Joshua Fit the Battle of Jericho

2012年10月27日

Joshua Fit the Battle of Jericho : Mahalia Jackson




※ Joshua fit the battle of Jericho, Jericho, Jericho *1
ジョシュアは戦った。ジェリコで。ジェリコで
Joshua fit the battle of Jericho, and the walls come tumblin' down ※ *2
ジョシュアは戦った。ジェリコで。そして、城壁は落ちた

Good morning sister Mary, good morning brother John
おはようメアリー。おはようジョン
Well I wanna stop and talk with you, wanna tell you how I come along *3
立ち止まって話をしないか。伝えたいんだ。私がどう生きているか

I know you've heard about Joshua, he was the son of Nun
ジョシュアのことは聞いたことがあるだろう。ヌンの息子だ
He never stopped his work until, until the work was done
彼は決して仕事をやめなかった。それが成し遂げられるまで
※ ~ ※

You may talk about your men of Gideon, you may brag about your men of Saul *4
勇士ギデオンはどうかって? サウル王はどうかって?
There's none like good old Joshua at the battle of Jericho
比べられるような者はいないよ。ジェリコの戦いのジョシュアには

Up to the walls of Jericho, he marched with spear in hand
ジェリコの城壁に着くまで、彼は槍を持って行進した
Go blow them ram horns, Joshua cried 'cause the battle is in my hands *5
牡羊の角笛を吹け。ジェリコは叫んだ。戦いは我が手中にある
※ ~ ※

They tell me, great God that Joshua's Spear was well nigh twelve feet long *6
言い伝えによれば、ああ主よ、ジョシュアの槍は12フィートもあった
And upon his hip was a double edged sword and his mouth was a gospel horn
そして、腰には両刃の剣、口には福音の角笛

Yet bold and brave he stood, salvation in his hand
大胆に勇猛に彼は立ち尽くす。救済は彼の手の中にあった
Go blow them ram horns Joshua cried 'cause the devil can't do you no harm
牡羊の角笛を吹け。ジョシュアは叫んだ。悪魔はお前たちを傷つけられない
※ ~ ※

Up to the walls of Jericho, he marched with spear in hand
ジェリコの城壁に着くまで、彼は槍を持って行進した
Go blow them ram horns, Joshua cried 'cause the battle is in my hands
牡羊の角笛を吹け。ジェリコは叫んだ。戦いは我が手中にある

Then the lamb ram sheep horns began to blow, the trumpets began to sound *7
子羊の角笛、牡羊の角笛。羊の角笛が吹かれた。らっぱが鳴った
Old Joshua shouted glory and the walls came tumblin' down
ジョシュアが神の栄光を讃え叫んだ。城壁は崩れ落ちた
※ ~ ※

 ☆動画で歌われているのは上の歌詞の一部で、また細部が異なっている。


備考
  1. fit : 米アパラチア地方の方言で fight の過去・過去分詞形らしいが、なぜそれが黒人霊歌の歌詞になっているのか不明。
     参考 http://artsandsciences.sc.edu/engl/dictionary/dictionary.html
        http://www.merriam-webster.com/dictionary/fit
  2. tumble : 倒れる、転ぶ、崩れ落ちる、崩壊する
  3. come along : やって来る、一緒に来る、うまく進む、やって行く、暮らしていく、現れてくる
  4. Gideon :『士師記』に載るヘブライ人の指導者・英雄。その名は破壊者を表す。
    brag : 自慢する
    Saul :『サムエル記』に載るイスラエル王国の初代王。
  5. ram : 去勢されていない牡羊
  6. nigh : ~の近くに、ほとんど~に近い
  7. lamb : 子羊
    sheep : 羊


