Wild Frontier : Gary Moore

2011年04月21日




I remember the old country they call the emerald land *1
俺は忘れない。緑の宝石と呼ばれる祖国を
And I remember my home town before the wars began
俺は忘れない。争いが始まる前の故郷を

Now we're riding on a sea of rage
今俺たちは怒りの海へ乗り出している
The victims you have seen
お前たちも見ただろう。犠牲者たちを
You'll never hear them sing again
お前たちはもう二度と聞くことができない。彼らが歌う
The Forty Shades Of Green *2
『四十の緑』を

We're goin' back to the wild frontier *3
俺たちは荒れた国境へ戻ろうとしている
Back to the wild frontier, it's calling
荒れた国境が呼んでいる

I remember my city streets before the soldiers came
俺は忘れない。兵士たちが来る前の我が町を
Now armoured cars and barricades remind us of our shame *4
装甲車とバリケードが俺たちの恥辱を思い出させる

We are drowning in a sea of blood
俺たちは血の海に溺れている
The victims you have seen
犠牲者たちを見てきただろう
Never more to sing again
彼らはもう二度と歌うことはない
The Forty Shades Of Green
『四十の緑』を

We're goin' back to the wild frontier
俺たちは荒れた国境へ戻ろうとしている
Back to the wild frontier, it's calling
荒廃した国境が呼んでいる

Those are the days I will remember
あの日々を俺は忘れないだろう
Those are the days I most recall *5
あの日々を俺は無限に思い起こす
We count the cost of those we lost *6
俺たちは失った彼らを悔やみ続ける
and pray it's not in vain
そして祈る。喪失を無駄にしてはならないと
The bitter tears of all those years
苦い涙のあの年月
I hope we live to see those days again *7
俺たちがもう一度あの日々をやり直せたらと思う

Now we're riding on a sea of rage
今俺たちは怒りの海に乗り出している
The victims you have seen
犠牲者たちを見てきただろう
You'll never hear us sing again
俺たちがまた歌うのを聞くことはできない
The Forty Shades Of Green
『四十の緑』を

And I remember a friend of mine
俺は忘れない。ある友を
so sad now that he's gone
彼を亡くした悲しみを
They tell me I'll forget as time goes on
時が経てば忘れると皆は言うが

We're goin' back to the wild frontier
俺たちは荒れた国境へ戻ろうとしている
Back to the wild frontier, it's calling
荒廃した国境が呼んでいる

Those forty shades of green are calling me back home
四十の緑が俺を故郷へと呼んでいる

Ooh, we're goin' back
俺たちは戻ろうとしている
back to the wild frontier
荒廃した国境へ
I'm goin' back
俺は戻ろうとしている
back to the wild frontier
荒廃した国境へ


備考
  1. old country : (移民の)本国、祖国
  2. shade : 色合い、色調、種々の色合い
    shades : いろいろな種類
    Forty shades of green : 米カントリー歌手ジョニー・キャッシュがアイルランドを歌った歌。緑色の種類が40種もあるという意味だろう。
  3. go back : 戻る、立ち返る、退却する、さかのぼる、回顧する
    frontier : 国境、辺境
  4. shame : 恥ずかしい思い、羞恥心、恥辱、恥、不面目、不名誉、ひどく残念なこと、つらいこと、ひどいこと、不幸
  5. most : many, much の最上級。最も多い、最も大きいことを表す。
    recall : 思い出す、想起する、呼び戻す、回収する、生き返らせる
  6. count the cost : 費用を見積もる、先の見通しをつける、事前に危険・損失などを考慮する、(愚かな行いなどの)悪い結果に苦しむ
  7. see : 遭遇する、経験する


 先日ゲイリー・ムーアの訃報を聞きました。2011年2月6日、休養先のスペインのホテルで亡くなったそうです。心臓発作とのことですが詳細は不明です。享年58歳。早すぎる逝去を哀悼します。


 彼は1952年4月4日北アイルランドのベルファストで生まれました。北アイルランドはグレートブリテン及び北部アイルランド連合王国の領土ですが、当時北アイルランドで生まれた者は自動的にアイルランド共和国の市民権が得られたそうです。彼の国籍がどうだったかはよく分からないのですが、彼が言う祖国とはアイルランドを指しています。長く連合王国の植民地だったアイルランドですが、北部にはブリテン島からの植民者も多く、この北アイルランドでは連合王国に留まることを望む人たちと独立を望む人たちの政治的な対立が続いています。この対立は1960年代に過激化し暴動やテロなどにより数多くの死傷者が出ています。歌詞にある the wars は一時は内戦と言えるほどの規模であったこれらの紛争の数々を指しているのでしょう。彼は16歳の時(1968年)ベルファストからアイルランドのダブリンに移ったそうです。イギリスとアイルランドの対立が先鋭化するのは1960年代後半からで血の日曜日事件は1972年に起きています。彼の子供時代の北アイルランドではそれなりに穏やかな社会生活が営めていたのでしょう。
 タイトルでもある wild frontier という言葉がいちばん訳しにくく、また意味が分かりにくいです。wild は「人に馴らされていない→野生の→未開の→荒れた」という意味がありますが、ここでは「争いにより物理的・精神的に荒れている、すさんでいる」というイメージで使われているのではないかと思いました。また、frontier は「開拓精神」などのプラスイメージを伴うものではなく単純にイギリスとアイルランドの国境地方という意味合いで使われているのではないかと考えました。この wild frontier をどうとらえるかによって歌全体に対する解釈がかなり変わってくるだろうと思います。私は、大人になってイギリスに住むようになった彼が子ども時代を過ごした北アイルランドの惨状に心を痛め、望郷の嘆きを表していると想像しました。明示されてはいませんが、戦い・争いを拒否しようという意志も表されているように見えます。


