Deep River

2013年02月08日

Deep River : Marian Anderson




Deep River
深い川
My home is over Jordan *1
故郷はヨルダン川の向こう
Deep River, Lord
深い川。主よ
I want to cross over into campground *2
渡って行きたい。皆が集まる場所へ

Deep River
深い川
My home is over Jordan
故郷はヨルダン川の向こう
Deep River, Lord
深い川。主よ
I want to cross over into campground
渡って行きたい。皆が集まる場所へ

Oh, don't you want to go to the gospel feast *3
福音の祝祭に行きたくないですか?
That promised land where all is peace *4
すべてが平安なあの約束の地に

Oh, deep River, Lord
深い川。ああ、主よ
I want to cross over into campground
私は渡って行きたいのです。皆が集まる場所へ


備考
  1. Jordan : ヨルダン川はヨハネがイエスに洗礼を授けた地でありキリスト教の聖地。また、ヨルダン川の向こう(西岸)には、国をなくした古代ユダヤ人が神から約束された地エルサレムがある。現代のヨルダン川西岸地区はアラブ人、ユダヤ人が混住し、紛争の火種となる地の一つ。
  2. campground : キャンプ場、信者の野外集会場
  3. Don't you want to ~ : ~したくないのですか?
    You don't want to ~ : 忠告。~すべきでない、してはいけない、しない方がよい
    feast : 饗宴、祝宴、祝祭、祭礼、ごちそう、喜ばせるもの
  4. peace : 平和、和合、親睦、親和、和解、仲直り、講和、安心、平安、平穏、無事、閑静


 黒人霊歌は宗教的な安寧を求める聖書の言葉の裏に、奴隷としての現世の苦境を嘆き解放を願う心情や現世での幸福を諦めた宗教的な諦観などが込められています。この歌の「皆が集まる場所」は、現実を諦めた天国的なものなのでしょうか。それとも、奴隷解放やアフリカへの帰郷を現実的に夢見るものなのでしょうか。いずれにせよ「深い」という言葉に、希望を実現する困難さと挫けそうな心情が伺えます。

I Want Jesus To Walk With Me

2011年02月17日

I Want Jesus To Walk With Me : Marian Anderson




I want Jesus to walk with me
私とともに歩いてほしい
I want Jesus to walk with me
私とともに歩いてほしい
All along my pilgrim journey
私の巡礼の旅のあいだ
Lord, I want Jesus to walk with me
主よ、私とともに歩いてほしいのです
In my trials, Lord, walk with me
厳しい試練のもと、主よ、私とともにお歩きください
In my trials, Lord, walk with me
厳しい試練のもと、主よ、私とともにお歩きください
When my heart is almost breaking,
私の心がこわれそうな時
Lord, I want Jesus to walk with me
主よ、私はイエスにともに歩いてほしいのです

When I'm in troubles, Lord walk with me
苦難の下にある時、主よ、ともにお歩きください
When I'm in troubles, Lord walk with me
苦難の下にある時、主よ、ともにお歩きください
When my head is bowed in sorrow,
悲しみで頭が垂れる時
Lord, I want Jesus to walk with me
主よ、私はイエスにともに歩いてほしいのです


 2009年のオバマ米大統領の就任式で、アレサ・フランクリンが My Country, 'Tis of Thee を歌いました。第二のアメリカ国歌といわれるこの歌は、アメリカ国民になじみのある歌であると同時に、アメリカの黒人にとってはより深い意味のある歌です。1939年、ワシントンの憲法記念館でコンサートを予定していたマリアン・アンダーソンは建物の所有者である団体「アメリカ革命の娘たち」に使用を拒否されました。黒人支援団体の抗議など紆余曲折の末に、リンカーン記念堂正面の階段の上でコンサートは行なわれました。集まった聴衆は7万5000人。この出来事は黒人人権活動の象徴とされ後に永く語り継がれることとなります。
 このリンカーン記念堂のコンサートで初めに歌われたのが、My Country, 'Tis of Thee です。歌詞の内容は愛国的・宗教的なものですが、この歌を黒人が歌う場合、自由を求める未来への意志など建前としてのアメリカの国是と黒人に対する差別的な扱いの矛盾があらわになる歌詞でもあります。アレサ・フランクリンの歌を多くのとくに年配の黒人たちが感慨を持って聞いたことでしょう。歌詞の一部は次のようなものです。

