Hurt : Johnny Cash

2017年03月12日




I hurt myself today to see if I still feel
今日も自分を傷つけた。まだ感覚があるのか確かめるために
I focus on the pain, the only thing that's real *1
痛みに心を集中させる。これだけが "実在" を感じられる
The needle tears a hole, the old familiar sting *2
針で穴を開ける。慣れ親しんだ古傷の上に
Try to kill it all away, but I remember everything
消し去ろうとしても、全て忘れられない

What have I become, my sweetest friend?
私はどうなってしまったんだろう? 親しき友よ
Everyone I know goes away in the end *3
私の知る者は皆、何時かはいなくなってしまう
And you could have it all, my empire of dirt *4
君はすべてを手にしていいんだ。この私の汚れた帝国を
I will let you down, I will make you hurt *5
私は君を失望させるだろう。君を傷つけるだろう

I wear this crown of thorns upon my liar's chair *6
私は茨の冠を戴き、偽りの玉座に座る
Full of broken thoughts I cannot repair
思いは粉々に砕け、修復することができない
Beneath the stains of time, the feelings disappear *7
時が染みのように浸透していく中で、感情が消え失せていく
You are someone else, I am still right here
君は誰か別の人になる。私はまだここにいるのに

What have I become, my sweetest friend?
私はどうなってしまったんだろう? 親しき友よ
Everyone I know goes away in the end
私の知る者は皆、何時かはいなくなってしまう
And you could have it all, my empire of dirt
君はすべてを手にしていいんだ。この私の汚れた帝国を
I will let you down, I will make you hurt
私は君を失望させるだろう。君を傷つけるだろう

If I could start again a million miles away *8
もしもやり直すことができるのならば、百万マイルの彼方で
I would keep myself, I would find a way *9
本来のまともな自分を保ち、行くべき道を見つけたい


備考
  1. focus : 焦点に集める、焦点を合わせる。(注意・関心等を)集中させる
  2. sting : 刺すこと。刺し傷、刺された痛み。(体・心の)痛み、苦痛、苦悩。傷つけるもの、辛辣、苦痛の種。
  3. in the end : 最後には、最終的には、ついに、結局
  4. dirt : 汚れ、汚物、不潔なもの。(服等に付いた)泥、ごみ、ほこり、垢。排泄物。土、土壌。無価値なもの、ひどいもの、卑しい人間。不道徳、下劣さ
    ※ "have it all" は普通は不特定のものを一般に表現する言い方だろうが、ここでは "it" が "my enpire" を指しているように思える。
  5. let down : 低くする、下げる、降ろす、落とす。期待を裏切る、失望させる、がっかりさせる、期待に背く、見捨てる、見殺しにする、辱める、威信を傷つける。
  6. crown of thorns : 茨の冠、苦難
  7. stain : しみ、汚れ、汚染。染料による着色、染色。汚点、傷
    ※ "Beneath the stains of time" は直訳すると「時間のしみ・汚れの下で」となる。意訳してあるが間違っている可能性もある。
  8. ※ "a million miles away" は実際の距離ではなく「遙か離れた所」を表すため「死後の世界」や「死後の再生」、「天国」等を連想させる。
  9. oneself : 自分自身。自分みずから。本来の(平素の・正常な・健全な)自分
    be oneself : 本来の自分でいる。気取らない、自然にふるまう。体の調子がよい

Hurt : Nine Inch Nails

 ジョニー・キャッシュ(1932-2003) はカントリー、ロック、ロカビリー、ブルース、ゴスペル等の歌手・作曲家で、俳優、作家としても活躍しました。
 この歌は、元は "Nine Inch Nails" というバンドの1994年の曲で、2002年にジョニー・キャッシュがカバー曲としてシングル盤で発表したものです。
 元歌は薬物依存やリストカット等の自傷行為、あるいは自殺を仄めかす歌、人生を後悔する歌など、様々な解釈がされているようです。私はジョニー・キャッシュについてカントリーの大御所というくらいの認識しかなく彼の歌も数曲しか聴いたことがありません。しかし、たまたま見つけた冒頭の動画に深く感銘を受けたため、名も財も成し人生への後悔など無さそうに見えるジョニー・キャッシュのような人物がこの歌を選び歌うという行為に込められた心情を想像しながら翻訳しました。


