Hallelujah : Leonard Cohen

2017年02月16日




Now I've heard there was a secret chord
秘密の和音があるという
that David played, and it pleased the Lord *1
ダビデが奏で、主を喜ばせたという
But you don't really care for music, do you?
しかし、あなたは本当は音楽などに興味はないのだろう?
It goes like this
それはこういう調べだ
The fourth, the fifth, the minor fall, the major lift *2
第四和音、第五和音、落ちる、上がる
The baffled king composing Hallelujah *3
迷える王が作る神の讃歌

Hallelujah
主を讃えよ

Your faith was strong but you needed proof
お前の信仰は固かったが、その証明も必要だった
You saw her bathing on the roof *4
水浴する女を見たお前は
Her beauty and the moonlight overthrew you *5
その美しさと月光に打ちのめされた
She tied you to a kitchen chair
女はお前を台所の椅子にしばりつけ
She broke your throne, and she cut your hair *6
お前の玉座を壊し、お前の髪を切ることで力を奪った
And from your lips she drew the Hallelujah
そして、お前の口から引き出したのが、この神の讃歌だ

Hallelujah
主を讃えよ

Baby I have been here before
私はかつてここに居た
I know this room, I've walked this floor
この部屋も知っているし、この床も歩いた
I used to live alone before I knew you
あなたを知るまで、私はただ一人で生きていた
I've seen your flag on the marble arch
私には見えた。大理石の凱旋門に掲げられたあなたの旗が
This is love not some kind of a victory march
これは愛であり、勝利の行進曲などではない
It's a cold and it's a broken Hallelujah
これは冷たく、そして壊れた神の讃歌

Hallelujah
主を讃えよ

There was a time you let me know what's really going on below *7
下界で実際に何が起きているかをお前が知らせてくれた頃もあった
But now you never show it to me, do you?
ところが今お前は何も示してくれないのだな
And remember when I moved in you the holy dove was moving too *8
覚えておくがいい。私がお前の中で動いていた時、聖霊も動いているのだ
And every breath we drew was Hallelujah
そして我らの吐くすべての息は神の讃歌だった

Hallelujah
主を讃えよ

Maybe there's a God above
おそらく神は天上に存在するのだろう
And all I ever learned from love was how to shoot at someone who outdrew you *9
私が愛から学んだのはあなたを引きつける誰かを撃つことに過ぎなかった
It's not a cry you can hear at night
夜にあなたが聞くのは嘆きではない
It's not somebody who's seen the light *10
生まれ出た誰か(の喜び)でもない
it's a cold and it's a broken Hallelujah
それは、冷たく、そして壊れた神の讃歌

Hallelujah
主を讃えよ

You say I took the name in vain *11
みだりに名を口にするなと言うが
I don't even know the name
私は名など知らない
But if I did, well really, what's it to you?
仮に私がそうしたとして、実際あなたにはどうということもないだろう?
There's a blaze of light in every word
あらゆる言葉には光と輝きがある
It doesn't matter which you heard
あなたがどれを聞こうとも大した問題ではない
The holy or the broken Hallelujah
聖なる讃歌であろうと壊れた讃歌であろうと

Hallelujah
主を讃えよ

I did my best, it wasn't much
私は全力を尽くしたが、それは大したものではなかった
I couldn't feel, so I tried to touch
感じられなかったから触れようとしてみた
I've told the truth, I didn't come to fool you *12
私は真実を語った。あなたをだまそうと来たのではない
And even though it all went wrong *13
たとえすべてが誤りだったとしても
I'll stand before the Lord of Song
私は歌の神の前に立とう
With nothing on my tongue but Hallelujah
私の口に上るのは神の讃歌だけだ

Hallelujah
主を讃えよ

Yeah but it's not a complaint that you hear tonight *14
今宵あなたが聞くのは不平不満ではない
It's not the laughter of someone who claims to have seen the light *15
真理を悟ったと言い張る者の笑いではない
No it's a cold and it's a very lonely Hallelujah
それは、冷たく、そしてとても孤独な神の讃歌

