Fields Of Gold

2016年02月21日

Fields Of Gold : Sting




You'll remember me when the west wind moves upon the fields of barley *1
あなたは私を思い出すでしょう。西風が大麦畑を揺らす春に
You'll forget the sun in his jealous sky as we walk in fields of gold *2
あなたは嫉妬の空の太陽を忘れるでしょう。二人で黄金の世界を歩いていれば

So she took her love for to gaze awhile upon the fields of barley *3
かくして女は、大麦の畑を眺めようと恋人の手をたずさえた
In his arms she fell as her hair came down among the fields of gold
黄金の畑で男の腕にいだかれ、女の髪はほどけた

Will you stay with me, will you be my love among the fields of barley?
ずっと一緒にいてくれる? 私の恋人でいてくれる? この大麦畑に囲まれて
We'll forget the sun in his jealous sky as we lie in fields of gold
嫉妬の空の太陽なんて忘れましょう。私たちが黄金の世界で寝転んでいる間は

See the west wind move like a lover so upon the fields of barley *4
あの西風を見て。まるで恋人がするみたいに、大麦の畑を揺り動かしている
Feel her body rise when you kiss her mouth among the fields of gold
彼女の体を感じる。あなたにキスされると私の体も浮き上がる。あの黄金色の大麦と同じ

I never made promises lightly and there have been some that I've broken
何度か破ったこともあったけれど、決して軽々しく約束したわけじゃない
But I swear in the days still left we'll walk in fields of gold *5
でも、ここに誓う。残された日々、黄金の世界を二人で歩く
We'll walk in fields of gold
黄金色の世界を二人で歩く

Many years have passed since those summer days among the fields of barley
あの大麦畑での夏の日々から長い年月が過ぎた
See the children run as the sun goes down among the fields of gold
見て。子供たちが夕暮れの黄金色の畑の中で走っている
You'll remember me when the west wind moves upon the fields of barley *6
あなたは私を思い出すでしょう。西風が大麦畑を揺らす春に
You can tell the sun in his jealous sky when we walked in fields of gold
あの嫉妬の空の太陽に伝えて。私たちが黄金の世界を歩いていた頃のことを
When we walked in fields of gold, when we walked in fields of gold
私たちが黄金の世界を歩いていた頃…


