」の恋人であり、「私」をとりまく排他的な文化や価値感が二人の関係を阻害しているという趣旨ではないかと想像しています。その価値観とは具体的に言えば性愛を人間の原罪とみなすキリスト教思想、とくにアイルランド人であるホウジァの場合はローマカトリック教会の思想を指しているのでしょう。
 そして、歌詞中の「彼女」は異教(pagan) の女神を隠喩するようにも思え、歌詞全体を、キリスト教文化圏に住みながら異教に憧れる主人公の嘆きや疎外感として解釈することもできそうです。その場合、彼女と関係を持つことは異教の思想に共鳴することを意味します。"foreign" に「合わない、無縁の、なじめない」という意味があることから、曲名の "Foreigner's God" はユダヤ・キリスト・イスラム共通の唯一神を指しているように見えますが、「異国の神の名を叫ぶその声は悲痛な心の純粋な表れ」という歌詞からは肯定すべき「異国の神=異教の神」と解釈した方がいいような気もします。
 *3 の「とある嘘つき」や「雷鳴」など分からない隠喩が散見するので細部の解釈がし切れませんが、キリスト教思想に対する違和感や嫌悪感がこの歌詞の主題だろうとは思います。


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   ☆ Take Me To Church : Hozier

The Bottomless Hole

2016年07月22日

The Bottomless Hole : The Handsome Family




My name I don't remember, though I hail from Ohio *1
自分の名は忘れたが、オハイオの出身なのは覚えてる
I had a wife and children, good tires on my car
妻と子供がいた。車には良いタイヤを履かせてた
What took me from my home and put me in the earth
そんな俺を家から連れ出しこんな地中に引きずり込んだのは
Was the mouth of a deep, dark hole I found behind my barn *2
口を開けた深い真っ暗な穴だった。俺はそれを納屋の裏で見つけた

We'd been filling it with garbage as long as you could count *3
俺たちは思いつく限りのいろいろながらくたでそれを埋めようとした
Kitchen scraps and dead cows, tractors broken down
台所の生ごみ、死んだ雌牛、壊れたトラクター
But never did I hear one thing hit the ground
だが、一度としてそれが地面を打つ音を聞くことはなかった
And slowly I came to fear that this was a bottomless hole
俺は少しずつ怖くなっていった。この穴には底が無いのではないかと

I went out behind the barn and stared down in that hole
ある日納屋の裏へ行き、穴の中を覗き込んだ
Late into the evening my mind would not let go *4
夜も遅い時間。俺は疑問を放置することができなくなった
So I got out my ropes and a rusty claw-foot tub
そして、ロープを持ち出し、鉤爪足の付いた浴槽を運んで来た
And I rigged myself a chariot to ride down in that hole *5
急ごしらえで一人乗りの昇降機を作った。穴の中へ降りるためだ

My wife, she did help me, she fed me down the ropes
妻は私を手助けしてくれた。食料をロープで降ろしてくれた
And then I sank away from the surface of this world
そうやって俺はこの世界の表面から離れ、沈んで行ったんだ
With the last rope pulled tight, I had not reached the end
最後のロープがぴんと張っても、俺は終わりまで到達しなかった
And in anger I swung there, down in that dark abyss *6
俺は怒りを覚えながら揺れていた。暗闇の奈落の中で

So I got out my knife, I told my wife goodbye
それから俺はナイフを取り出し、妻に別れを告げた
I cut loose from the ropes and fell on down that hole
自らをロープから切り離し、穴の中を落ちて行った
And still I am there falling down in this evil pit *7
そして、俺は今でも落ち続けている。この邪悪な穴の中を
But until I hit the bottom, I won't believe it's bottomless
この身が地面を打つまでは、俺は決してこれが底無しだとは信じない


備考
  1. hail : 挨拶する、歓迎する、熱烈に是認する。喝采を送る。タクシーを呼ぶ、人を呼び止める
    hail from : (おどけて)~出身である、(船が)~から来る、~を母港とする
  2. deep : 深み、深い穴。空間・時間等の非情な広がり。
    barn : 納屋、家畜小屋
  3. garbage : 台所から出るくず、生ごみ。価値のないもの、がらくた、くだらないもの
    ※ "as long as you could count" の "you" は「一般に誰でも」という意味だろう。また、"long" は「長さ」よりは「項目の多さ、数量的な多さ」、"count" は「数える」よりは「みなす、考える」という意味合いが強いのではないかと判断し訳している。
  4. let go : 手放す、解放する、解雇する、捨てる、諦める、放置する、自分を解き放つ
  5. rig : (市場・市価・選挙等を)不正に操作する。急いで作る、間に合わせに集める。(飛行機・車・部屋等を)整える、装備する
    chariot : (古代の)戦闘用一人乗り二輪馬車。(18世紀の)装飾馬車。荷馬車
  6. abyss : 深海、深淵。深い地割れ、深い穴。比喩的に、底知れず深いもの、計り知れないもの、無限なもの。天地創造以前の混沌。地の底、地獄、奈落。
  7. evil : 邪悪な、不道徳な。有害な。不吉な、縁起の悪い。
    pit : (地面の)穴、窪み。落とし穴、わな。立て坑。(動物を入れる)囲い、闘犬場。地獄、墓穴、ひどい場所。


 2003年のアルバム "Singing Bones" に収録。
 この歌詞の元ネタはアメリカの都市伝説的な "メルの穴 Mel's Hole" という話だそうです。都市伝説的と言ってもその始まりははっきりしており、超常現象や陰謀論などを扱うラジオのトークショー "Coast to Coast AM" に送られてきたファックスが事の発端でした。番組は1997年から2002年にかけて幾度か "Mel Waters" と名乗るその男に電話インタビューを重ねその模様を放送しました。それによると、ワシントン州のエレンズバーグ市近くにある自分の所有地で見つけた直径9フィートほどのその穴は、底無しに深く見え、どんな物を落としてもそれが地に着く音が聞こえなかったそうです。また、彼がその穴を見つける数十年前から近所の住人はその穴を知っており、便利なごみ捨て場として使っていました。そしていくら物を捨てても穴が埋まることはなかったと言います。メル・ウォーターズの話はオカルトじみていて、穴の深さを測ろうとして長さ24kmの釣り糸を垂らしても地に着かなかったこと、犬がその穴に近づくことを嫌がること、死んだ犬を穴に投げ入れたら後に生きて帰ってきたことなどを語ります。
 ただ、彼は穴の所在地を最後まで明かすことはなく、後に彼の名も偽名であることが分かっています。アメリカとカナダで広く放送されているラジオ番組で幾度も紹介されたこともあってこの穴を実際に探す人も多かったと言いますが、結局この穴は今に至るまで見つかっていません。そのため、今ではこの話は彼の虚言であるというのが一般の人々の認識なのでしょう。"Mel's Hole" で検索するともっと詳細な様々の怪しい情報がヒットするので、興味のある方は調べてみて下さい。
 この歌詞からは、幸福だが単調な日常から脱け出したいというような厭世観や現実を超えた別の世界に憧れる心情などを感じ、ふとブルース・スプリングスティーンの「ハングリー・ハート」という歌を思い出しました。



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