Siuil A Run

2012年10月03日

Siuil A Run : KOKIA




I wish I was on yonder hill *1
もっと遠くの丘まで行けたらいいのに
'Tis there I'd sit and cry my fill *2
そしたら思う存分泣けるのに
Until every tear would turn a mill *3
涙で水車が回るほどに

I'll sell my rock, I'll sell my reel *4
糸まき棒を売るわ。糸まきも売る
I'll sell my only spinning wheel *4
一つしかない糸ぐるまも売る
To buy my love a sword of steel
愛しいあなたに鋼の剣を買ってあげる

   Spinning Wheel
       Image given by http://etc.usf.edu/clipart/

Siúil, siúil, siúil a rún(Walk, walk, walk, my love) *5
行って。もう行って。愛しい人よ
Siúil go socair agus siúil go ciúin(Walk calmly and walk quietly)
そっと静かに出て行って
Siúil go doras agus éalaigh liom(Walk to the door and flee with me) *6
戸口まで行ったなら、私を連れて逃げて
Is go dté tú mo mhúirnín slán(And may you go safely, my dear)
愛しいあなたが安らかでありますように

I'll dye my petticoats, I'll dye them red *7
ペティコートを染めるわ。赤く染める
And round the world I'll beg my bread
世界じゅうを物乞いしてまわる
Until my parents shall wish me dead
親に「死んだほうがまし」と思われるほどに

I wish, I wish, I wish in vain
望んでも、望んでも、望んでも無駄なこと
I wish I had my heart again
それでもあなたを取り戻したい
And vainly think I'd not complain
ただ「この苦しさを口には出すまい」とむなしく思うだけ

But now my love has gone to France *8
愛しいあなたはフランスへ行ってしまったのだから
to try his fortune to advance *9
武運をためすために
If he e'er comes back 'tis but a chance *10
戻ってくるなんて想像もつかない

Siúil, siúil, siúil a rún(Walk, walk, walk, my love)
行って。もう行って。愛しい人よ
Siúil go socair agus siúil go ciúin(Walk quietly and walk peacefully)
そっと静かに出て行って
Siúil go doras agus éalaigh liom(Walk to the door and flee with me)
戸口まで行ったなら、私を連れて逃げて
Is go dté tú mo mhúirnín slán(And may you go safely my dear)
愛しいあなたが安らかでありますように


※歌詞は動画のものとは構成の違いがある。ゲール語の右の( )内は英訳。次のサイトでの検索結果を参考にした。http://www.irishgaelictranslator.com/translation/


備考
  1. yonder : もっと遠くの、さらに向こうの
  2. 'Tis = It is
    fill : 充分、いっぱい、欲しいだけ、存分
    drink one's fill : さんざん飲む
  3. mill : ひき臼、製粉機、粉ひき場、製粉所
    water mill : 水車場
  4. rock : 糸巻き棒。糸の原料の繊維を巻きつけておく棒状の道具。distaff ともいう。
    reel : 糸巻き、ボビン。糸車の部品。紡ぎ終えた糸を巻くための筒状の道具。
    spinning wheel : 糸車。糸を紡ぐ装置。
    ※以上の知識は右のサイトより得た。http://www.mamalisa.com/?t=es&p=2159&c=68
  5. ゲール語の siúil には walk, go, travel などの意味があるらしい。
  6. flee : 逃げる、すばやく動く・消える、飛んで行く
  7. dye : 着色する、染める
    ※「下着を赤く染める」は娼婦になることを示唆しているように見える。
  8. ※17世紀末から18世紀にかけて多くのアイルランド人がフランスの傭兵として雇われた。
  9. advance : 目標・敵に向って前進する、出世する・昇進する、年齢・地位・知識などが進む・向上する
  10. e'er = ever : [if節中](強意)いったい、そもそも、ともかく [条件節中] いつか、かつて、これまでに
    but : [副] ただ、ほんの、たった、ただ~するだけ
    chance : 可能性、機会、偶然。偶然の出来事、思いがけないこと