備考
  1. ※ユーラシア大陸の西岸に位置する西ヨーロッパでは、暖流である北大西洋海流に温められた偏西風により、一年中暖かい西風が吹いている。そして、ボティチェリの『ヴィーナスの誕生』や『春』にも描かれたギリシャ神話の西風の神ゼビュロスに象徴されるように、古来、暖かい西風は春の訪れを告げる優しい風としてとらえられてきた。
    ※大麦は、秋に播種して翌春に収穫する秋蒔き種と春に播種して初夏に収穫する春蒔き種がある。両方を栽培している土地であれば、黄金に色づいた大麦の姿が年二回見られることになる。従って、冒頭のこの一行は、1.春→初夏、2.春→春、3.初夏→春、3.初夏→初夏の四種類の時間の経過が成り立ち得るが、西風が春を象徴する風だとすると西ヨーロッパ人には 2 か 3 がイメージされやすいのではないだろうか。そして最後の連の初めに「あの大麦畑での夏の日々」とあることから、特に「3.初夏→春」がふさわしいのではないかと思う。それで訳文に「春に」という言葉を入れたが、これは全くの想像であり直訳では「揺らす頃に、揺らす時に」となる。
  2. ※前行の定冠詞付きの "the fields" は現実世界、現実的存在を示し、ここの無冠詞の fields は精神世界、観念的存在(イメージの拡がりとしては天上界も含意されているように思える)を示しているのだろう。
    ※ "his jealous" の his は直近の sun を指すと解するのが妥当だろうが、この歌詞では "the west wind" が男性、"the fields of barley" が女性の比喩として使われているので、"the west wind" を指すのかもしれない。そのいずれにせよ、jealous は二人の関係を阻むものを暗示している。具体的には書かれていないが、三角関係的な男か女、二人の関係に反対する親族、宗教や習慣他諸々の環境的な障壁あるいは兵役による別離などが想像できる。しかし、この歌詞にはかすかに「死」のイメージが込められているので、この「嫉妬」は二人を死によって引き裂き運命を司る「天上界や神的存在」が最も強く想像できるのではないだろうか。
  3. ※ "for to" は11世紀頃から使われていた古い形の不定詞で、現代でも方言として使われるらしい。
    awhile : しばらく、少しの時間。(文語的表現)
    ※2014年に出版された"The Art of Noise: Conversations With Great Songwriters"(by Daniel Rachel)というインタビュー集に次のような言葉がある。
    ―― "Fields of Gold" には古風な表現の歌詞がありますね。"So she took ~"
    スティング : 僕は詩に許される文法的な破格を使うことがあるんだ。(ここでは)時代を超えた観念、まるで16世紀に書かれた歌であるかのような観念を作り出したかったんだ。
    <http://www.songfacts.com/detail.php?id=1684>
    ※つまりスティングはこの2行だけを三人称の神の視点にすることで「これは二人の男女の古い物語である」というイメージを歌詞全体に付け加えたかったのだろう。
  4. 2007年に出版された "Lyrics by Sting" という本にスティングはこの歌について次のように語っている。「イングランドの自宅は大麦畑に囲まれていて、夏になると、風がその表面を揺り動かす様がまるで海原の金色に光る波のようで、見ていてとても面白いんだ。そして、この景色には、性の生得的な何か、何か根源的なものがある(と思った)…まるで風が大麦と愛を交わしているような。恋人たちはここで約束をした。そして、きっと、季節が毎年決まって巡り来ることの安心感によって彼らの絆は強められるんだ。(直上と同じURL参照)
  5. ※「残された日々」という表現は微かに「死」を暗示させる。
  6. ※この一行は冒頭と全く同じ文だが、その内容は大きく異なっている。冒頭は「あなたはこれから先私を忘れることはできない。あなたと私は一緒になるだろう」と言っており、ここの一文は「私はあなたのいる世界を離れてしまった。あなたはこれから先私を想像の世界でしか感じることができない」と言っているように見える。


 1993年のアルバム "Ten Summoner's Tales" に収録。
 この翻訳に際して、次のサイト様の解説を参考にさせていただきました。このブログで翻訳をする際は、できるだけ他の方の翻訳は見ないようにしているのですが、たまたま検索にヒットした次のサイト様の解説が丁寧で分かりやすく見事であったため、自分が翻訳する前につい読み込んでしまいました。この歌詞について深く理解したい方は、私のブログの訳文を読む前に、リンク先の解説と訳文を読まれることをお奨めします。
 Lady Satin's English Project(http://ladysatin.exblog.jp/20801530

 なお、このブログに掲載した和訳は、若い男女の出会いから長い連れ添いの末の死別までを描いたものだろうと想像して訳してあり、一人称を女性と規定し、死んだ女が生きている男に語りかけているという体裁をとっています。ただし、これは恣意的なものなので解釈によっては一人称を男性と規定することもできますし、二人の仲を阻害しようとするものが死ではない他の物という解釈も成り立つだろうと思います。

Desert Rose : Sting feat. Cheb Mami

2016年01月11日




 leyli ya leyli *1
 夜よ、私の夜よ

 hadi mudeh taweela
 この長い間ずっと
 wu ena nhawis ena ala ghzey il tee
 私は生涯の恋人を捜し続けている
 wu ena nhawis ena ala ghzey il tee
 私は生涯の恋人を捜し続けている
 wu ena nhawis ena waaaaaa ala ghzaly
 私は愛を捜し続けている


I dream of rain
雨の夢を見る
I dream of gardens in the desert sand *2
砂漠の中の庭園の夢を見る
I wake in pain
苦痛に目覚める
I dream of love as time runs through my hand
愛の夢を見る。そこでは時は砂のように掌から滑り落ちる
I dream of fire
火の夢を見る
Those dreams are tied to a horse that will never tire
どの夢も疲れを知らぬ馬と結びついている
And in the flames
そして、炎の中で
Her shadows play in the shape of a man's desire
彼女の影が男の欲望に象られた姿を演じる