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Over The Hills and Far Away

2010年03月09日

Over The Hills and Far Away : Gary Moore




They came for him one winter's night.
冬の夜、その男を求めて奴らはやってきた
Arrested, he was bound. *1
男は捕まり縄をかけられた
They said there'd been a robbery, his pistol had been found. *2
強盗があり、男の拳銃が見つかったと言う

They marched to the station house, he waited for the dawn. *3
警察へ連れられた男は、夜明けを待った
And as they led him to the dock, he knew that he'd been wrong. *4
被告席に立たされた時にようやく、自分(がしていたこと)はずっと間違っていたと悟った
"You stand accused of robbery," he heard the bailiff say. *5
「お前は強盗の容疑で起訴されている」と言う役人の声が聞こえた
He knew without an alibi tomorrow's light would mourn his freedom. *6
男には分かっていた。アリバイがなければ、自由は明日の光から弔われるだろうことを

Over the hills and far away, for ten long years he'll count the days.
丘を越え遥か遠く、十年の月日を男は数え続けることになるだろう
Over the mountains and the seas, a prisoner's life for him there'll be.
山を越え海を越えた彼方で、囚人としての人生を送ることになる

He knew that it would cost him dear, but yet he dare not say. *7
男はそれが極めて過酷なものだと知っていたが、それでも(真実を)言おうとしなかった
Where he had been that fateful night, a secret it must stay.
あの運命の夜を過ごした場所。それは守り抜かねばならぬ秘密だった
He had to fight back tears of rage. *8
怒りの涙を抑え込み
His heart beats like a drum.
心臓が早鐘のように鳴る
For with the wife of his best friend, he spent his final night of freedom.
自由だった最後の夜、男は、親友の妻とともにいたのだから

Over the hills and far away, he swears he will return one day.
丘を越え遥か遠く、男はいつの日か戻ると誓う
Far from the mountains and the seas, back in her arms he swears he'll be.
山を越え海を越えて、女の腕の中へ戻ると誓う
Over the hills and far away.
丘を越え遥か遠く

Over the hills and far away.
丘を越え、遥か遠く

Each night within his prison cell,
監房で夜毎に
he looks out through the bars.
鉄格子の外を見つめる
He reads the letters that she wrote.
女の手紙を読む
One day he'll know the taste of freedom.
いつの日か男は自由の味を知ることだろう

Over the hills and far away, she prays he will return one day.
丘を越え遥か遠く、女は男が戻る日を祈る
As sure as the rivers reach the seas, back in his arms again she'll be.
川が海へ達するほど確かに、女は男の腕の中へ戻るだろう

Over the hills and far away, he swears he will return one day.
丘を越え遥か遠く、男はいつの日か戻ると誓う
As sure as the river reach the seas, back in his arms is where she'll be.
川が海へと達するように、男の腕の中へと女はたどりつくだろう

Over the hills and far away, she prays he will return one day.
丘を越え遥か遠く、女は男が戻る日を祈る
As sure as the rivers reach the seas, back in her arms is where he'll be.
川が必ず海へと達するように、女の腕の中へと男はたどりつくだろう

Over the hills.
丘を越え、
Over the hills and far away.
丘を越え遥か遠く


備考
  1. bind - bound - bound : しばる
  2. robbery : 強盗、強奪、略奪
  3. station house : 警察本署
  4. dock : 刑事法廷の被告席
  5. stand : ある状態にある、~である、~の立場にある
    accuse : 告発する、告訴する、起訴する
    bailiff : sheriff の下役で、令状送達、差し押さえ、刑の執行などをおこなう執行吏
  6. alibi : 現場不在証明
    mourn : 嘆く、悲しむ、悼む、哀悼する、喪に服す、弔う
  7. cost : 貴重なものを失わせる、犠牲にさせる、苦痛を与える
    cost sb dear : sb(人)にとって高いものにつく、ひどい目にあわせる
    dare : あえて(思い切って、恐れずに、勇気を持って、生意気にも)~する
  8. fight back : 反撃する、やり返す、抵抗する、食い止める、感情・涙などを抑える、こらえる
    rage : 激怒、憤怒、激しさ、猛威、激情、熱狂、情熱


 ゲイリー・ムーアは1952年、北アイルランドのベルファスト生まれ。ロック、ブルースのボーカリスト、ギタリストとして活躍しています。この歌は1987年のアルバム Wild Frontier に収録されています。ギターの良さはもちろんですが、泥臭いメロディーと声が結構好きです。
 歌詞については、親友の妻と深い関係になったというのが鍵なので、十年たって出てきたところで「親友」はどうするんだと突っ込みたくもなります。また、強盗現場で男の拳銃が見つかったということから、この強盗は仕組まれたものでこの男は誰か(おそらく浮気に気づいた夫=親友)にはめられたのだと推測できます。こんな下世話な二時間ドラマみたいな物語を哀愁あるメロディーで情緒を込めて歌い上げられると、複雑な気分になります。許されざる悲恋を歌っているといえばそうなのでしょうが、この物語には何か他に隠された由来があるのかもしれません。
 このストーリーの設定は1959年に作られた The Long Black Veil というカントリーソングと似ています。この歌はいろいろな人がレコーディングしているのですが、私の知っているのはチーフタンズの同名のアルバムにあるミック・ジャガーが歌ったものです。The Long Black Veil では、男は殺人の罪で死刑となり女が黒いヴェールで墓を訪れるのですが、親友の妻との関係を秘匿するためにアリバイをあきらめるという設定が同じなのです。この二つの歌に関連があるのではないかと調べてみたのですが、何も見つかりませんでした。ゲイリー・ムーアが The Long Black Veil を知っていたかどうかも定かではありません。


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