 2008年のアルバム Fairy Dance より。
 この歌はアイルランドの伝承曲ですが、その由来ははっきり分かっていないようです。アイルランドの兵士が大量にフランスに赴いたのは17世紀末のことですが(http://en.wikipedia.org/wiki/Flight_of_the_Wild_Geese 参照)、この歌がそのこと自体を指しているのかどうかは不明です。また、歌全体の趣旨が戦争に行った彼を待っている女という設定のはずなのに、ゲール語の一部では「私を連れて逃げて」となっているところ、古いゲール語の歌詞に英語の歌詞が混じっているところなどから、時代が経つ内に他の歌の歌詞が混入したり歌詞が変節したりして初期の歌詞の統一性が損なわれたのではないかと推測できます。
 下の動画はアイルランドのクラナドとケルティック・ウーマンのバージョンです。印象はずいぶん違いますがどちらも素晴らしいと思います。 





 そしてこの歌はアイルランド移民とともに大西洋を渡り、独立戦争の頃からアメリカでも口承で伝えられてきたそうです。ここでは、ゲール語を忘れた移民やアイルランド系ではないアメリカ人にとって「シュール・アルーン」は意味を持たないスキャットに過ぎません。それでも、翻訳されたり他の歌詞に替えたりされることなく残ったのは、ゲール語の美しい響きを残したいという無名の意思が働いたのでしょう。

Johnny's Gone for a Soldier : Diane Taraz




Here I sit on Buttermilk Hill
バターミルクの丘に座り
Who can blame me, cryin' my fill
私が泣くのを誰が責められるだろう
And every tear would turn a mill
涙で水車が回るほどに
Johnny has gone for a soldier
ジョニーは戦争に行ってしまった

Shule, shule, shule aroon
シュール、シュール、シュール、アルーン
Sure, ah sure, and he loves me
たしかに、たしかに彼は私を愛している
When he comes back we'll married be
だから彼が戻ったら結婚するんだ
Johnny has gone for a soldier
ジョニーは戦争に行ってしまった

Me, oh my, I loved him so
ああ、私はこれほどに彼を愛していたのか
Broke my heart to see him go
彼が行って私の心は砕けてしまった
And only time will heal my woe
ただ時だけが私の悲しみを癒すのだろう
Johnny has gone for a soldier
ジョニーは戦争に行ってしまった

I'll sell my rod, I'll sell my reel
糸巻き棒も糸巻きも売ろう
Likewise I'll sell my spinning wheel
糸車も売ってしまおう
And buy my love a sword of steel
愛しい人に鋼の剣を買うために
Johnny has gone for a soldier
ジョニーは戦争に行ってしまった

I'll dye my dress, I'll dye it red
ドレスを染めよう。赤く染めよう
And through the streets I'll beg for bread
町じゅうで物乞いもしよう
For the lad that I love from me has fled
愛する人は私から去ってしまったのだから
Johnny has gone for a soldier
ジョニーは戦争に行ってしまった


 <関連記事>
  ☆ The Wind That Shakes the Barley : Dolores Keane
  ☆ Johnny, I hardly knew ye : Janis Ian

Moonlight Shadow

2012年06月17日

Moonlight Shadow : KOKIA




The last that ever she saw him *1
彼女が最後に見た彼の姿は
Carried away by a moonlight shadow *2
月影にさらわれてしまった
He passed on worried and warning
(彼女を)心配し警告しながら彼は死に
Carried away by a moonlight shadow
月影にさらわれた
Lost in a riddle that Saturday night *3
土曜の夜の不可解な出来事で命を落とし
Far away on the other side
向こうの世界へ行ってしまった
He was caught in the middle of a desperate fight *4
彼は命のやりとりをする争いに巻き込まれ
And she couldn't find how to push through *5
彼女はどう助ければいいか分からなかった

The trees that whisper in the evening
夕暮れにささやく木々の葉ずれは
Carried away by a moonlight shadow
月影にさらわれた
Sing a song of sorrow and grieving
悲しみと嘆きを歌いながら
Carried away by a moonlight shadow
月影にさらわれた
All she saw was a silhouette of a gun *6
彼女に見えたのはただ銃の影法師
Far away on the other side
遥かな向こうの世界へ
He was shot six times by a man on the run
彼は逃走犯の男から6発撃たれた
And she couldn't find how to push through
彼女はどうすればいいのか分からなかった