Hallelujah
主を讃えよ


備考
  1. David : 古代イスラエル王。若き日サウル王に仕える。竪琴の名手で悪霊によるサウル王の病を音楽により癒したという。
  2. 音楽のことはよく分からないが、歌詞と実際のコード進行が一致しているらしい
  3. baffle : [他] 困惑させる、迷わせる、計画・努力等をくじく [自] いたずらにあせる、もがく、悩む
    Hallelujah : 「主を誉め讃えよ」の意。
  4. bathe : 入浴する、水浴びする、日光浴する
    Bathsheba : 『サムエル記』。 ダビデ王は部下ウリヤの妻バテシェバに手をかけた上、ウリヤを殺害する。
  5. overthrow : ひっくり返す、打ち倒す、取り壊す、政府等を転覆する、精神状態を乱す
  6. 『士師記』。 ユダヤの士師サムソンは愛した女デリラに裏切られ、怪力の源である髪を切られてペリシテ人に捕らえられる。
  7. below : [副] 下に、地上に、下界に、地下に、地獄に
  8. dove : 鳩、純潔な(無邪気な)人、聖霊
  9. outdraw : 人を引きつける力がより強い、より多くの観衆を集める、より速く拳銃を抜く
  10. see the light : 生まれ出る、世に出る、日の目を見る、やっと認める、改宗する、事の真理を知る、悟る
  11. take a name in vain : むやみに(人・神の)名を口にする、不用意に(軽々しく)口にする
  12. fool : ふざける、ばかにする、だます、かつぐ
  13. even though = even if : たとえ~でも(だとしても)
  14. complaint : 不平、苦情、告訴、抗告
  15. claim : 主張する、承認を求める、公言する、自称する


 1984年のアルバム Various Position より。
 この歌詞にはいろいろなバージョンがあり、私の持っているCDのオリジナルバージョンはもっと短い歌詞になっています。
 内容を理解するには旧約聖書『サムエル記』のダビデの物語を知っておいた方が良さそうです。
 ダビデは兵士としてサウル王に仕え、数々の武勲を立て、また竪琴の名手だった彼は悪霊によって精神の病を得たサウル王をたびたび音楽で癒すなど、忠誠心にあふれる若者でした。ところが、サウル王は自分よりも戦争の能力に優れるダビデを憎み、また恐れ、幾度もダビデ殺害を謀ります。サウル王の死後王位に就いたダビデは、ある夕べ、王宮の屋上から美しい女が入浴しているのを見かけます。そして、その女が自らの部下ウリヤの妻バテシバだと知った上で、王宮に呼び寄せ関係を結びます。その後バテシバが妊娠したことが分かり、ウリヤに知られることを恐れたダビデは、彼を危険な戦地へ送り意図的に見殺しにします。このダビデの行為は神の怒りを買い、バテシバの第一子は生まれて七日後に死にます。ちなみにバテシバの第二子は、のちにイスラエル王国の最盛期を築くソロモンです。
 歌詞の内容はまだ分からないところが散見するのですが、ここでは「あなた」を神(もしくは男から見た女)と解し、訳しました。他にいろいろな解釈ができるでしょうし、また誤訳もあると思います。あまり訳文を信じないようにお願いいたします。

※この記事は、2010年9月29日に掲載したものの再掲です。

Bird on the Wire

2016年06月12日

Bird on the Wire : Leonard Cohen




Like a bird on the wire
電線に止まる鳥のように
Like a drunk in a midnight choir *1
真夜中に群れて歌う酔っ払いのように
I have tried in my way to be free
自分なりに自由であろうとしてきた
Like a worm on a hook *2
釣り針に掛けられたミミズのように
Like a knight from some old fashioned book *3
古めかしい本から抜け出した騎士のように
I have saved all my ribbons for thee *4
ぼろぼろになった勲章をあなたのために守り通した

If I, if I have been unkind *5
もしも、もしも私が思いやりに欠けていたとしたら
I hope that you can just let it go by *6
できればただ見過ごしてもらえないだろうか
If I, if I have been untrue *7
もしも、もしも私が誠実と公正に欠けていたとしたら
I hope you know it was never to you
それはあなたに対してではなかったと分かって欲しい

Like a baby, stillborn *8
死産の赤子のように
Like a beast with his horn *9
角を持つ獣のように
I have torn everyone who reached out for me *10
手を差しのべてくれるすべての人を(意図せずに)傷つけてきた
But I swear by this song
だが、この歌にかけて誓う
And by all that I have done wrong
犯したすべての間違いにかけて誓う
I will make it all up to thee *11
あなたにそのすべての埋め合わせをすると

I saw a beggar leaning on his wooden crutch *12
松葉杖をついた乞食に出会った
He said to me, "You must not ask for so much"
「そんなに多くを求めちゃいけないよ」と彼は言った
And a pretty woman leaning in her darkened door *13
暗い戸口にもたれた綺麗な女に出会った
She cried to me, "Hey, why not ask for more?" *14
「ねえ、もっとたくさん求めてよ」と彼女は泣き叫ぶように言った

