Telling Stories

2015年06月08日

Telling Stories : Tracy Chapman




There is fiction in the space between the lines on your page of memories
挟まれた場所には作り話がある。あなたの記憶のページの行と行の間には
Write it down but it doesn't mean you're not just telling stories *1
あなたが書くものではあるけれど、でも、あなたはただ作り話をしてるだけじゃない

There is fiction in the space between you and reality
作り話がある。あなたと現実の間に挟まれた場所には
You will do and say anything to make your everyday life seem less mundane *2
ありきたりな日常から平凡を少しでもなくすために、あなたは何でもしようとする
There is fiction in the space between you and me
作り話がある。あなたと私の間に挟まれた場所には

There's a science fiction in the space between you and me
科学的な作り話がある。あなたと私の間に挟まれた場所には
A fabrication of a grand scheme where I am the scary monster *3
大げさな仕組みの作り事の世界で、私は恐ろしい怪物になり
I eat the city and as I leave the scene, in my spaceship I am laughing
町を食べ尽くす。場面が変わると、宇宙船の中で私は笑っている
In your remembrance of your bad dream, there's no one but you standing *4
悪い夢の記憶の中では、立ち尽くすあなたの他には誰もいない

Leave the pity and the blame for the ones who do not speak *5
哀れみや非難は残しておきなさい。物言わぬ人たちのために
You write the words to get respect and compassion and for posterity *6
あなたは言葉を書く。尊敬と同情を得るために。そして後世の人たちのために
You write the words and make believe there is truth in the space between *7
あなたは言葉を書く。私たちに信じさせようとする。挟まれた場所には真実があると

There is fiction in the space between you and everybody
作り話がある。誰であろうと、あなたと誰かとの間に挟まれた場所には
Give us all what we need, give us one more sad sordid story *8
私たちに必要なものをちょうだい。もっと悲しく薄汚い物語をちょうだい
But in the fiction of the space between sometimes a lie is the best thing
でも、挟まれた場所の作り話の中では、時には嘘が最良のものであるのよ
Sometimes a lie is the best thing
時には、嘘が最良のものであるのよ


備考
  1. tell stories : 話をでっち上げる、作り話をする、嘘をつく
  2. mundane : 現世の、世俗の、平凡な、ありきたりの
  3. fabrication : 偽造物、偽造文書、作り事、嘘。製作、製造、組み立て、構成
  4. remembrance : 心に刻まれた印象・記憶、思い出、追想、回想
  5. leave A for B : AをBに残しておく、AをBにとっておく
  6. posterity : 後世の人々、子孫
  7. make believe : ふりをする、見せかける
  8. sordid : 下劣な、浅ましい、卑しむべき。汚い、むさ苦しい、薄汚い。くすんだ色の


 2000年のアルバム "Telling Stories" より。
 私の訳文が堅苦しいために分かりにくいかもしれませんが、字面だけを追うと、この歌詞は、作家である「あなた」に対して読者の一人である「私」が語りかけている体裁がとられているように見えます。「あなた」は fiction(小説・虚構) において truth(真実)を "make believe(見せかけよう)" とするけれど、私が欲しいものは、薄汚い物語の中の「嘘」であって、見せかけの「真実」ではない…曖昧ですがこんな感じでしょうか。英語を誤読して全体の趣旨も理解し損ねているかもしれませんが…。
 また、小説家と読者を隠喩と受け取ればもっと一般的な人間関係における言葉と真実と嘘について語っている歌だととれるのかもしれません。いろいろと想像を膨らますことができる深みのある歌詞だと思います。このブログで彼女の歌を翻訳するのはこれで5曲目ですが、その中ではこの歌詞がいちばん好きです。

All That You Have Is Your Soul

2015年01月16日

All That You Have Is Your Soul : Tracy Chapman




Oh my mama told me
ママが教えてくれたこと
'Cause she say she learned the hard way *1
彼女はそれを学ぶのに苦い経験をたくさんした
Say she wanna spare the children *2
子供たちに同じことを味わわせたくない
She say don't give or sell your soul away *3
ママは言う。魂を捨て値で売るようなことをしては駄目よ
'Cause all that you have is your soul *4
あなたが最後まで持つものは魂だけなのだから

※ So don't be tempted by the shiny apple *5
だから、つややかな林檎に誘惑されては駄目
Don't you eat of a bitter fruit
苦い果物を食べては駄目
Hunger only for a taste of justice *6
飢えた時にはただ正義の味を求めなさい
Hunger only for a world of truth
嘘偽りの無い世界だけを求めなさい
'Cause all that you have is your soul ※
あなたが最後まで持つものは魂だけなのだから