I stay, I pray, I see you in heaven far away *7
私は耐える。私は祈る。遥かな天国であなたに会うことを
I stay, I pray, I see you in heaven one day
私は耐える。私は祈る。いつか天国であなたに会うことを

Four AM in the morning
午前4時
Carried away by a moonlight shadow
月影にさらわれ
I watched your vision forming *8
私はあなたの幻を見た
Carried away by a moonlight shadow
(それも)月影にさらわれた
Star was glowing in a silvery night
星たちが銀の夜にまたたく
Far away on the other side
遥かな向こうの世界
Will you come to talk to me this night
今夜私とお話をしに来てくれる?

But she couldn't find how to push through
しかし彼女はどうすればいいのか分からなかった

I stay, I pray, I see you in heaven far away
私は耐える。私は祈る。遥かな天国であなたに会うことを
I stay, I pray, I see you in heaven one day
私は耐える。私は祈る。いつか天国であなたに会うことを

Caught in the middle of a hundred and five *9
105人の群衆の真ん中で
The night was heavy and the air was alive
夜は重苦しくもにぎやかな雰囲気に包まれ
But she couldn't find how to push through
しかし彼女はどうすればいいのか分からなかった

Carried away by a moonlight shadow
月影にさらわれ

Far away on the other side
遥かな向こう側の世界

But she couldn't find how to push through
彼女はどうすればいいのか分からなかった

Far away on the other side
遥かな向こう側の世界


備考
  1. last : 最後の人(物・事)、最後の姿(言葉)、終わり
  2. carry away : さらって行く、持ち去る
    ※ここは was carried away または get carried away 等、受動態が省略されているのではないか。
  3. riddle : 謎めいた話、謎、難問、不可解な事
  4. desperate : 自暴自棄の、命知らずの、命がけの、絶望的な、血みどろの
  5. push through : 強引に通す、成し遂げる、通過させる
  6. silhouette : シルエット、影絵、影法師、輪郭、全体の形
  7. stay : とどまる、~のままでいる、持ちこたえる、耐える
  8. form : 作る、形作る、形を与える
  9. 105 : songfacts.com の記事によると、105 は105人の人々つまり多くの群衆を意味するらしい。半端な 5=five は次行の alive と韻を踏ませるため。この歌の12インチバージョンではこの前に The crowd gathered just to leave him. という一文があり、結局ここの意味は「群衆が彼の遺体に集まってきた」ということになる。
    http://www.songfacts.com/detail.php?id=2895 参照。




 KOKIA(1976年、東京生まれ)の2010年のアルバム Musique a la Carte より。オリジナルは上の動画にある Mike Oldfield & Maggie Reilly(1983年)です。
 恋人を殺されるという悲劇なのに、軽く甘い歌声に乗せて語られると不思議な幻想的な気分に誘われます。歌詞の初めと終わりは「彼」「彼女」という第三者からの視点で語られ、中盤だけが「私」「あなた」という残された彼女の一人称視点で語られています。一人称の「午前4時」から「…来てくれる?」までと「私は耐える…」の部分は、後日の彼女の回想ではないかと思われます。それは、彼が死んだ night あるいは evening に対して、一人称部分では morning という言葉が使われているからです。全編を一人称で通すよりも、その前後を三人称の「神の視点」で囲む方が彼女の悲しみをより深く表し、また、天国を夢想する彼女を見守る神というイメージを抱かせるのではないかと思います。
 個人的には KOKIA の落ち着いた声よりマギー・ライリーの可愛らしい声の方が好きなのですが、その実力の割に知名度が低い KOKIA を紹介したかったためこの記事では彼女の歌としました。以下に紹介するのは「調和」「dandelion」の2曲です。他にも素晴らしい歌がいくつもありますので興味のある方は YouTube で探してみてください。








 実は私は KOKIA の書く歌詞はあまり好きではありません。倫理や道徳の押し付けがましさが苦手だからです。しかし、彼女の歌唱にはそんな私の矮小な思考を容易に蹴散らす力があります。歌の持つある種の恐さを感じさせる歌手です。




最新記事