 この黒人霊歌の歌詞は旧約聖書『ヨシュア記』にある "ジェリコ(エリコ)の戦い" が元になっています。エジプトで奴隷として扱われていたイスラエル人たちは預言者モーセに率いられてエジプトを脱出し、神に約束された地カナン(パレスチナ)を目指します。モーセの死後後継者となったジョシュア(ヨシュア)は神の命に従いヨルダン川を渡り、カナンの入り口に当たる城塞都市ジェリコ陥落を図ります。そして、ジェリコに侵入したイスラエル人たちは、男も女も老人も子どもも、牛、羊、ろばに至るまですべて(斥候を匿った遊女の家族を除いて)を殺します。ユダヤ・キリスト教の聖書にはこのような神の意思に基づく虐殺も記述されているのです。旧約聖書のこの記述にどの程度の歴史的事実があるのかは明らかでないようですが、約束の地カナンはこの戦いの後にも数多くの血に塗れた歴史を負います。バビロニアやローマ、イスラムなどの争い、十字軍。そしてイスラエル建国時からのユダヤとアラブの争いは今も続いています。
 アメリカの黒人奴隷たちは、自らの不幸と受難の克服をキリスト教の聖書の言葉に託して歌いました。それは彼らが聖書の言葉に救いを見出したからかもしれませんが、一方で白人に聞かれても構わないようにあえて聖書の言葉を使い真意を偽装したとも言えるそうです。たとえばこの歌詞では、何度も繰り返される the walls come tumblin down は表向きはジェリコの陥落ですが、隷属からの解放ともとれます。youtube でこの歌の動画をいろいろ見ました。白人だけで歌っているものもありとても美しい合唱だったのですが、彼らは果たしてどのような心情を込めて歌っているのだろうかと想像すると少し複雑な気分になりました。表向きの歌詞はどう見ても侵略の歌でしかありませんから。また、日本の中学校の合唱コンクールなどでもよく使われるそうですが、この歌に込められた屈折した心情を歌唱指導するのはとても難しいのではないかと心配になります。

      

 冒頭の動画を探している時に上の動画を見つけました。いつのものなのか分かりませんが、キング牧師の集会のようです。マヘリア・ジャクソンは相変わらず豪快に歌っています。この熱狂は新興宗教の集会みたいで少し気持ち悪いですが黒人公民権運動の高まりの熱気はこのようなものだったのでしょう。キング牧師の表情を見ると、この人は確かにカリスマらしい魅力のある顔をしていると思います。


Joga

2012年10月23日

Joga : Björk




All these accidents that happen follow the dot
このすべての出来事は 一つの点を追っている
Coincidence makes sense only with you *1
偶然の一致が意味を持つのは あなたがいるからこそ
You don't have to speak, I feel
あなたはしゃべらなくていい 私には感じられる

Emotional landscapes, they puzzle me 2
心の震える地形が 私に謎をかける
Then the riddle gets solved
そして その謎が解けた時
And you push me up to this state of emergency *3
あなたは私を駆り立てる この緊急事態へ

How beautiful to be
なんて美しい存在
State of emergency is where I want to be
緊急事態 私が求める場所

All that no one sees, you see what's inside of me
誰もが分からないすべて あなたには分かる 私の心の中
Every nerve that hurts, you heal deep inside of me, ooh
痛みを感じるすべての神経 あなたは私の心の深部を癒す
You don't have to speak, I feel
あなたはしゃべらなくていい 私には感じられる

Emotional landscapes, they puzzle me and confuse
心の震える地形が 私に謎をかけ困惑させる
Then the riddle gets solved
そして その謎が解けた時
And you push me up to this state of emergency
あなたは私を駆り立てる この緊急事態へ
How beautiful to be
なんて美しい存在
State of emergency is where I want to be
緊急事態 私が求める場所
State of emergency
緊急事態
How beautiful to be
なんて美しい存在

Emotional landscapes, they puzzle me
心の震える地形が 私に謎をかける
Then the riddle gets solved
そして その謎が解けた時
And you push me up to this state of emergency
あなたは私を駆り立てる この緊急事態へ
How beautiful to be
なんて美しい存在
State of emergency is where I want to be
緊急事態 私が求める場所


備考
  1. coincidence : 偶然の一致、暗号、合致、符合、同時発生、同時存在
    ※心理学者ユングはシンクロニシティ(共時性)というオカルティックな概念を提唱した。伝統的な因果律とは異なり、因果関係のない複数の事柄の「偶然の一致」にも何らかの原理が働いている場合があるとする。そして、集団や民族、人類などに共通する集合的無意識が人間の意識の形成とコミュニケーションに作用し、同時発生・偶然の一致をもたらすとされる。
  2. ※ emotion は「感情(何かによって引き起こされる心の状態)、感動」だが、語の作りが ex-motion(外に動く)なので、日本語の感情より動的な語感の強い言葉ではないかと思う。
    ※ただし、ビョークはおそらく英語を母語としていないので、このような読み方は彼女の意図を損ねるかもしれない。
  3. state : 状態、ありよう、様子、精神(感情)状態、緊張状態、異常な神経状態