I was a pretty young girl once
まだ若く可愛い娘だった頃
I had dreams I had high hopes
私には夢があった。高望みをしていた
I married a man he stole my heart away *7
私はある男に心奪われ、結婚した
He gave his love but what a high price I paid
彼は愛を与えてくれたけれど、私が払った代償も遥かに大きかった
All that you have is your sou
あなたが最後まで持つものは魂だけなのよ

※~※

Why was I such a young fool
なぜ私はあんなにも未熟で愚かだったのだろう
Thought I'd make history *8
自分が歴史を作るんだと思っていた
Making babies was the best I could do
でも、赤ん坊を作るのが私ができた精一杯のこと
Thought I'd made something that could be mine forever
永遠に自分のものになる何かを作るんだと思っていた
Found out the hard way one can't possess another
でも、分かったのは、あともう一つを手に入れるのがどんなに大変かということ
And all that you have is your soul
あなたが最後まで持つものは魂だけなのよ

※~※

I thought, thought that I could find a way
私は思っていた。思っていたの。自分の道を見つけられると
To beat the system
体制を打ち破れると
To make a deal and have no debts to pay *9
債務を負うことなく上手く取引できると
I'd take it all, I'd take it all, I'd run away *10
全部を手に入れようとした。手に入れようとした。でも、結局私は逃げ出した
Me for myself first class and first rate
自分では一流階級、最上級だと思っていた
But all that you have is your soul
でも、あなたが最後まで持つものは魂だけなのよ

※~※

Here I am, I'm waiting for a better day
今ここで私はより良き日を待っている
A second chance
二度目のチャンスを
A little luck to come my way *11
降りかかる小さな幸運を
A hope to dream, a hope that I can sleep again
夢を見る希望を。また眠れるだけの希望を
And wake in the world with a clear conscience and clean hands *12
そして、澄み切った良心と汚れていない手で作られた世界で目覚める希望を
'Cause all that you have is your soul
なぜなら、あなたが最後まで持つものは魂だけなのだから

※~※

Oh my mama told me
ママが教えてくれたこと
'Cause she say she learned the hard way
彼女はそれを学ぶのに苦い経験をたくさんした
Say she wanna spare the children
子供たちに同じことを味わわせたくない
She say don't give or sell your soul away
ママは言う。魂を捨て値で売るようなことをしては駄目よ
'Cause all that you have is your soul
あなたが最後まで持つものは魂だけなのだから

All that you have … is your soul
あなたが最後まで持つもの…それは、あなたの魂


備考
  1. the hard way : (副詞的に)難しいやり方で、苦労して、こつこつと、苦い経験を通して
  2. spare : 無しで済ます、とっておく、苦労などをかけさせない、不快な経験を味わせない、使い惜しみする、倹約する、容赦する、危害を加えないでおく
  3. give away : 贈り物として与える、授与する、配る、捨て値で売る、花嫁を新郎に渡す
  4. ※直訳では「あなたが持つものは魂だけなのだから」となる。
     ちなみに、http://dictionary.cambridge.org/ では、soul も spirit も「人の、身体以外の部分で、ある人々が死後も存在し続けると信じているもの」と記されている。http://www.merriam-webster.com/ では soul「人の spiritual な部分で、身体に命を与えるものと信じられており、また、多くの宗教で永遠に生きると信じられている」、spirit「身体に命やエネルギー、能力を与えると信じられている、人間に内在する力」と記されている。他の辞書でも soul を spirit の一部と説明されているものがあったので、これは想像だが、soul は人間の精神の根幹あるいは永続する生命の根元などのイメージが持たれているのではないだろうか。
  5. ※リンゴはエデンの園の禁断の果実を想起させるが、次行に「苦い」とあることから白雪姫の毒入りリンゴも想像でき、そこから、見かけの優しさや親切にだまされるなという意味合いが感じ取れる。
  6. hunger : [動詞] 空腹を感じる、飢える、切望する、渇望する
    taste : 試食、少量の食べ物、一口、一飲み、味覚、味、風味、好み、嗜好
    have a taste of wine : ワインを少し味わってみる
  7. steal away : こっそり盗む、こっそり奪う
  8. make history : 歴史に残るようなことをする
  9. deal : 取引、契約、協定、取り決め
    debt : 借金、負債、恩義、負い目
  10. ※これは想像だが、ここは "I would take …" と "I had run …" だろうと思った。
  11. come one's way : 人に事が起きる、事が人にとってうまく行く
  12. conscience : 良心、善悪の判断力、道徳心、分別