 <関連記事>
  ☆ Riders on the Storm : The Doors
  ☆ Raise Hell : Brandi Carlile

River : Joni Mitchell

2012年12月22日




It's coming on Christmas
クリスマスがやって来る
They're cutting down trees
木々を切り倒し
They're putting up reindeer
トナカイを狩りたてて
And singing songs of joy and peace
みんな歌うんだ。喜びと平和の歌を
Oh I wish I had a river
ああ凍りついた川があればいいのに
I could skate away on
遠くへ滑って行けるのに

But it don't snow here
でもここに雪はなく
It stays pretty green
緑は美しいままだ
I'm going to make a lot of money
たくさんお金を稼ごう
Then I'm going to quit this crazy scene
そしてこの狂った景色から立ち去ろう
I wish I had a river
川があればいいのに
I could skate away on
遠くへ滑って行けるのに

I wish I had a river so long I would teach my feet to fly
川があればいいのに。この足が飛ぶことを覚えるほど長い川が
Oh I wish I had a river
ああ川があればいいのに
I could skate away on
遠くへ滑って行けるのに

I made my baby cry
私は愛しい人を泣かせてしまった

He tried hard to help me
彼は懸命に私を助けようとした
You know, he put me at ease
彼は私に安らぎを与えてくれた
And he loved me so naughty, made me weak in the knees
彼は私をみだらに愛してくれた。膝が崩れ落ちるほどに
Oh I wish I had a river
ああ川があればいいのに
I could skate away on
遠くへ滑って行けるのに

I'm so hard to handle, I'm selfish and I'm sad
扱いにくい女。わがままで、泣き虫
Now I've gone and lost the best baby that I ever had
もう私は死んだようなもの。いちばん大切な人を失った
Oh I wish I had a river
ああ川があればいいのに
I could skate away on
遠くへ滑って行けるのに

I wish I had a river so long I would teach my feet to fly
川があればいいのに。この足が飛ぶことを覚えるほど長い川が
Oh I wish I had a river
ああ川があればいいのに
I could skate away on
遠くへ滑って行けるのに

I made my baby say goodbye
私は愛しい人にさよならを言わせてしまった

It's coming on Christmas
クリスマスがやって来る
They're cutting down trees
木々を切り倒して
They're putting up reindeer and singing songs of joy and peace
トナカイを狩りたてて、喜びと平和を歌うだなんて
I wish I had a river
凍った川があればいいのに
I could skate away on
そしたら遠くまで滑って行けるのに


 ジョニ・ミッチェルはカナダ出身の歌手で、1943年アルバータ州生まれ。これは1971年のアルバム Blue に収録された歌です。
 気候の暖かいカリフォルニアで失意に沈む彼女にとって、こんな悲しみを知らず幸せだった頃の自分を象徴させるのがカナダの凍った川なのでしょう。失恋は別として、クリスマスに浮かれる景色を見て逃げ出したくなる心情は私も分かります。"fly" という祈りのような声を聞くと、よのなかをうしとやさしとおもへどもとびたちかねつとりにしあらねば、という歌を思い出します。

 ☆ 同じカナダ出身のサラ・マクラクランのカバー ☆
 

Death To The Storm

2012年12月08日

Death to The Storm : Joe Henry




There's a song we used to know
かつては知られたこの歌
A kind of weary blues
くたびれたブルース
Some broken tune from long ago
昔からの調子はずれだが
Some of us still like to use
今でも使いたがる者もいる

It hangs up high in the rafters *1
天井から吊るされたまま
Like smoke it has no form
煙のように形をなさず
Keep it all hid like laughter
すべてを隠した笑いのように
And sing out death death to the storm
死を歌う。嵐へと向かう死を