This desert rose *3
この砂漠の薔薇
Each of her veils, a secret promise
そのベールの一つ一つがどれも秘密の約束
This desert flower
この砂漠の花
No sweet perfume ever tortured me more than this *4
これほどに私に責め苦を負わせる甘い芳香は今までなかった

And as she turns
そして、彼女が振り向き
This way she moves in the logic of all my dreams
私のすべての夢の論理に従って振る舞う
This fire burns
(だが)この炎は燃え尽き
I realise that nothing's as it seems
私は何事も見かけどおりではないことを知る

I dream of rain
雨の夢を見る
I dream of gardens in the desert sand
砂漠の中の庭園の夢を見る
I wake in pain
苦痛に目覚める
I dream of love as time runs through my hand
愛の夢を見る。そこでは時は砂のように掌から滑り落ちる
I dream of rain
雨の夢を見る
I lift my gaze to empty skies above
見上げると空には雲一つない
I close my eyes
目を閉じる
This rare perfume is the sweet intoxication of her love *5
この類稀な芳香。それは彼女の愛が持つ甘い中毒なのか


 aman aman aman
 切に願う

 wu ena nhawis ena ala ghzayelty
 私は生涯の恋人を捜し続けている
 omri feeky inti ya
 私の命はすべてあなたのもの
 fish hada gherik
 他には誰もいない。あなたこそが
 ah ya inti inti ya
 ただあなたこそが、愛


I dream of rain
雨の夢を見る
I dream of gardens in the desert sand
砂漠の中の庭園の夢を見る
I wake in pain
苦痛に目覚める
I dream of love as time runs through my hand
時が掌から砂のように滑り落ちる愛の夢を見る

Sweet desert rose
甘い "砂漠の薔薇"
Each of her veils, a secret promise
そのベールの一つ一つがどれも秘密の約束
This desert flower
この砂漠の花
No sweet perfume ever tortured me more than this
これほどに私に責め苦を負わせる甘い芳香は今までなかった

Sweet desert rose
甘い "砂漠の薔薇"
This memory of Eden haunts us all *6
私たち皆に取り憑いて離れない、このエデンの記憶
This desert flower
この砂漠の花
This rare perfume is the sweet intoxication of the fall
この類稀な芳香。それは堕落の甘い中毒なのか


 aman aman aman
 切に願う

 Ya lili ah ya leel
 夜よ、夜よ


備考
  1. ※アラビア語の部分はアルジェリアの男性歌手シェブ・マミが歌っている。翻訳は songfacts.com の一般の投稿者(レバノン系カナダ人)が英訳してくれたものを参考にした。アラビア語→英語→日本語と二重の翻訳に加え投稿者の英訳がどの程度正確なのか分からないので、この翻訳はあまり信用しないで欲しい。
     <http://www.songfacts.com/detail.php?id=697>
    ※この投稿者によれば、"leyli ya leyli" は歌や詩でよく使われる言葉で、とくに悲しみを表現するのに用いられるらしい。夜を擬人化して、自分には誰もいない、この気持ちを聞いてくれるのはあなた(=夜)しかいないという感じの表現だという。スティングが "I dream of rain" に続けてスキャットのように何か歌っている所もこの言葉ではないかと思うが、はっきりとは分からない。
  2. ※「砂漠の中の庭園」はオアシスを連想させ *3 の「砂漠の薔薇」につながっている。同様に、この一連にあるいくつかの言葉は後半の箇所にイメージが連動するように書かれている。例えば「苦痛→責め苦」「火→火」というように。
  3. desert rose : (1) 砂漠で自然にできる薔薇のような形状の結晶。水に溶けたミネラルが水が干上がることにより結晶化してできる。そのため、"desert rose" が採取される場所は昔水が存在した、すなわちオアシスであったと考えられる。
    (2) アフリカ、アラビア半島原産の "Adenium Obesum" という植物。夾竹桃の一種で毒性がある。

    DesertRose     Adenium obesum
    "Sandrose 2004 06" by Lichtbildner     "Adenium obesum" by Fan Wen

