All The World Is Green : Tom Waits

2017年04月23日




I fell into the ocean when you became my wife
俺は海に落ちた。お前が俺の妻となった時に
I risked it all against the sea to have a better life *1
すべてを失う危険を冒して俺は海に立ち向かった。よりよい人生を得るために
Marie you're the wild blue sky and men do foolish things *2
マリー。お前は荒れ狂う憂いの空だ。男たちに馬鹿げた事をさせる
You turn kings into beggars and beggars into kings
お前は王を乞食に変え、乞食を王に変える
Pretend that you owe me nothing and all the world is green *3
お前が俺に借りなどないと装ってくれれば、世界中が新緑になるだろう
We can bring back the old days again when all the world is green
俺たちは昔を取り戻せる。そして、世界は緑に輝くんだ

The face forgives the mirror, the worm forgives the plow *4
映された顔は映した鏡を許すの。切られたミミズは切った鋤を許すの
The questions begs the answer, can you forgive me somehow?
質問は答を請うものなの。あなたはどうにかして私を許せるかしら?
Maybe when our story's over we'll go where it's always spring
私たちの物語が終わる時、私たちは常春の地へ行けるでしょう
The band is playing our song again and all the world is green *5
楽団がまた私たちの歌を演奏している。世界が新緑に輝く
Pretend that you owe me nothing and all the world is green
あなたが私に借りなどないと装ってくれれば、世界中が新緑になるでしょう、
Can we bring back the old days again when all the world is green
私たちは昔を取り戻せるかしら。世界がまた新緑に輝くかしら

The moon is yellow silver, oh, the things that summer brings
月が黄ばんだ銀色に光る。夏が運んでくる光だ
It's a love you'd kill for and all the world is green *6
お前が欲しくてたまらない愛だ。そして、世界は新緑に輝く
He is balancing a diamond on a blade of grass *7
神は、ガラスの刃の上にダイヤモンドを載せ、均衡を保たせている
The dew will settle on our graves when all the world is green *8
いずれ俺たちの墓にも露が降りる。その時世界は緑に輝くだろう
Pretend that you owe me nothing and all the world is green
俺に借りなどないと装ってくれ。そうすれば、この世界は緑に輝き
We can bring back the old days again when all the world is green
俺たちは昔を取り戻せる。そして、世界は緑に輝くんだ

He is balancing a diamond on a blade of grass
神は、ガラスの刃の上にダイヤモンドを載せ、均衡を保たせている
The dew will settle on our graves when all the world is green
いずれ俺たちの墓に露が降りる時、この世界は緑に輝く


備考
  1. risk : (失いたくない物を失う)危険にさらす。こうむる危険を冒す、(~を覚悟して)受ける。(危険を招く行動を)あえて取る、危険を冒して行く
  2. wild : 野生の、未開の、野蛮な、荒涼とした、人の住まない。(風・海・時代・争い等が)猛烈な、荒れ狂う。(人・行為・感情等が)狂気じみた、取り乱した、ひどく興奮した。(人・行為等が)手に負えない、乱暴な、放縦な、凶暴な
    blue : 青い。血の気を失った、青黒い。気が滅入った、憂鬱な、悲観的な
  3. pretend : ~を装う、~のように見せかける、~のふりをする。(子供が)~のまねごと遊びをする、~のつもりになる。
    ※ "pretend" は命令形だろうと判断し訳しているが、もしかしたら間違っており、主語として "You" または "I" が省略されているのかもしれない。
    owe : 借りがある、借金がある、借りている。(ある感情を~に)抱いている、感じている、(義務等を~に)負っている。
    green : 緑の、草色の。草木で覆われた、青々とした、新緑の。未熟の、青い。生の、乾燥していない。最新の、生々しい。青ざめた、嫉妬深い。活気のある、元気な、若々しい。
    ※ "green" はこの世界があるべき姿であること、二人の置かれた環境が好ましい状態であることを表しているように思える。
  4. ※ "The cut worm forgives the plow." はウィリアム・ブレイクの "The Proverbs of Hell 地獄の格言" という詩の一節。
  5. ※マリーの浮気相手は軍楽隊の鼓手長である。
  6. kill for : ~のためなら何でもする
    would(could) kill for : ~が欲しくてたまらない、なにがなんでも欲しい
  7. ※トム・ウェイツの別の歌 "Bottom of the world" に "Well God's green hair is where I slept last. He balanced a diamond on a blade of grass." という歌詞があるので、ここの "He" もおそらく "神" を指しているのではないだろうか。
    balance : 平衡(均衡・釣り合い)を保たせる、調和させる。比較検討する、はかりにかける。平均させる、つりあわせる、相殺する。(二つの物を)天秤で量る、重さを比べる。勘定を決算する、差引勘定する、帳尻を合わせる、清算する。
    ※「価値が低くしかも壊れやすいガラスの刃の上に高価なダイヤモンドを載せて落ちないようにバランスをとる」という不安定で危険な作業を神は常日頃行なっており、私たちの日常はそのような "神業" に支えられて成り立っている、という意味だろうと思うが、もしかしたら間違っているかもしれない。
  8. dew : 露、しずく。露のように純粋なもの、爽やかなもの。瑞々しさ。
    settle : 落ち着く、ゆったりする。定住する、住み着く。下に沈む、沈殿する。(澱等が沈んで液体が)澄む、透明になる。(鳥・虫等が)留まる、降りる。


