The Bottomless Hole

2016年07月22日

The Bottomless Hole : The Handsome Family




My name I don't remember, though I hail from Ohio *1
自分の名は忘れたが、オハイオの出身なのは覚えてる
I had a wife and children, good tires on my car
妻と子供がいた。車には良いタイヤを履かせてた
What took me from my home and put me in the earth
そんな俺を家から連れ出しこんな地中に引きずり込んだのは
Was the mouth of a deep, dark hole I found behind my barn *2
口を開けた深い真っ暗な穴だった。俺はそれを納屋の裏で見つけた

We'd been filling it with garbage as long as you could count *3
俺たちは思いつく限りのいろいろながらくたでそれを埋めようとした
Kitchen scraps and dead cows, tractors broken down
台所の生ごみ、死んだ雌牛、壊れたトラクター
But never did I hear one thing hit the ground
だが、一度としてそれが地面を打つ音を聞くことはなかった
And slowly I came to fear that this was a bottomless hole
俺は少しずつ怖くなっていった。この穴には底が無いのではないかと

I went out behind the barn and stared down in that hole
ある日納屋の裏へ行き、穴の中を覗き込んだ
Late into the evening my mind would not let go *4
夜も遅い時間。俺は疑問を放置することができなくなった
So I got out my ropes and a rusty claw-foot tub
そして、ロープを持ち出し、鉤爪足の付いた浴槽を運んで来た
And I rigged myself a chariot to ride down in that hole *5
急ごしらえで一人乗りの昇降機を作った。穴の中へ降りるためだ

My wife, she did help me, she fed me down the ropes
妻は私を手助けしてくれた。食料をロープで降ろしてくれた
And then I sank away from the surface of this world
そうやって俺はこの世界の表面から離れ、沈んで行ったんだ
With the last rope pulled tight, I had not reached the end
最後のロープがぴんと張っても、俺は終わりまで到達しなかった
And in anger I swung there, down in that dark abyss *6
俺は怒りを覚えながら揺れていた。暗闇の奈落の中で

So I got out my knife, I told my wife goodbye
それから俺はナイフを取り出し、妻に別れを告げた
I cut loose from the ropes and fell on down that hole
自らをロープから切り離し、穴の中を落ちて行った
And still I am there falling down in this evil pit *7
そして、俺は今でも落ち続けている。この邪悪な穴の中を
But until I hit the bottom, I won't believe it's bottomless
この身が地面を打つまでは、俺は決してこれが底無しだとは信じない


備考
  1. hail : 挨拶する、歓迎する、熱烈に是認する。喝采を送る。タクシーを呼ぶ、人を呼び止める
    hail from : (おどけて)~出身である、(船が)~から来る、~を母港とする
  2. deep : 深み、深い穴。空間・時間等の非情な広がり。
    barn : 納屋、家畜小屋
  3. garbage : 台所から出るくず、生ごみ。価値のないもの、がらくた、くだらないもの
    ※ "as long as you could count" の "you" は「一般に誰でも」という意味だろう。また、"long" は「長さ」よりは「項目の多さ、数量的な多さ」、"count" は「数える」よりは「みなす、考える」という意味合いが強いのではないかと判断し訳している。
  4. let go : 手放す、解放する、解雇する、捨てる、諦める、放置する、自分を解き放つ
  5. rig : (市場・市価・選挙等を)不正に操作する。急いで作る、間に合わせに集める。(飛行機・車・部屋等を)整える、装備する
    chariot : (古代の)戦闘用一人乗り二輪馬車。(18世紀の)装飾馬車。荷馬車
  6. abyss : 深海、深淵。深い地割れ、深い穴。比喩的に、底知れず深いもの、計り知れないもの、無限なもの。天地創造以前の混沌。地の底、地獄、奈落。
  7. evil : 邪悪な、不道徳な。有害な。不吉な、縁起の悪い。
    pit : (地面の)穴、窪み。落とし穴、わな。立て坑。(動物を入れる)囲い、闘犬場。地獄、墓穴、ひどい場所。


