Death To The Storm

2012年12月08日

Death to The Storm : Joe Henry




There's a song we used to know
かつては知られたこの歌
A kind of weary blues
くたびれたブルース
Some broken tune from long ago
昔からの調子はずれだが
Some of us still like to use
今でも使いたがる者もいる

It hangs up high in the rafters *1
天井から吊るされたまま
Like smoke it has no form
煙のように形をなさず
Keep it all hid like laughter
すべてを隠した笑いのように
And sing out death death to the storm
死を歌う。嵐へと向かう死を

Death to the storm
嵐へと向かう死を

We keep it all hid like laughter
俺たちはすべてを隠し、笑う
And sing out death death to the storm
そして死を歌う。嵐へと向かう死を

I've caught my rage in the making *2
俺は自らの怒りを捕まえて成功した
Alive here in my hand
生きたままこの手に
But it bent the rod to breaking
しかし、それは折れるまでに棹をたわませた
And still i'm a hungry hungry man
そして、今でも俺は飢えた者だ

The trouble is so underrated *3
困難は見くびられ過ぎる
I've been battered rusted whored *4
俺は滅多打ちにされ、錆付き、身を売った
Calling all the great ill fated *5
呪われた災厄ばかりを呼んだ
Who bring death death to the storm
死をもたらす者。嵐へと向かう死を

Death to the storm
嵐へと向かう死を

We call upon the great ill fated
俺たちは呪われた災厄を呼ぶ
Who bring death death to the storm
死をもたらす者。嵐へと向かう死を

A line of cars is rolling westbound *6
車線はうねりながら西へ向かう
A dark river just begun
黒く深い川は始まったばかりだ
The tramps are huddled in their best now *7
今が盛りだとばかりに重い足音が重なり響く
Like a funeral in the sun *8
真昼の葬列のように

A man waits on orange crates *9
男はオレンジの箱を待っている
His meager eyes go soft and warm *10
やせ細った目が優しく温かくなる
As women wade the deep parade *11
女たちは行列をかき分けて進む
Cheering death death to the storm *12
死を喝采している。嵐へと向かう死を

Death to the storm
嵐へと向かう死を

As women wade the deep parade
女たちは行列をかき分けて進む
Cheering death death to the storm
死を喝采している。嵐へと向かう死を


備考
  1. raffer : 屋根の垂木、梁(はり)
  2. catch : 捕まえる、間に合う、見つける
    the making : 成功・発展の原因・手段
  3. underrate : 安く見積もる、過小評価する、見くびる
  4. whore : 売春する、買春する、金や欲得の為に妥協する・信用を汚す
  5. ill : 難儀、面倒、不幸、災難、悪、危害、病気、不快
  6. rolling : なだらかに起伏している、うねうねとした、横揺れする
    westbound : 西行きの
  7. tramp : 放浪者、無宿人、重い足どり、重い足音、徒歩(旅行)
    huddle : ごちゃごちゃに積み上げる、ぎっしり集める、詰め込む、体を丸く縮こませる
  8. funeral : 葬式、葬儀、葬列
  9. crate : 枠箱、木枠、酒壜等のケース、棺おけ
  10. meager : 食事の質が劣る、量が不足している、貧弱な、乏しい、やせ細った
  11. wade : 水の中を歩く、雪・泥・草の中をやっと通る、苦労して進む、やっと切り抜ける
  12. cheer : 喝采する、声援する、歓呼する、励ます、元気付ける


 2009年のアルバム Blood From Stars より。
 分かりにくく、いろいろな解釈ができそうです。嵐、怒り、西に向かう車、葬列、オレンジなどの言葉を眺めていると、スタインベックの『怒りの葡萄』を思い出します。1939年に出版されたこの小説は1930年代大恐慌下のアメリカが舞台で、農業の機械化・資本主義化と苛烈な砂嵐に土地を追われた中部の農民たちが豊かな土地カリフォルニアを目指すという物語です。苦難の末に辿り着いたカリフォルニアは夢と希望の地ではなく、彼らは低賃金労働に酷使され悲惨な生活を強いられます。タイトルは神の人間に対する怒りを示す聖書の言葉で、人間の愚かさ一般を描いているとも読めますが、当時のアメリカ社会批判あるいは資本主義批判という性格の強い小説です。ジョー・ヘンリーのこの歌は、2007年のサブプライムローン問題、2008年のリーマンブラザースの破綻などに始まる世界的金融危機を背景にして、大恐慌を思い起こせ、立ち止まって深く考えろと歌っているように、私には見えます。
 一人の男と複数の女が登場するので、女たちを泣かせてきた男の遍歴と後悔とも解釈できるかもしれません。


