Jammu : KSHMR

2017年10月08日



 <Sometimes the most courageous act is the one you don't do.>
 <時によっては、最も勇気ある行為は何もしないことである。>


 2015年に発表されたシングル曲です。歌詞を探してみたのですが残念ながら見つかりませんでした。何語かすら分かりません。ただ、この動画を紹介したかったので、動画の最後に掲げられた言葉を翻訳して、記事として掲載することにしました。
 アメリカ人のカシミアは本名を Niles Hollowell-Dhar といい、父親がインドからの移住者です。Kshmr というステージネームはインド北部の "Jammu and Kashumir ジャンムー・カシミール州" からとったものです。16世紀のムガル帝国第4代皇帝ジャハンギールがカシミール渓谷を「もし地上の天国というものがあるとしたら、それはここだ」と言ったと伝えられるほど景観の美しい地域だそうです。

 ジャンムー・カシミールの夏季州都シュリナガルのダル湖(by confused_me)
 シュリナガルのダル湖

 アザド・カシミールのニーラム渓谷(by mhaqnawaz)
 アザド・カシミールのニーラム渓谷


 カシミール地方は、国際政治的な理由から現在下の地図にあるように大きく4つに分けられています。南部のオレンジ色の部分がインドの領有するジャンムー・カシミール州、その北西に隣接する緑色の部分がパキスタンが実効支配しているアザド・カシミール、東部の縞々の部分が中国が実効支配しているアクサイチン(インド側の呼称はラダック地方の一部)、残りの北部の茶色い部分は同じくインドが実効支配しているシャクスガン渓谷です。
 そして、そのいずれも領有権をめぐって三つ巴の争いが続いている地域です。印パ戦争、中印戦争を経てもなお解決を見ないカシミール領有問題は三国が共に核兵器保有国ということもあり、その危機の高まりは世界情勢に波及する恐れがあります。一方で核兵器を持つゆえに全面戦争に陥らず、部分的な衝突や過激派を通じたテロリズムが長く続くという悲劇を招いています。

 Kashmir.jpg

 ジャンムー・カシミール州は住民のほとんどがイスラム教徒であり公用語はウルドゥ語、インドはヒンドゥ教徒が多く公用語がヒンディ語です。そのためインドからの分離独立を望む人々が多いようです。そして、それを暴力的に強行しようとするイスラム過激派組織もこの地域の内外に複数存在し、これまでテロにより多数の死者が出ています。
 インド政府の治安当局は警察や中央警察予備隊という準軍事組織、陸軍の治安部隊などを使って国内の治安維持を図っているのですが、この活動は軍事特別法、公共安全法という二つの法律に基づいて行なわれるため、法的な手続きを経ずに発砲や逮捕、拘束ができるようになっています。この法律はテロリストを取り締まるために強力な武器ではあるのですが、警察や軍隊の過剰な取り締まりや暴力を生んでいると住民からは強く批判されており、治安当局のこの過剰な暴力が過激派に入る若者を増やすという悪循環を指摘する声もあります。
 冒頭の動画は、何らかの事情で母親を殺された孤独なムスリムの少年が過激派組織に救われ、兵士として育てられる様子を描いています。大人になった彼はヒンドゥ教徒の乗るバスに乗り込み自爆テロを図ろうとしますが、後から乗ってきた母子を見て子供の頃の自分と母親を思い出すという展開になっています。
 最後に「おばあちゃんに 1940-2012」という言葉と写真が掲げられていますが、これはおそらくカシミアの祖母を指しているのでしょう。

 下の動画は毎年ベルギーで開催されている Tomorrowland という世界最大規模のEDMイベントの模様です。








Secrets : Tiësto & KSHMR feat. Vassy

2017年10月01日




[Chorus]
Oh, won't you stay for a while?
少しだけここにいてくれる?
I'll take you on a ride if you can keep a secret
秘密にしてくれたらあなたを乗せてあげる
Oh, won't you stay for a while?
ねえ。少しでいいから、ここにいてくれる?
Show me your darkness, baby, show me your deepness
あなたの闇を見せて。深く隠されたものを見せて
Oh, won't you stay for a while?
ねえ。少しでいいから、ここにいてくれる?
I'll take you on a ride if you can keep a secret
秘密にしてくれたらあなたを乗せてあげる
Oh, won't you stay for a while?
少しだけここにいてくれる?
Show me your darkness, baby, show me your deepness
あなたの闇を見せて。深く隠されたものを見せて