 2003年のアルバム "Singing Bones" に収録。
 この歌詞の元ネタはアメリカの都市伝説的な "メルの穴 Mel's Hole" という話だそうです。都市伝説的と言ってもその始まりははっきりしており、超常現象や陰謀論などを扱うラジオのトークショー "Coast to Coast AM" に送られてきたファックスが事の発端でした。番組は1997年から2002年にかけて幾度か "Mel Waters" と名乗るその男に電話インタビューを重ねその模様を放送しました。それによると、ワシントン州のエレンズバーグ市近くにある自分の所有地で見つけた直径9フィートほどのその穴は、底無しに深く見え、どんな物を落としてもそれが地に着く音が聞こえなかったそうです。また、彼がその穴を見つける数十年前から近所の住人はその穴を知っており、便利なごみ捨て場として使っていました。そしていくら物を捨てても穴が埋まることはなかったと言います。メル・ウォーターズの話はオカルトじみていて、穴の深さを測ろうとして長さ24kmの釣り糸を垂らしても地に着かなかったこと、犬がその穴に近づくことを嫌がること、死んだ犬を穴に投げ入れたら後に生きて帰ってきたことなどを語ります。
 ただ、彼は穴の所在地を最後まで明かすことはなく、後に彼の名も偽名であることが分かっています。アメリカとカナダで広く放送されているラジオ番組で幾度も紹介されたこともあってこの穴を実際に探す人も多かったと言いますが、結局この穴は今に至るまで見つかっていません。そのため、今ではこの話は彼の虚言であるというのが一般の人々の認識なのでしょう。"Mel's Hole" で検索するともっと詳細な様々の怪しい情報がヒットするので、興味のある方は調べてみて下さい。
 この歌詞からは、幸福だが単調な日常から脱け出したいというような厭世観や現実を超えた別の世界に憧れる心情などを感じ、ふとブルース・スプリングスティーンの「ハングリー・ハート」という歌を思い出しました。

Far From Any Road

2016年01月14日

Far From Any Road : The Handsome Family




From the dusty mesa, her looming shadow grows *1
埃っぽい卓上台地から彼女のぼんやりとした影が伸びる
Hidden in the branches of the poison creosote *2
毒のあるメキシコハマビシの枝々の中に隠れ
She twines her spines up slowly towards the boiling sun, *3
彼女は棘を巻きつかせながら、灼熱の太陽に向かってゆっくりと伸びている
And when I touched her skin, my fingers ran with blood. *4
彼女の肌に触れると、私の指から血が流れ出した

creosote bush
image credit: Creosote Bush

In the hushing dusk, under a swollen silver moon, *5
何もかも口をつむぐ夕暮れ。膨れ上がった銀色の月の下
I came walking with the wind to watch the cactus bloom. *6
サボテンの花を見るために風と共に歩いて来た
A strange hunger haunted me, the looming shadows danced. *7
奇妙な空腹が私にまとわりついていた。ぼんやりとした影が踊っていた
I fell down to the thorny brush and felt a trembling hand. *8
私は棘だらけの茂みに倒れ込んだ。すると、震える手に触れた


When the last light warms the rocks and the rattlesnakes unfold, *9
最後の日の光が岩肌を温めている頃、ガラガラヘビはとぐろを解きほどく
Mountain cats will come to drag away your bones.
いずれ山猫がやって来て、あなたの骨を引きずって行くだろう
Then rise with me forever across the silent sand,
それから、私と一緒に甦りなさい。永遠に、この沈黙の砂地を越えて
And the stars will be your eyes and the wind will be my hands.
星はあなたの目となり、風は私の手となるだろう


備考
  1. mesa : 卓上台地。頂上が平らで周囲に急な崖をもつ地形。米国南西部、メキシコの乾燥地域に多い。
    loom : ぼんやり現れる、ぼんやりと大きく見える、聳え立つ、そそり立つ。(事が)不気味に迫る、急迫した(不気味な)様相を呈する
  2. creosote : ブナ材等のタールを抽出した液体。フェノールとクレオソールを含み、殺菌防腐剤として使われる。下痢止めの正露丸の主成分でもある。
    creosote bush : メキシコハマビシ。アメリカ南西部からメキシコ北西部に分布する潅木。葉は米先住民がハーブとして伝統医療に用いてきたが毒性も強い。周囲の土壌に毒を放出して邪魔な雑草等を排除しながら繁殖していく。種類によっては極めて長寿で、米カリフォルニア州モハヴェ砂漠には樹齢約1万2000年の木が生えている。
  3. ※この she はサボテンを指していると思われる。たとえば上の写真の "Selenicereus Grandiflorus" は数年に一度しか開花せず、しかも開花は一夜だけで時間も数時間に限られ、それを見るのが難しいらしい。しかし、その大きな花は妖艶な美しさで見る者を魅了するという。
    twine : (糸・紐を)縒り合わせる、捻る(巻く)ようにして差し込む、からみつかせる、(蔓・蛇等が)巻きつく
    spine : 脊柱、背骨。(ハリネズミ・サボテン等の)とげ
  4. run with : ~を流す、液体を出す
  5. hush : 静かになる(する)、黙る。静かにさせる、黙らせる。抑える、もみ消す。なだめる、静める。殺す、やる
    dusk : 夕暮れ、薄暮、たそがれ。薄暗がり
    swell-swelled-swollen : 膨らむ、膨張する。腫れる、むくむ。波立つ、増水する、潮が満ちる
  6. cactus : サボテン
  7. haunt : 幽霊が出る。絶えず浮かぶ、付きまとう。しばしば行く。苦しめる、悩ます
  8. thorn : (植物の)棘、針
    brush : 低木の密生地、茂み、やぶ。折れた枝、柴。未開拓の奥地
  9. unfold : 開く、広げる。表す、見せる