Oh like a bird on the wire
電線に止まる鳥のように
Like a drunk in a midnight choir
真夜中に群れて歌う酔っ払いのように
I have tried in my way to be free
私は私なりのやり方で自由であろうとしてきた


備考
  1. choir : 聖歌隊、合唱隊、合唱団、楽団、さえずる鳥の群れ
    ※空を飛ぶ鳥は自由の象徴であるが電線に止まる鳥はその自由を謳歌していない状態を示している。同様に合唱は自由の象徴であるがそれが真夜中の酔っ払いであることはその自由が周りの人間からは迷惑以外の何物でもないことを示している。そして、そのいずれも自由を得たいのに上手く行かずあがいている様子を表しているのではないだろうか。
  2. hook : 鉤、留め金。釣り針。ホック。人を引っかける罠
  3. old-fashioned : 古めかしい、昔風の、時代遅れの、昔流行した。旧態依然とした、古風な、昔かたぎの
  4. ribbon : リボン。紐・帯状のもの。屑きれ、ぼろきれ、ぼろぼろの状態。勲章の飾り紐、記章、勲章
    thee : "you(目的格)" の古語。thou(主格)-thy(所有格)-thee(目的格)。
    ※釣餌も本の騎士も自分の意志で自由に動くことはできない。そのために本当は十分に "save ribbons" することはできなかったはずである。"save ribbons" が何を意味するのかはよく分からないが、ここでは一応「誇りを守る」、「あなたがくれたリボン(親愛の象徴)を守る」等を想像して訳した。この一行の翻訳は間違っている可能性が高い。
  5. unkind : 不親切な、思いやりの無い、薄情な、酷薄な
  6. let ~ go by : (チャンス等を)見逃す、利用しない。(人の言動に)影響されない、~を気にしない。(人の過失に)触れずに済ます。~を見過ごす
  7. untrue : 虚偽の。忠実・誠実でない、公正でない、不正な。標準に合わない
  8. stillborn : 死産の。(計画等が)実現される前に挫折した、日の目を見ずに終わった
  9. beast : けだもの、大きな四足獣。(人間に対して)動物、獣。獣性、肉欲。獣のような人、人でなし、残忍(粗野・不潔)な人
  10. tear-tore-torn : 引き裂く、引きちぎる。裂傷を負わす。無理に引き離す。ひどく悲しませる・苦しめる
    ※訳文中の "(意図せずに)" は意訳であり英文には表されていない。死産の子が親や家族を悲しませるのは本人の意志ではどうにもならない運命であること、同様に他を傷つける角を持つ獣として生まれたことはその獣にとってどうにもならない運命であることを示しているのだろうと思う。
  11. make it up to : (人に)埋め合わせをする、償いをする
    make up with : ~を仲直りをする
  12. lean : (ある方向に)体を曲げる・伸ばす、(木などがある方向に)傾く。寄りかかる、もたれる
    crutch : 松葉杖
  13. darkened : 明かりの消えた、暗い
  14. Why not ~? = Why don't you ~? : ~してみたら?、~したらどうですか?、~しましょう(軽い提案を表す)
    ※乞食も女も自分にアドバイスをしてくれる人間の例として挙げられている。そして、それは相互に矛盾することがあり得、自分の迷いはやはり自分で解決するしかないと言っているように見える。また、深読みすると、何も持たない乞食が何も求めるなと言い多くを持っているであろう美しい女がもっと求めなさいと言うのは、自由であるはずの意志そのものが実はその人間が置かれた環境に規定された不自由なものであると表しているようにも思える。


 1969年のアルバム "Songs from a Room" より。1934年生まれのレナード・コーエンが35歳の頃の作品です。自分のわがままな生き方で相手を傷つけてきたことを恋人や配偶者に謝罪する内容の歌にも見えますが、"you" を神ととらえると自分の生き方についての悩みや迷いを歌っているようにも思えます。

Stories of The Street

2015年08月08日

Stories of The Street : Leonard Cohen




The stories of the street are mine, the Spanish voices laugh
この町の物語は私のもの。スペイン語の声が笑う
The Cadillacs go creeping now through the night and the poison gas
キャデラックがのろのろ進んでいる。夜と毒ガスの中を通って
And I lean from my window sill in this old hotel I chose *1
私は、自分で選んだこの古いホテルの窓枠にもたれ
Yes, one hand on my suicide, one hand on the rose *2
片手は自殺に触れ、片手は薔薇に触れている

I know you've heard it's over now and war must surely come
分かっている。こう聞いたんだろう。もうお終いだ、きっと戦争になるだろうと
The cities they are broke in half and the middle men are gone *3
大きな都市のいくつかは半ば破産し、中流階級は逃げ出している
But let me ask you one more time, oh, children of the dusk
だけど、もう一度だけ尋ねさせてくれ。夕闇の中の子供たちのことを
All these hunters who are shrieking now, oh, do they speak for us? *4
この狩人たちは皆金切り声を上げているが、彼らは私たちを代弁しているのか?