Death to the storm
嵐へと向かう死を

We keep it all hid like laughter
俺たちはすべてを隠し、笑う
And sing out death death to the storm
そして死を歌う。嵐へと向かう死を

I've caught my rage in the making *2
俺は自らの怒りを捕まえて成功した
Alive here in my hand
生きたままこの手に
But it bent the rod to breaking
しかし、それは折れるまでに棹をたわませた
And still i'm a hungry hungry man
そして、今でも俺は飢えた者だ

The trouble is so underrated *3
困難は見くびられ過ぎる
I've been battered rusted whored *4
俺は滅多打ちにされ、錆付き、身を売った
Calling all the great ill fated *5
呪われた災厄ばかりを呼んだ
Who bring death death to the storm
死をもたらす者。嵐へと向かう死を

Death to the storm
嵐へと向かう死を

We call upon the great ill fated
俺たちは呪われた災厄を呼ぶ
Who bring death death to the storm
死をもたらす者。嵐へと向かう死を

A line of cars is rolling westbound *6
車線はうねりながら西へ向かう
A dark river just begun
黒く深い川は始まったばかりだ
The tramps are huddled in their best now *7
今が盛りだとばかりに重い足音が重なり響く
Like a funeral in the sun *8
真昼の葬列のように

A man waits on orange crates *9
男はオレンジの箱を待っている
His meager eyes go soft and warm *10
やせ細った目が優しく温かくなる
As women wade the deep parade *11
女たちは行列をかき分けて進む
Cheering death death to the storm *12
死を喝采している。嵐へと向かう死を

Death to the storm
嵐へと向かう死を

As women wade the deep parade
女たちは行列をかき分けて進む
Cheering death death to the storm
死を喝采している。嵐へと向かう死を


備考
  1. raffer : 屋根の垂木、梁(はり)
  2. catch : 捕まえる、間に合う、見つける
    the making : 成功・発展の原因・手段
  3. underrate : 安く見積もる、過小評価する、見くびる
  4. whore : 売春する、買春する、金や欲得の為に妥協する・信用を汚す
  5. ill : 難儀、面倒、不幸、災難、悪、危害、病気、不快
  6. rolling : なだらかに起伏している、うねうねとした、横揺れする
    westbound : 西行きの
  7. tramp : 放浪者、無宿人、重い足どり、重い足音、徒歩(旅行)
    huddle : ごちゃごちゃに積み上げる、ぎっしり集める、詰め込む、体を丸く縮こませる
  8. funeral : 葬式、葬儀、葬列
  9. crate : 枠箱、木枠、酒壜等のケース、棺おけ
  10. meager : 食事の質が劣る、量が不足している、貧弱な、乏しい、やせ細った
  11. wade : 水の中を歩く、雪・泥・草の中をやっと通る、苦労して進む、やっと切り抜ける
  12. cheer : 喝采する、声援する、歓呼する、励ます、元気付ける


 2009年のアルバム Blood From Stars より。
 分かりにくく、いろいろな解釈ができそうです。嵐、怒り、西に向かう車、葬列、オレンジなどの言葉を眺めていると、スタインベックの『怒りの葡萄』を思い出します。1939年に出版されたこの小説は1930年代大恐慌下のアメリカが舞台で、農業の機械化・資本主義化と苛烈な砂嵐に土地を追われた中部の農民たちが豊かな土地カリフォルニアを目指すという物語です。苦難の末に辿り着いたカリフォルニアは夢と希望の地ではなく、彼らは低賃金労働に酷使され悲惨な生活を強いられます。タイトルは神の人間に対する怒りを示す聖書の言葉で、人間の愚かさ一般を描いているとも読めますが、当時のアメリカ社会批判あるいは資本主義批判という性格の強い小説です。ジョー・ヘンリーのこの歌は、2007年のサブプライムローン問題、2008年のリーマンブラザースの破綻などに始まる世界的金融危機を背景にして、大恐慌を思い起こせ、立ち止まって深く考えろと歌っているように、私には見えます。
 一人の男と複数の女が登場するので、女たちを泣かせてきた男の遍歴と後悔とも解釈できるかもしれません。




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