 My country, 'tis of thee,
 わが国、それは御身のもの
 Sweet land of liberty,
 優しい自由の国
 Of thee I sing;
 御身に包まれ私は歌う
 Land where my fathers died,
 わが父祖たちが死んだ地を
 Land of the pilgrims' pride,
 清教徒の誇りの地を
 From every mountainside
 すべての山々から
 Let freedom ring!
 自由の鐘を鳴らせ




 私はクラシックはほとんど聞きませんしオペラなど見たこともありませんから、マリアン・アンダーソンの歌手としての実力を正しく測ることはできません。しかし、黒人の地位向上に果たした彼女の功績は後世に伝えていくべきだろうと思います。

Sometimes I Feel Like A Motherless Child

2010年11月26日

Sometimes I Feel Like A Motherless Child : Marian Anderson



Sometimes I feel like a motherless child
時々自分が母のない子のように感じる
A long ways from home
家から遠く離れ
True believer
真正の信仰者は
A long ways from home
家から遠く離れ

Sometimes I feel like I'm almost gone
時々死にかけているように感じる
A long ways from home
家から遠く離れ
True believer
真正の信仰者は
A long ways from home
家から遠く離れ


Sometimes I Feel Like A Motherless Child : Bessie Griffin



Sometimes I feel like a motherless child
時には母のない子のように感じる
A long ways from home
家を遠く離れ

Sometimes I feel like I'm almost gone
時には今にも死にそうに感じる
Way up in the heavenly land
天国に上る途中のように
True believer
真実の信仰は
Way up in the heavenly land
天の国に導く


Sometimes I Feel Like A Motherless Child : Louis Armstrong



Sometimes I feel like a motherless child
時には母のない子のように思う

A long ways from home
家から遠く離れて
True believer
真の信仰者は
A long ways from home
家から遠く離れて

Yes, sometimes I feel like a motherless child
そうだ。時には母のない子のように思うよ
(Why?)
(なぜ?)
Why? 'Cause nothin' ever happens
なぜって? なんにも起きないからだよ
(Nothin'?)
(何も?)
Well nothin' good
何もいいことがないってことだよ
(So what's good?)
(いいことって?)
Well you know to have a ball, man
楽しいことに決まってるだろ
(You sick?)
(病気なの?)
No
いや
(Hungry?)
(空腹なの?)
No man
ちがう
I just had myself a whole mess of black eyed peas and rice
豆と米を一皿まるごとたいらげたばかりだ
(See what I mean?)
(言ってること理解してる?)
I did
分かってるよ
I am a long ways from home
俺は故郷から遠く離れ
But things could be worse, sure could
悪いことしか起きないんだ。きっとそうなんだ


 マリアン・アンダーソン(1897-1993)はメトロポリタン歌劇場で歌った初の黒人歌手として有名ですが、多くの黒人霊歌もレコーディングしています。ベシー・グリフィン(1922-1989)はニューオリンズ生まれのゴスペル歌手で、マヘリア・ジャクソンと比べられるほどの実力者でした。ルイ・アームストロング(1901-1971)は同じくニューオリンズ生まれのジャズトランペッター、歌手で、数多くのヒット曲を生みました。
 黒人霊歌はアフリカ音楽とキリスト教の賛美歌が融合したものと考えられ、奴隷とともにアメリカに渡り、後に教会音楽としてゴスペルと呼ばれる形式に発展していきます。奴隷たちは自分たちの言語や文化を奪われ欧米の言語と文化を強制させられてきました。支配者の言葉や宗教にすがるしかなかったアフリカ人たちの苦しみと悲しみは私の想像を超えています。奴隷たちの間で歌われていた黒人霊歌は暗い絶望的なものが多いのですが、19世紀半ばの奴隷解放とともに徐々に希望のこもる曲調の歌も増え、ゴスペルともなると明るく楽しい曲調が主流となります。
 この歌は、奴隷の夫婦間で生まれた子をよその家に売る常習に基づいていると言われ、また、祖国アフリカから引き離された悲しみを「母のない子」「故郷から離れ」という言葉で表しているとも言われます。ルイ・アームストロングの歌の後に交わされる掛け合いの語りは「どうせお前ら白人には理解できないだろう」という静かな怒りを表しているのだろうかと思いました。


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