 2002年のアルバム "Blood Money" より。
 2000年初演のミュージカル『ヴォイツェック』で使われた歌です。劇中では、第一連と第三連は主人公の兵卒ヴォイツェックが歌い、第二連は愛人マリーが歌っています。
 原作は23歳で夭逝したドイツの劇作家・革命家・科学者ゲオルク・ビューヒナー(1813-37)が1835年頃執筆した未完の戯曲です。断片的な草稿しか残っていないため、舞台の上演や映画化のたびに演出家によって異なるストーリーが作られているそうです。原作ではっきりしているのは、精神に異常をきたしている主人公が浮気した愛人を刺殺しその後(おそらく)入水自殺するという事件が物語の核だということです。ウィキペディアに原作の概要が書かれているのでそれを読むとこの歌詞がより分かりやすくなると思います。

Ice Cream Man

2016年02月13日

Ice Cream Man : Tom Waits




Click by your house about two forty-five *1
2時45分頃あんたの家の前に来ると、俺の体にスイッチが入るんだ
with sidewalk sundae strawberry surprise *2
歩道からストロベリーサンデーの贈り物さ
I got a cherry popsicle right on time *3
サクランボの棒アイスも時間きっかりに持って来るぜ
I got a big stick, momma, that will blow your mind *4
ビッグスティックはきっとあんたをくらくらさせるよ

※ Cause I'm your ice cream man, I'm a one-man band, yeah
だって、俺はアイスクリーム屋だから。俺は一人楽団だから
And I'm your ice cream man
俺はあんたのアイスクリーム屋なんだ
Baby, I'll be good to you ※
なあ。あんたをきっと喜ばすぜ

If you missed me in the alley, baby, don't you fret *5
裏通りに俺を見失っても、大丈夫だ。やきもきするなよ
I'll be coming back around and don't forget
戻って来るから。忘れやしないから
When you're tired and you're hungry and you want something cool
あんたが退屈な時、腹が減ってる時、冷たいものが欲しい時
You know I got something better than a swimming pool
水遊びのプールなんかよりずっといいものを持って来てやるよ

※~※

Well if you see me coming, you ain't got no change *6
俺が来た時、小銭がないからって
Don't worry baby, it can be arranged *7
気にすることはないよ。手筈は整ってる
Show me you can smile, just for me
あんたの笑顔を見せてくれ。俺のために
And I fix you with a drumstick, I'll do it for free *8
ドラムスティックアイスであんたを元気にしてやる。ただでやってあげるよ

'Cause I'm your ice cream man, and I'm a one-man band
だって、俺はアイスクリーム屋だから。俺は一人楽団だから
And I'm your ice cream man
あんたのアイスクリーム屋なんだ
I'll be good to you
きっとあんたをきっと喜ばすぜ

I'm your ice cream man
And I'm your ice cream man


備考
  1. click : カチッ(カチリ)と音が鳴る。ピンとくる、ふと分かる。異性と意気投合する、異性にピピッとくる。人とウマが合う、しっくり行く
    ※ click の自動詞としての語感は「パチリという音がなる→スイッチが入る→瞬間的に何かを感じる」という感じらしい。ここでの使い方はよく分からないが「あんたの家の前に来ると自動的に俺の体が反応する」という意味だろうと想像して訳した。
    click one's fingers : 指をパチッと鳴らす
  2. surprise : 驚かす(驚く)こと。予期しないこと、思いがけないこと。思いがけないお祝い(パーティー・贈り物)
  3. Popsicle : ポプシクル。棒付きアイスキャンディー。ブランド名だが同種のものの普通名詞としても使われる。
  4. Big Stick : ポプシクルブランドの商品名
    blow a person's mind : 麻薬・音楽などが興奮させる、恍惚にさせる。人の頭をくらくらさせる
  5. fret : いらいらする、やきもきする、思い悩む、赤ん坊がむずがる
  6. ain't got no = don't have no = don't have
  7. arrange : きちんと並べる、整える、配置する。前もって準備・用意・手配・お膳立てする。問題などを調停する、決着させる。
  8. fix : 修理する、病人を回復させる、怪我を治す、狂っているものを正す、固定する
    drumstick : 打楽器のばち。調理した鶏・アヒル・七面鳥の脚。チョコとナッツが乗ったコーン型のアイスクリーム(商品名)