 1989年のアルバム Crossroads より。1964年生まれのトレイシー・チャップマンが25歳頃の作品です。

Talkin' Bout A Revolution

2015年01月05日

Talkin' Bout A Revolution : Tracy Chapman




Don't you know, they're talkin' bout a revolution
知らないの? みんなが革命の話をしてるよ
It sounds like a whisper *1
聞こえるよ。ささやくような声が

While they're standing in the welfare lines *2
生活保護の支給を待つ列に並びながら
Crying at the doorsteps of those armies of salvation *3
救世軍の戸口で泣きながら
Wasting time in the unemployment lines *4
失業手当を待つ列で時間を無駄にしながら
Sitting around waiting for a promotion *5
昇進を待って無為にぼんやりと時を過ごしながら

Don't you know, they're talkin' bout a revolution
知らないの? みんなが革命の話をしてるよ
It sounds like a whisper
聞こえるよ。ささやくような声が
Poor people gonna rise up and get their share
貧しい人たちが立ち上がろうとしてる。自分の分け前を得ようとしてる
Poor people gonna rise up and take what's theirs
貧しい人たちが立ち上がろうとしてる。自分のものを取り戻そうとしてる

Don't you know, you better run, run, run, run, run *6
分からないの? 逃げ出した方がいいよ
Oh, I said you better run, run, run, run, run, run
ねえ。早く逃げなよ

'Cause finally the tables are starting to turn, talkin' bout a revolution *7
だって、ついに形勢が逆転し始めてるんだよ。みんな革命の話をしてるんだから

While they're standing in the welfare lines
生活保護の支給を待つ列に並びながら
Crying at the doorsteps of those armies of salvation
救世軍の戸口で泣きながら
Wasting time in the unemployment lines
失業手当を待つ列で時間を無駄にしながら
Sitting around waiting for a promotion
昇進を待って無為にぼんやりと時を過ごしながら

Don't you know, theyre talkin' bout a revolution
知らないの? みんなが革命の話をしてるよ
It sounds like a whisper
ささやくような声だけど

And finally the tables are starting to turn, talkin' bout a revolution
とうとう形勢が逆転し始めたんだ。みんな革命の話をしてるんだから
Yes, finally the tables are starting to turn, talkin' bout a revolution, oh no
そう。ついに立場がひっくり返り始めたんだ。革命の話をしてるんだから……でも…


備考
  1. whisper : ささやく、耳打ちする、ひそひそ(こそこそ)話す、木々・水・風がささやくような音を立てる
  2. welfare : 幸福、繁栄、福利、生活保護
  3. salvation : (神学で)罪と罰からの救い、損害・危険・破壊からの救済・救出・保護
    The Salvation Army : 1865年に英ロンドンで設立されたプロテスタントの宗派団体。世界126カ国で伝道、福祉、教育、医療などの事業を行なっている。日本では宗教法人救世軍、社会福祉法人救世軍社会事業団として活動している。
  4. unemployment : 失業、失業者数、失業手当
  5. sit around : 何もしないでぼんやりと座って過ごす、目的なくのらくら過ごす、無駄に怠けて過ごす
    promotion : 昇格、昇進、助長、助成、促進、増進、販売促進、販促の商品、宣伝、宣伝用パンフ
  6. ※この run が「逃げる」なのか普通に「走る、急ぐ」なのかは分からなかった。訳文では you を「革命で追い落とされる富裕層」と解しているが、「走る」であればこの一文は you を自分と同じ貧困層とし「君も早く走り出した方がいい→革命に参加せよ」という意味になるのだろうと思う。
  7. turn the tables : 形勢・局面を逆転させる、立場を逆にする


 1988年のデビューアルバム "Tracy Chapman" より。
 現実問題としてアメリカでは暴動は起きても革命は起き得ないだろうと思います。システムを突き崩せるだけの思想が無いからです。この歌を作ったトレイシー・チャップマンも当時同じように思っていたのではないかと感じます。身の回りの貧困に心を痛めながらも、努力の方向を見出せず無為に過ごす人間たちに対する憤り、あるいは生きていくために無為に過ごさざるを得ない自分たちの境遇に対する憤りが伝わってくるような歌詞だと思います。
 この歌詞の主題は「革命の話をするのではなく現実的な行動を起こせ」ということだと思いますが、「ついにテーブルがひっくり返り始めている」という歌詞からは、現実には無理だろうという諦念、それでもいつかはそうなって欲しいという諦め切れない願望・希望の両方を感じました。



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