And where do all these highways go, now that we are free?
この幹線道路はどこへ続いているのか? 今や私たちは自由なのか?
Why are the armies marching still that were coming home to me? *5
なぜ今も軍隊が行進している? かつて私の胸を抉っていた軍隊が
Oh, lady with your legs so fine, oh, stranger at your wheel
お嬢さん。君の脚はとてもきれいだ。でも君の車の運転席には見知らぬ人が
You are locked into your suffering and your pleasures are the seal
君は苦しみの中に閉じ込められている。そして、君の快楽こそがそれを封印している

The age of lust is giving birth and both the parents ask *6
情欲の時代は誕生をもたらし、親となった二人は看護婦に請う
The nurse to tell them fairy tales on both sides of the glass
ガラスの内側と外側、その両方の御伽噺を教えて欲しいと
And now the infant with his cord is hauled in like a kite *7
そして今、子供は凧のように紐で引かれ
And one eye filled with blueprints, one eye filled with night *8
その片方の目は青写真で満たされ、片方の目は夜で満たされている

Oh, come with me my little one, we will find that farm
一緒においで、可愛いきみ。二人で農園を見つけよう
And grow us grass and apples there and keep all the animals warm *9
そこで稲とリンゴを育てよう。動物たちをみな暖かくしてあげよう
And if by chance I wake at night and I ask you who I am
もし、たまたま夜中に目覚めて「私は誰?」と君に尋ねるようなことがあったら
Oh, take me to the slaughterhouse, I will wait there with the lamb *10
私を屠殺場へ連れて行っておくれ。私はそこで子羊とともに待つだろう

With one hand on the hexagram and one hand on the girl *11
一方の手を六芒星の上に置き、もう一方の手を女の上に置いている
I balance on a wishing well that all men call the world *12
万人が「世界」と呼ぶ願い井戸の縁で私は均衡を保とうとしている
We are so small between the stars, so large against the sky
私たちは恒星たちの間ではとても小さいが、この空に対してはとても大きい
And lost among the subway crowds I try to catch your eye *13
そして、地下鉄の人ごみの中で迷い、私はなんとか君の目に留まるよう努めている


備考
  1. sill : 土台、敷居、下枠
  2. on one hand : 一方では
  3. broke : 1.break の過去形 2.[形] 無一文の、文無しの、破産した
  4. shriek : 金切り声を出す、悲鳴を上げる、キャッと(キャーと)叫ぶ
  5. home : [副詞] 深く、ぐさりと、ずぶりと、狙った所に。胸にこたえるほど、痛烈に
    come home to person : 人の胸にこたえる、身にしみる、肺腑を抉る、しみじみ感じる、(辛い・困難なことが)胸にグッとくる
  6. lust : 性欲、肉欲、情欲。渇望、切望。
    give birth to ~ : ~を産む
  7. infant : 幼児、5~7歳の児童。初心者、入門者。初期・未発達の段階にあるもの
    cord : ひも、糸、電気コード。きずな、束縛、拘束。解剖学的な索状組織・帯・綱
    haul : (重い物を力を入れて)引っ張る、引きずる。(綱などを)引く、たぐる
  8. blueprint : 青写真、設計図、見取り図、詳細な計画、グラビア印刷の青焼き
  9. ※ "grow us grass and apples" の主語が分からない。前行の we なのか、あるいは "grass and apples" なのか? または "us(=we) grow grass and apples" が正しい語順なのだろうか。
  10. slaughterhouse : 食肉処理場、屠殺場。修羅場
  11. hexagram : 六芒星、六線星形。ダビデの星(ユダヤ人のシンボル。イスラエルの国旗にもあしらわれている)
  12. wishing well : 願いの井戸、願掛け井戸。願いを唱えたり、コインを投げ入れたりする。
  13. catch a person's eye : (事・物が人の)目にとまる、(人が人の)注意を引く


 1967年のデビューアルバム "Songs of Leonard Cohen" より。



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