  4. torture : 拷問にかける、拷問で自白を引き出す。ひどく苦しめる、悩ます
  5. intoxication : 酩酊、酔わせること、中毒。有頂天、陶酔、夢中
    ※ "I dream of rain" からここまでの8行は、前半の4行は冒頭の歌詞と同じだが後半の4行は異なっている。これは、現実が夢の通りにならないことを経験したための迷いや戸惑いを示している。
    ※この一行は、perfume で一旦切って最後の語尾が上がる歌い方をしているので、おそらく「疑問」の意味が込められていると思う。
  6. haunt : 幽霊が出る、しばしば訪れる、付きまとう、絶えず思い浮かぶ、悩ませる
    ※「エデンの記憶」は禁断の知恵の実を食べて楽園から追放されたこと、すなわち神の掟を破る行為に対する自制と欲望の葛藤を示しているのだろうか? ここで歌われる "I dream of rain" のくだりは三回目であり、この男は躊躇しながらも同じようなことを繰り返しているように見える。


 1999年のアルバム "Brand New Day" より。
 深刻な恋愛やいわゆる純愛などを歌ったものではありません。自分を幸福に導いてくれる理想の女を夢にまで見て求め続ける男は、今生きている荒涼とした現実世界(=砂漠)から逃避したいと願っているように見えます。そして、ようやく見つけた「砂漠の薔薇」が夢の通りではなかったことに落胆しつつも、彼の欲望が萎えることはなく、幾度も似たようなことを繰り返しているのではないでしょうか。「私は現実を悟った」や「何もない空を見上げた」などの多少滑稽にも受け取れる歌詞を見ると、この歌はそうした「分かっちゃいるけどやめられない」という男のロマンチシズムやお目出度さを揶揄したもののように感じます。ただ、スティングは生真面目な人のようなので、もう少し深刻に、人間の欲望に対する弱さなどを冷静に描こうとしたのかもしれません。
 シェブ・マミはアルジェリアのポップ音楽ライの有名歌手だそうです。とても美しい声でまったく男性の声には聞こえません。このような文化的融合は異文化の対立を緩和・解消するために大きな力を持ち、そういう意味でもスティングは偉大だと思います。ただ、シェブ・マミで検索すると「元恋人を強制流産させるために監禁。逮捕後保釈中に逃亡、再逮捕。懲役5年」などの記事がヒットし、「私の命はすべてあなたのもの」という歌詞が嘘くさく見えて困ります。

Russians

2014年08月24日

Russians : Sting




In Europe and America
ヨーロッパとアメリカで
There's a growing feeling of hysteria
集団ヒステリーが起きようとしてる
Conditioned to respond to all the threats *1
すべての脅しに条件反射のように反応してる
In the rhetorical speeches of the Soviets
たんに大げさなだけのソビエトの発言に対して
Mister Krushchev said, 'We will bury you' *2
フルシチョフ氏は「お前たちを葬ってやる」と言った
I don't subscribe to this point of view *3
僕はこういう物の見方には同意しない
It'd be such an ignorant thing to do
そんなことはあまりに馬鹿げてる
If the Russians love their children too
ロシア人も僕たちと同じように子供たちを愛しているとすれば

How can I save my little boy
僕のこの子をどうしたら救えるだろう?
From Oppenheimer's deadly toy? *4
オッペンハイマーの死のおもちゃから
There is no monopoly on common sense *5
良識に独占権なんてない
On either side of the political fence
政治的な垣根のどちら側にも
We share the same biology *6
僕たちは同じ生態系を分かち合ってるんだ
Regardless of ideology
思想信条なんて関係ない
Believe me when I say to you
僕の言うことを信じてくれ
I hope the Russians love their children too
僕は思うんだ。ロシア人も子供たちを愛してるんだって

There is no historical precedent *7
歴史的前例なんてない
To put words in the mouth of the president *8
誰も大統領に言うべきことを教えるなんてできない
There's no such thing as a winnable war
勝てる戦争なんてものはない
It's a lie we don't believe anymore
嘘だ。僕たちはもう信じはしない
Mister Reagan says 'We will protect you'
レーガン氏は「私たちがあなた方を守ろう」と言う
I don't subscribe to this point of view
僕はこういう物の見方には同意しない
Believe me when I say to you
僕の言うことを信じてくれ
I hope the Russians love their children too
僕は思うんだ。ロシア人も子供たちを愛してるんだって