 1973年のデビューアルバム "Closing Time" より。ただし、冒頭の動画は1991年に発売された "The Early Years, Volume One"(デビュー前の録音曲を集めたアルバム)に収録された音源です。猥雑な歌詞とそれに相反する美しい旋律の組み合わせがとても魅力的です。

Martha

2015年12月20日

Martha : Tom Waits




Operator, number, please. It's been so many years
交換手さん、番号を調べてくれないか。もう何年も経ってるんでね
Will she remember my old voice while I fight the tears?
俺が涙をこらえている間に、あいつはこの声を思い出してくれるかな

Hello, hello there, is this Martha? This is old Tom Frost
もしもし、マーサかい? トム・フロストだ
And I am calling long distance. Don't worry about the cost
長距離でかけてるんだ。…いや、料金は気にしなくていい
'Cause it's been forty years or more. Now Martha please recall
ああ、四十年以上経ってるからな。でも、マーサ。思い出してくれよ
Meet me out for coffee where we'll talk about it all
どこかで会ってコーヒーでも飲まないか。いろいろ話そう

And those were the days of roses
あの頃の薔薇色の日々
Poetry and prose and Martha *1
詩と小説、それに君
All I had was you and all you had was me
俺には君がすべて、君には俺がすべてだった
There was no tomorrows
明日というものなどなかった
We'd packed away our sorrows *2
悲しみはどこかにしまい込んで
And we saved them for a rainy day
雨の日のためにとっておいた

And I feel so much older now and you're much older too
ずいぶん年をとった気がする。君だってそうだろう
How's your husband and how's your kids? You know that I got married too?
旦那さんは元気かい? それに、子供たちも。知ってるか? 俺も結婚したんだ
Lucky that you found someone to make you feel secure *3
君は運が良かった。君を安心させられる男を見つけられて
'Cause we were all so young and foolish. Now we are mature
俺たちは二人とも若く愚かだった。でも今は充分大人だ

And those were the days of roses
あの頃の薔薇色の日々
Poetry and prose and Martha
詩と小説、それに君
All I had was you and all you had was me
俺には君がすべて、君には俺がすべてだった
There was no tomorrows
明日というものなどなかった
We'd packed away our sorrows
悲しみはどこかにしまい込んで
And we saved them for a rainy day
雨の日のためにとっておいた

And I was always so impulsive. I guess that I still am *4
俺はよく考えない衝動的な人間だった。いや、今でもそうかもしれない
And all that really mattered then was that I was a man *5
あの頃(の俺にとって)は「自分が男である」ことだけが大事だったんだ
I guess that our being together was never meant to be *6
たぶん、俺たちは一緒になる運命じゃなかったんだろう
And Martha, Martha. I love you can't you see?
でも、マーサ。(今でも)君を愛してる。分かるかい

And those were the days of roses
あの頃の薔薇色の日々
Poetry and prose and Martha
詩と小説、それに君
All I had was you and all you had was me
俺には君がすべて、君には俺がすべてだった
There was no tomorrows
明日というものなどなかった
We'd packed away our sorrows
悲しみはどこかにしまい込んで
And we saved them for a rainy day
雨の日のためにとっておいた

And I remember quiet evenings trembling close to you *7
思い出すよ。君の側で震えていた静かな夜を


備考
  1. prose : 散文(体)、平凡、単調、無味乾燥な話、単調な文
  2. pack away : しまい込む、荷物をまとめてさっさと出て行く、胃袋にしまい込む、追い出す、追い払う
  3. secure : 安全な、危険のない、安定した、しっかりした、心配・気苦労のない
  4. impulsive : 一時の感情に駆られた、直情的な、衝動的な。推進力のある、行動を刺激する、行動を起こさせる、衝撃的な、瞬間力の
  5. ※ "I was a man" の意味がよく分からないが、おそらく「男としてのプライド」が彼女を傷つけるような行動をとらせたというような心情表現ではないだろうか。
  6. be meant to do : ~が…であるように意図されて(作られて)いる、~になるように運命づけられている、(義務として)~しなければならない、~することになっている
  7. ※おそらく trembling は、親しくなって間もない頃の二人の緊張感、初々しさを表しているのではないだろうか。


 1973年のデビューアルバム "Closing Time" より。1949年生まれのトム・ウェイツが23歳頃の作品です。おそらく60歳を過ぎているであろう主人公の心情に託したウェイツの思いは現在の自分や同世代の人々に対する省察ではないでしょうか。小説家と同じような物語作家としての彼の才能がよく表れている歌詞だと思います。
 前にどこかで「女の恋は上書き保存、男の恋は別名保存」という台詞を聞いたことがありますが、実際こんな事をされたら迷惑だと思う女がほとんどでしょう。ただし、この歌詞の主旨が、彼女を失う原因となったつまらないプライドや後先を考えない行動に対する後悔であり、それがすなわち作詞者の今の自分に対する省察であると仮定すると、設定の不自然さはあまり気になりません。



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