[Half-Chorus]
Oh, won't you stay for a while?
少しだけここにいてくれる?
I'll take you on a ride if you can keep a secret
秘密にしてくれたらあなたを乗せてあげる

[Bridge]
Stay a while, stay a while
ここにいて。少しの間でいいから
And I will make it worth your while, worth your while *1
あなたの時間を無駄にはしないよ。ちゃんと価値あるものにしてあげるから
Stay a while, stay a while
ここにいて。少しの間でいいから
And I'mma go the extra mile, extra mile *2
特別サービスするよ。精一杯頑張るよ
Boy, if you wait until the lights go down
ねえ。もし灯りが落ちるまで待ってくれたら
I got some tricks that help you scream it out *3
あなたが悲鳴を上げるほどの素敵なことをしてあげるわ
So stay a while, stay a while
だから、少しでいいから、ここにいて
And I'mma make it worth your while, worth your while
きっとあなたの時間は無駄にしないから
(Oh, won't you stay for a while?)
(少しだけでいいのよ)

(Oh, won't you stay for a while, for a while?)
(Oh, won't you stay for a while?)
(Oh, won't you stay for a while, for a while?)

[Half-Chorus]
Oh, won't you stay for a while?
I'll take you on a ride if you can keep a secret


備考
  1. while : 少しの時間。仕事に要する時間・労力。
    worth (one's) while : 時間を費やすだけの価値がある、~するのは無駄ではない。採算が取れる
    I'll make it worth your while. : 時間を費やすだけの価値を作ってやる。→それなりの報酬はするぞ。お礼はするから。礼ははずむよ。お前の時間を無駄にはしないよ。
  2. I'mma = I am going to
    extra : 余分の、割り増しの、特別の。規格外の、特上の、格別の
    go the extra mile : 要求された以上のことをする、一層の努力をする、もう一頑張りする、全力を尽くす
  3. trick : いたずら、悪ふざけ。ごまかし、たくらみ。人を楽しませる芸・技。手品、奇術。錯覚・幻覚。


 ティエストは1969年生まれのオランダのDJ、カシミアは1988年生まれのアメリカのプロデューサー、バッシーは1983年生まれのオーストラリアの歌手だそうです。この歌は、ティエストの2015年のアルバム "Club Life: Volume Four New York City" に収録されています。

Running Up That Hill (A Deal with God)

2016年03月28日

Running Up That Hill (A Deal with God) : Kate Bush




It doesn't hurt me
痛くはないのよ
Do you wanna feel how it feels?
あなたもこれを感じてみたくない?
Do you wanna know, know that it doesn't hurt me?
知りたくない? 私のこの「痛くはない」感じを
Do you wanna hear about the deal that I'm making? *1
聞きたくない? 私がしようとしている「取引」について
You
あなたの事なのよ
It's you and me
あなたと私の事なのよ

And if I only could *2
もしできる事ならば
I'd make a deal with God
私は神とだって取引をする
And I'd get him to swap our places *3
彼と私を入れ替えて欲しい
Be running up that road
そうしたら、あの道を駆け上れるだろう
Be running up that hill
あの丘を駆け上れるだろう
Be running up that building
あの建物を駆け上れるだろう
See if I only could, oh *4
分かってる。もしできる事ならばの話よ

You don't wanna hurt me
あなたは私を傷つけたいわけじゃない
But see how deep the bullet lies *5
でも、見て。これほど深く突き通った弾丸を
Unaware I'm tearing you asunder *6
私も気づかずにあなたを引き裂いている
Oh, there is thunder in our hearts
私たちの胸の内には雷のような怒りがある
Is there so much hate for the ones we love?
私たち、そんなに大きな憎しみがあるの? 愛する相手に対して
Well tell me, we both matter, don't we?
私たち、二人とも大事でしょう? そうでしょう?
You
あなたの事なのよ
It's you and me
あなたと私の事なのよ
It's you and me won't be unhappy
不幸になろうとしているのは、あなたと私なのよ