 ハンサム・ファミリーは Brett Sparks と Rennie Sparks の夫婦によるデュオで、1993年から音楽活動をしています。この歌は彼らの2003年のアルバム "Singing Bones" に収録されていますが、2014年に始まったアメリカのテレビドラマ "True Detective" の主題歌に採用されて人気が出たそうです。

 2014年のワシントンポストのインタビューで、この歌詞について二人は次のように語っています。(翻訳は間違っているかもしれません。)
レニー : "Jimson weed" という植物を見たことがあるの。それは夜しか花が咲かなくて、こんな大きな白い花なんだけど。そして、夜にそれを食べる蛾の幼虫がいるのよ。その様子は、まるで秘密の夜に咲く情事みたい。実は Jamestown にまで遡る事なんだけど、"Jimson weed" は人を狂わせるというお話もあるの。これには幻覚作用があって、ずっと人々の飲み水に入り込んでいたからなのね。というわけで、(この歌詞は)この芋虫と暗闇で行なわれる禁断の性の儀式に関係するものなの。
ブレット : こっちに特有なのでは locoweed ってあるよね。つまり、この歌は基本的には、幻覚をもたらす植物と愛、それも暗黒の愛についてのものなんだ。
レニー : そして、それは同時に有毒な植物だからなかなか近づけないということね。私はそれがとても興味深かったの。
* Jimson weed : シロバナヨウシュチョウセンアサガオ(白花洋種朝鮮朝顔)。世界中の温帯から熱帯に分布するナス科の一年草。幻覚作用があり北アメリカ先住民には宗教儀式にこれを用いる部族もあった。また、全部位に毒性があり誤って摂取すると最悪の場合死に至る。
* James town : 英国が北アメリカに建設した最初の永続的植民地。バージニア州ジェームズ川河口付近の島上に位置するが、現在は歴史的遺構となっている。1607年に植民地として集落を建設するが、湿地帯で伝染病が発生しやすいため1699年に廃棄された。1676年の開拓民の反乱鎮圧に赴いた英軍兵士たちが誤って "Jimson weed" を食べ中毒症状を起こした。彼らは11日後に回復するまで狂人のような行動をずっととり、回復後にはその間の記憶が全く無かったという。"Jimson weed" の呼称はこの事件の記録者がこの植物を "James-Town Weed" と記述したことに由来する。
* locoweed : 1. 米国南西部産の植物で酵素阻害作用のあるスワインソニンを含み、家畜に様々な神経障害(ロコ病)を起こす。2. マリファナ(loco は「狂人、狂わせる」という意味)

 幻想的な叙景詩といった趣のあるこの歌詞はなかなか解釈が難しく、また聞く人によって様々に異なる解釈をしそうな気がします。私なりに想像できる物語は以下のようなものです。
 灼熱の砂漠。人の通う道から遠く離れた地で、夜咲くサボテンの花に魅せられた男がその毒に当てられ体が動かなくなる。夕暮れになりそこへまた一人、女らしきものが近づき、なぜかサボテンに倒れ込み、そこで震える男に触れる。空腹に駆られた女らしきものは同じくサボテンの毒により幻の世界に入り込み、男を貪る。やがてその女らしきものも体の自由を失い、別の捕食生物の餌食となる。命を落とした二人はやがて自然の一部となってゆく。
 …やはり難しいようです。なかなか上手くイメージを作ることができません。果たして作詞者はどのような光景を想像していたのでしょうか。



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