Moonchild

2013年03月23日

Moonchild : King Crimson




Call her moonchild *1
彼女を 月の子と呼ぼう
Dancing in the shallows of a river *2
川の浅瀬で 踊る
Lonely moonchild
一人ぼっちの月の子
Dreaming in the shadow of a willow
柳の木陰で 夢を見る

Talking to the trees of the cobweb strange *3
蜘蛛の巣のように奇妙に入り組んだ木々に 話しかける
Sleeping on the steps of a fountain *4
噴水池の石段の上で 眠る
Waving silver wands to the night-birds song *5
夜鳴く鳥の歌に 銀の杖を振る
Waiting for the sun on the mountain
山に差す日の光を 待ち望む

She's a moonchild
彼女は 月の子
Gathering the flowers in a garden *6
庭園の花を 摘み集める
Lovely moonchild
愛らしい月の子
Drifting in the echoes of the hours *7
時のこだまの中で 漂う

Sailing on the wind in a milk white gown
乳色の夜着をまとい 風に舞う
Dropping circle stones on a sun dial
日時計の周りに 石を落とす
Playing hide and seek with the ghosts of dawn *8
明け方の幽霊と かくれんぼをして遊ぶ
Waiting for a smile from a sun child *9
日の子の微笑を 待ち望む


備考
  1. イギリスの魔術師アレイスター・クロウリーが Moonchild という小説(1929年出版)を書いている。錬金術師が作り出す人工生命体であるホムンクルスをめぐる物語だが、クロウリーは精液を培養して小型の人間を作り出すという従来のホムンクルスの概念に異議を唱え、赤子に高等霊を導き入れて人間を超える存在である Moonchild を創造するとしている。ただし、未読のためこの歌詞と関係あるかは判断不能。
    ※ moon, month, measure(計る), menstruation(月経) などは印欧語族に共通する語根 <me =計る> を含む、英語の本来語である。つまり、moon という言葉には時を計る指標という意味合いがある。一方、lunar(月の), lunatic(狂気)等はラテン語 luna(月)からの借入語であり語源が異なる。
  2. shallows : 浅瀬、洲
  3. cob : トウモロコシの穂軸(実の中心の固い部分)、中心部、中核、核心
    cobweb : クモの巣、はかないもの、弱々しいもの、入り組んだもの、陰謀、わな、もやもやしたもの、混乱、無秩序 ※この cob は古英語のクモ ātorcoppe(ātor毒+coppe頭)が語源で、トウモロコシの cob とは別。
    strange : 奇妙な、変な、不思議な、体調が悪い、未知の、馴染みのない、慣れていない、打ち解けない、内気な、はにかみ屋の、よそから来た
  4. fountain : 泉、水源、貯水池、噴水、噴水池
  5. wand : 柳のようなしなやかな細い枝、魔法使いの杖、官杖、職杖、指揮棒
    wave one's wand : 魔法の杖を振る、魔法のように望みをかなえる、上手い方法を見つける
    with a wave of one's wand : 魔法の杖の一振りで、何かちょっと上手く考えれば
  6. gather : 寄せ集める、拾い集める、蓄える、観察して知る・推測する、農作物を収穫する・採る
    gather flowers : 花を摘む
  7. echo : 反響(音)、こだま、山びこ、繰り返し、模倣、まね、追随、反映、投影、意見・心情への共鳴・感応、世論等の反響・反応
  8. hide-and-seek : かくれんぼ
  9. ※ sun の語源は印欧祖語で「輝く」を意味する saewel
    ※日本語の「つき」と「ひ」の語源は調べてもよくわからなかったが、月は「次(太陽の次に明るい)、尽き(新月になると光が無くなる)、憑き(運がいいという意味のツキも含む)」など、日は「火、緋」などと関係があるらしい。「憑き」は luna と、「火」は sun と共通する観念を持っている。


 1969年のアルバム In The Court Of The Crimson King より。
 歌詞の内容はよく理解できません。おそらく太陽の下では生きられないであろう月の子どもが、なぜ夜明けを待ち求め、なぜ太陽の子どもに会いたいのでしょうか。この観点からは、実現不可能なあるいは死と引き換えでなければ得られない他者との関係性、つまり絶対的な孤独を表す歌詞のようにも思えます。また、2分少々で終わる歌の後に、ある種退屈な即興演奏が10分にも渡って延々と続く部分は、Moonchild が夜明けを待って眠ったり遊んだりしながら孤独な夜を過ごす長さを表しているのかと想像します。

21St Century Schizoid Man

2011年07月18日

21St Century Schizoid Man : King Crimson




Cat's foot iron claw
猫の足 鉄の爪
Neuro-surgeons scream for more *1
神経外科医たちが金切り声で求め続ける
At paranoia's poison door. *2
妄想病者の毒の扉の前で
Twenty first century schizoid man. *2
21世紀の分裂病者

Blood rack barbed wire *3
血の拷問台 有刺鉄線
Polititians' funeral pyre *4
政治家たちの火葬の薪
Innocents raped with napalm fire *5
ナパームの火に犯される無垢な者たち
Twenty first century schizoid man.
21世紀の分裂病者

Death seed blind man's greed
死の種 盲人の貪欲
Poets' starving children bleed *6
詩人たちの飢えた子どもが血を流す
Nothing he's got he really needs
本当に必要なものを何も得ない
Twenty first century schizoid man.
21世紀の分裂病者は


備考
  1. ※「神経外科医」は1940~50年代に流行したロボトミー手術(精神異常者に脳外科手術を施し無感情化させる)を連想させる。
  2. paranoia, schizoid : 英語の辞書では [パラノイア=偏執症・被害妄想、スキゾイド=統合失調症] とある。一般的用語としてはいずれも精神病的症状または精神病的傾向・性格を表す言葉と考えられる。paranoia の特徴は他者が自分に危害を加える、脅かす、騙すといった偏執的な妄想に囚われることであり、schizoid の特徴は他者・外界への関心の喪失、感情の平板化、対人関係の拒絶・逃避など。ここでは厳密な精神医学用語として両者を区別しているわけではなく、ともに狂気の一種として使われているように思える。
  3. rack : 台、架台、ラック、拷問台、拷問
    barbed wire : 有刺鉄線
  4. funeral : 葬式の、葬儀の、葬列の
    pyre : 薪などの山、(火葬用の)積み薪
  5. innocent : 無罪の(人)、純潔な(人)、潔白な(人)、無邪気な(人)
  6. starving : 餓死寸前の、飢えている

 1969年のアルバム In the Court of the Crimson King に収録。
 柔らかな態度に凶器を潜ませ患者の心身を破壊する治療者たち。あからさまな態度で人を殺し続ける政治家たち。強欲に駆られ差別と格差を推し進める経済的支配者たち。支配される者たちも妄想症であり、無邪気でおめでたく、無力な詩人でしかない。何が正しく何が間違っているのか誰も明らめることができず、正気と狂気の区別もつかず、狂者が狂者を治療する世界は混沌化を続ける。40年以上経った今の方がより実感できる歌詞に慄然とします。
 今、政治の仕組みは経済の力に押しつぶされ、機能しなくなりつつあるように見えます。この社会の変化を読み解く術を欲しいと切実に思います。



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