Scare Me To Death

2010年10月15日

Scare Me To Death : Joe Henry




I've seen the best and the worst you can be
私はあなたの最良の姿と最悪の姿を見てきた
And all while you're getting the better of me *1
そしてあなたはその間ずっと私を圧倒し続けた
You're fragile but wicked and fleeting as breath *2
あなたは、か弱く、邪悪で、息のように儚いが
But you move up behind me and scare me to death *3
私に背後から近づき、死ぬほど恐れさせる
You're fragile and wicked and fleeting as breath
あなたは、か弱く、邪悪で、息のように儚いが
But when you move close to me
私に近寄り
scare me to death
死ぬほど恐れさせる

At war between all good intentions and greed *4
善意と貪欲の闘いのはざまで
My love is the kind where want becomes need
私の愛は、欲望が必要に変わる場のようなもの
Where lust takes the toll of a quick stolen breath *5
渇望によって息の根を止められる場のようなもの
And you stir within me and scare me to death *6
あなたは私の心をかき乱し、死ぬほど恐れさせる
Where lust takes the toll of a quick stolen breath
渇望が息の根を止める場で
You stir within me
私をかき乱し
and scare me to death
死ぬほど恐れさせる

A dose now of either heart or of mind *7
感情の薬であろうと理性の薬であろうと
Can be lethal, it seems, if they're not combined
致死的であり得るだろう、二つが一体のものでないのなら
They show but contempt when considered as two *8
感情と理性は別物であるように見える時、それは侮っているのであり
And pretend that each is the other to you *9
あなたに対して、いずれもが他方を装っているのだ

Now, you spit in your hands and haul on the rope *10
あなたは手につばをつけ、ロープを手繰り寄せる
And you fill up my cup with the worst kind of hope
そして、私の杯を最悪の希望で満たす
You lift me with words I haven't found yet *11
見たこともない言葉で私を高揚させる
I fall like your shadow and you scare me to death
私はあなたの影のように倒れ伏し、あなたは私を死ぬほど恐れさせる
I fall like your shadow, you've stolen my breath
私はあなたの影のように倒れ伏す。あなたは私の息を盗んだのだ
You sleep here beside me and scare me to death
あなたは私の傍らで眠り、私を死ぬほど恐れさせる
You sleep here beside me
私のすぐ傍らで眠りながら
And you scare me to death
私を死ぬほど恐れさせる


備考
  1. get the better of :(人に)勝つ、出し抜く、負かす、(感情・暑さなどが)圧倒する
  2. fragile : こわれやすい、もろい、虚弱な、かよわい、かすかな、はかない、元気がない
    wicked : よこしまな、邪悪な、不正の、みだらな、悪意のある、意地悪な
    fleeting : いつしか過ぎていく、束の間の、無常の、はかない
  3. scare : びっくりさせる、こわがらせる、おびえさせる、おどす
    to death : 死ぬほど、耐え難いほど、極端に、この上なく
    do 人 to death :(人を)殺す
  4. intention : 意思、意向、意図、目的
  5. lust : 強い欲望、切望、渇望、色情、肉欲
    toll : 料金、遺憾な代価、犠牲、損害
    take its toll of : 被害・損失をもたらす、(人命などを)失わせる
    take sb's breath away : はっとさせる
  6. stir : かき回す、かき混ぜる、かき乱す、悩ます、火を掻き起こす、奮起させる、感動させる
  7. dose : 薬の一服、一回の服用量・投与量
    either A or B : A か B のどちらか
  8. contempt : 軽蔑、侮り、侮辱
    show contempt : 軽蔑する
    consider A as B : A を B として論ずる、考える、みなす
  9. pretend : 口実とする、偽って~だと言う、ふりをする、装う
  10. haul : 引っ張る、強く引く、たぐる
  11. lift up : 精神的に高揚させる