And if I only could
もしできる事ならば
I'd make a deal with God
私は神とだって取引をする
And I'd get him to swap our places
彼と私の立場を入れ替えてもらう
Be running up that road
そうしたら、あの道を駆け上れるだろう
Be running up that hill
あの丘を駆け上れるだろう
Be running up that building
あの建物を駆け上れるだろう
Say, if I only could, oh *7
そうよ。もし、できる事だったらという仮の話よ

You
あなたの事
It's you and me
あなたと私の事
It's you and me won't be unhappy
あなたと私の事なの。不幸になろうとしているのは

Oh c'mon, baby, c'mon darling
だから、お願い
Let me steal this moment from you now
少しだけあなたの時間をちょうだい
C'mon, angel, c'mon, c'mon, darling
ねえ、お願いよ
Let's exchange the experience, oh
お互いの経験を交換しましょう

※ And if I only could
もし、できる事ならば
I'd make a deal with God
神とだって取引する
And I'd get him to swap our places
彼と立場を入れ換えてもらう
I'd be running up that road
そうしたら、私はあの道を駆け上れるだろう
Be running up that hill
あの丘を駆け上れるだろう
With no problems ※
何の問題もなく

[※~※]×2

So if I only could
もし、できる事ならば
Be running up that hill
あの丘を駆け上れるだろう
With no problems
何の問題もなく

If I only could, I'd be running up that hill
もしできる事ならば、私はあの丘を駆け上るのに、、、


備考
  1. deal : 取引、契約、協定、取り決め。密約、不正取引。取り扱い、待遇
  2. if only : ただ~でさえあればいいのだが
  3. swap : 交換する、取り換える
    place : 場所、所。空間。本来の場所、置場、居場所、持ち場。自分の家、住居、部屋。立場、位置、境遇。役目、役割、本分。
  4. ※ "see" は間投詞的に使われているのだろうが、正確なニュアンスは私には分からないので、ここは想像で訳してある。
  5. lie : 横たわる、埋葬されている、置かれている、ある、存在する、広がっている、伸びている
  6. asunder : ばらばらに、離れ離れに、隔たって、離れて
  7. ※ *4 と同様 "say" も間投詞だろうが、正確な意味は分からない。ただ "say" には「仮に~であれば」「たとえば」というニュアンスがあるそうなので、ここはそれに基づいて訳してあるが、間違っているかもしれない。


   


 1985年のアルバム "Hounds of Love" より。直上の動画は Within Temptation によるカバーで、私はこちらの方が格好良くて好きだったのですが、歌詞を訳し終えた今は、オリジナルの方が歌詞に込められた心情がよく表れているような気がします。"if I only could" や "I would make", "I would be" などの仮定法を使った言い回しは、現実にはできない事という諦めの感情が込められているのでしょう。しかし、それでも諦めきれない感情もあり、その複雑さがこの歌全体に悲しみと勇壮な決意の相反する雰囲気の両方を与えており、ケイト・ブッシュの歌はそれを上手く表現していると思います。
 この歌の題名は元々は "A Deal with God" だったのですが、レコード会社がキリスト教圏での否定的な反応を憂慮して曲名の変更を求めケイト・ブッシュがそれに応じて "Running Up That Hil" となったそうです。ただし、アルバム内の曲名リストではカッコ付きで元の曲名が付加されています。この歌についてケイト・ブッシュは、男と女は本当には分かり合えないものだから、もし、お互いの役割を交換することができるならお互いをもっと理解することができるだろうと思ったという趣旨を語っています。そして、その手段として「悪魔と取引をする」という言葉を思いつき、それならば悪魔ではなくいっそ「神」との取引の方がより強力な手段になると思い、"a deal with God" という歌詞を書いたそうです。




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