We share the same biology
僕たちは同じ生態系を分かち合ってるんだ
Regardless of ideology
思想信条なんて関係ない
What might save us, me and you *9
僕たち、つまり僕とあなたたちは救われるだろう
Is if the Russians love their children too *9
なぜなら、ロシア人だって子供たちを愛しているだろうから


備考
  1. condition to do : ~するように慣らす、条件づける
    threat : 脅かすもの、脅し、脅迫、脅威
  2. Krushchev : ニキータ・フルシチョフ(1894-1971)。1953-64年のソ連最高指導者。スターリンの死後後継者となったフルシチョフは米仏など西側諸国と平和共存外交を進め冷戦下に一時的な「雪解け」をもたらした。しかし、激情的な性格で舌禍事件も多く、1956年のポーランド大使館でのレセプションにおいて西側諸国の大使たちに「お前たちを葬ってやる」と発言したらしい。
  3. subscribe : 署名して約束する、寄付する、出資する、署名して同意する、賛成・支持する
  4. Oppenheimer : ロバート・オッペンハイマー(1904-67)。ユダヤ系アメリカ人の物理学者。原子爆弾開発のマンハッタン計画の主導者。
  5. monopoly : 独占、専売、独り占め、独占権・専売権、専売品、独占事業、専売公社
  6. biology : 生物学、生態学、植物相・動物相、生活現象、生理、生活史
    ※この一行は「同じ生物学・生理を持っている→同種の生物である→同じ人間である」という意味かもしれないがよく分からない。
  7. precedent : 前例、先例、慣例
  8. put words into a person's mouth : 人が(言わないのに)言ったように言う、言うべきことを人に教える
  9. ※ここは [What might save … ] is [if the Russians love … ]. というSVCの構文でSとCがいずれも名詞節をなしているのだろうと推測して、「私たちを救うであろうものは、ロシア人も同様に彼らの子供たちを愛しているかどうかということである」という直訳を若干意訳して掲載したが、正否に自信はない。


 1985年の初ソロアルバム "The Dream of the Blue Turtles" より。
 東西冷戦下の1978年、アフガニスタンでは共産主義政党が政権を握りましたが抵抗勢力の武装蜂起が頻発します。1979年にソ連はアフガニスタンへ侵攻し反政府勢力との戦争が始まります。一方アメリカは抵抗勢力である義勇軍ムジャヒディンに武器や資金などを提供し、アフガニスタンは東西冷戦の代理戦争の場と化していきます。こうして、1960年代末から約十年続いた米ソ対話のデタントの時代は終わりを告げ、新たな冷戦が始まります。1980年のモスクワオリンピックを西側諸国がボイコットし、1984年のロサンゼルスオリンピックを東側諸国がボイコットしました。この歌は、この頃の緊張した国際情勢を背景としています。また、当時ムジャヒディンには2001年のアメリカ同時多発テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディンもおり、アメリカは結果的に自らを脅かすゲリラ組織の育成に努めたことになります。
 アフガニスタン紛争で疲弊したソ連は内部から崩壊を始め、1985年にはミハイル・ゴルバチョフが党書記長に就任し、ペレストロイカを掲げて政治改革を図りました。ゴルバチョフは外交においても西側との関係修復を図り、米ソの代理戦争の場であったアフリカからも順次手を引きます。そして、東ヨーロッパ諸国でも共産主義政権が崩壊を始め、ゴルバチョフとジョージ・H・W・ブッシュ(レーガン後の大統領)は1989年のマルタ会談で冷戦の終結を宣言しました。
 米ソの核兵器の均衡により世界の平和が保たれていると多くの人が信じていた時代に、この歌やたとえば FGTH の "Two Tribes" のような歌がアングラではなく表舞台でヒットする欧米は、日本に比べて表現の自由という観念がしっかりと根付いているのだろうと感じます。
 なお、この歌のメロディはロシアの作曲家セルゲイ・プロコフィエフの映画音楽『キージェ中尉』の一節から引かれたものだそうです。このことにもロシア人に対する敬意を込めようというスティングの意思と誠実が見られます。



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