 2007年のアルバム Civilians に収録。
 相変わらず分かりにくい歌詞です。恋情に翻弄される男の心を描いたもののように見えますが、それにしては表現が堅苦しいようです。
 「アメリカという国に生きること」がアルバム全体に通低する主題のようなので、この歌でも暗喩として「あなた」にアメリカ国家という裏の意味を込めているようにも思えます。「善意と貪欲の闘い」という言葉がいちばん心に残りました。

God Only Knows

2010年06月10日

God Only Knows : Joe Henry




Darkness settles on the ground *1
暗闇が地におりる
leaves the day stumbling blind *2
日の光がつまづきよろめきながら去っていく
Coming to a quiet close *3
静かに終わりが近づいている
and maybe just in time *4
いい頃合かもしれない

We've almost lost the heart to know
私たちは失いつつある、理解する心を
how to keep our best in mind
知性を最良の状態に維持する方法を
We've almost lost the heart to know
私たちは失いつつある、理解する心を
how to keep our best in mind
知性を最良の状態に維持する方法を

Time has turned an angry face
時代は移り、怒りの表情を見せて
throws a dark eye back to see *5
暗い目で後ろを振り向く
But what will pass for mercy now *6
いったい何が慈悲とみなされるのだろう
We'll practice unforgivingly *7
私たちは、許さないということを実践しようとしている

As if might and will made right *8
まるで、力と意志が正義を作るかのように
or either one could make us free
あるいは、そのいずれかが私たちに自由をもたらすかのように
As if might and will made right
まるで、力と意志が正義を作るかのように
that either one could make us free
そのいずれかが私たちに自由をもたらすかのように

Lovers laugh and cross this way
恋人たちが笑いながら横切る
they're weaving out into the street *9
寄り添いゆれながら通りに消えていく
It seems we never were so young
私たちにはあんな若い頃がなかったように思える
or it was never quite so sweet
あんな甘いことはまったくなかったように

But the world is always beautiful
しかし、この世界はいつも美しい
when its seen in full retreat *10
世界が全軍退却しているような時でも
The worst of life looks beautiful
この最悪の人生さえ美しく見える
as it slips away in full retreat *11
この総退却から静かに去ろうとしているのだから

Well God only knows that we can do
神だけが知る。私たちができることは
no more or less than he'll allow
神の許す以上でもなければ以下でもない
Well God only knows that we mean well
神だけが知る。私たちがよいとみなすことは
and God knows that we just don't know how
そして神は知る。私たちがどうしていいか分からないということを

But I try to be your light in love
しかし、私はお前の灯でいよう。愛をこめて
and pray that is enough for now
そして祈ろう。今はこれで十分だと
Well I've tried to be your light in love
私はお前の灯であろうと努めてきた。愛によって
and I'll pray that is enough for now
そして、今はこれで十分だと感謝の祈りを続けよう


備考
  1. settle on : 鳥などがとまる、闇・霧がおりる、液体が澄む
  2. stumble : つまづく、よろめく、つまづかせる、よろめかせる
  3. close : [動] 目を閉じる、閉める、終える、完了する
        [名] 終結、終わり、終止
  4. in time : 間に合って、遅れずに、ちょうどよい時に、時節を待てば、いつかは、そのうちに
  5. throw one's eyes at : ~をちらっと見る
  6. pass for = pass as : ~で通る、~とみなされる
  7. practice : 常に行なう、実行する、実践する、練習する
    unforgiving : [形] 許さない、勘弁しない、容赦のない、執念深い
  8. as if : 動詞の過去形(過去完了形)を伴って現在(過去)の事実に反する仮定を表す
  9. weave : よろめく、左右にゆれる
  10. be in full retreat : 総退却する
  11. slip away : 暇乞いをせずに立ち去る、こっそり去る


 2007年のアルバム Civilians に収録。
 いろいろな解釈ができそうな深みのある歌詞なので意識して直訳にしました。2001年以後のアメリカ社会のあり方、個人の人生、両方を歌っているように思えます。
 先日読んだ本の中に、死を覚悟した人間はまわりの景色や人、生き物などすべてが鮮明に美しく見え、あらゆる物事を許す心境になるという文章がありました。人によってそれが死の数分前のこともあれば数ヶ月前のこともあり、あるいはそういう心境にならないまま死ぬ人もいる、そしてその境地を人生観の理想としたのが仏教の思想だという趣旨の文章でした。
 この歌を訳しながら、キリスト教にも似たような考え方があるのだろうかと想像しました。



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