 1997年のアルバム Homogenic より。曲名の「ヨーガ」はビョークの親友のニックネームで、彼女に捧げた歌だそうです。また、ビョークはこの歌について、アイスランドの讃歌あるいはとてもロマンチックで誇り高い伝統的なアイスランド的な歌だと思う、火山の音を表現したかった、等と語っているそうです( http://en.wikipedia.org/wiki/Jóga )。
 アイスランドは自然が豊かで緑が多いというイメージを持っていました。たしかに人口密度は1平方kmあたり3人(ちなみにシンガポール6773人、日本336人、イギリス253人、アメリカ33人、カナダ3.3人)と世界で最も低い国の一つです。しかし、国土の10%が氷河におおわれ、火山灰でやせた土地が多いため森林面積は0.3%(日本は66%)に過ぎません。活動中の火山が30もあり、これは地熱発電や温泉等貴重な資源ではありますが、一方で噴火による災害も数多く起きています。冬の厳しい寒さも含めて、人間が生きていくにはかなり過酷な環境なのではないかと思います。下のPVを見ているうちに、歌詞中の emotional は揺れ動く大地、emergency は火山の噴火の隠喩だろうかと思うようになり、また、push up to や deep inside of なども合わせ全体が性的な隠喩にも思えてきました。

      
  
 この歌ともアルバムとも関係ありませんがビョークのインタビュー記事を見つけたので紹介します。彼女のものの考え方、音楽に対する姿勢などが分かる、とてもいいインタビューだと思います。1996年のものです。
 http://www.myagent.ne.jp/~newswave/bjork.htm


The River : Bruce Springsteen

2012年10月18日




 今夜はどうだい?
  <歓声>
 よかった……そりゃ、よかった

 これは……俺がまだガキだった頃、親父といつもぶつかり合ってた。どんな事でもね。
 その頃は髪が長かったんだ。肩より下まであったよ、十七、八の頃さ。
 親父はそれが気に入らなくて、それでまたケンカさ。だから、俺はよく家の外で過ごした。

 夏は暖かいからいいんだよ、友達も外にいたしね。
 でも、冬は町にいるとすごく寒かった。風が強くて、俺は電話ボックスに立ちっぱなし。
 よく彼女に電話したよ。四時間もね。一晩中話してた。

 最後は勇気を振り絞って家に帰るんだ。家の前に立つと、親父が台所で待ってる。
 俺は髪を襟の中にたくし込んで、中に入る。親父が俺を呼ぶ。ここに座れって。
 親父はいつも最初に尋ねた。お前はいったい自分をどうしたいと思ってるんだ?
 この話の最悪なところは、俺がそれに答えられなかったってことさ。

 一度、オートバイで事故を起こした。
 俺はベッドから動けない。親父は床屋を連れてきて、俺の髪を刈らせた。
 覚えてるよ。俺は、大嫌いだ、絶対忘れないからって言ってやった。
 親父はよく俺に言った。おい、早くお前が徴兵されないかな。
 軍隊がお前をまともな男にしてくれるだろう。丸刈りにして、お前を男に変えてくれるよ。

 それから、これは、たしか'68年だった。たくさんの男が、隣近所から、ベトナムへ行った。
 最初のバンドのドラマーも海兵隊の制服を着て俺の家に寄った。
 出征するんだが、行き先も知らなかった。
 たくさんの男が行った。たくさんの男が帰って来なかった。
 戻って来れた多くも、前とは違う姿になってた。

 徴兵検査の通知が来た日のことはよく覚えてる。家族には隠してた。
 検査の三日前から俺は友達と出かけ、夜通し一緒に過ごした。
 そしてその日、俺たちはバスに乗った。うん、みんなすごく恐かったんだ。
 行ったけれども俺は落とされた。家に帰れたんだ。
  <歓声>
 誉められたことじゃないよ。

 三日ぶりに家に戻った。台所に行くとお袋と親父が座ってた。
 親父が言った。どこに行ってたんだ? 俺は答えた。徴兵検査だよ。
 親父が言った。どうなったんだ? 俺は答えた。俺はいらないんだってよ。

 そして親父は言ったんだ。「そりゃ、よかった」


I come from down in the valley
俺はあの谷間の方の出なんだ
Where, mister, when you're young *1
子どもの頃から
They bring you up to do like your daddy done
父親と同じように生きることをしつけられるような所さ

Me and Mary, we met in high school when she was just seventeen
俺とメアリーは高校の時に出会った。彼女は十七だった
We'd ride out of that valley down to where the fields were green
俺たちはよくバイクで谷を出て、緑の草原に行った

We'd go down to the river and into the river we'd dive
川にそって走った。川で泳いだ
Oh down to the river we'd ride
川にそって走ったんだよ

Then I got Mary pregnant and, man, that was all she wrote *2
俺はメアリーを孕ませた。そこで物語は終わったんだ
And for my nineteen birthday I got a union card and a wedding coat
十九の誕生日に労働組合証と結婚式用の上着をもらった
We went down to the courthouse and the judge put it all to rest *3
俺たちは裁判所に届けに行った。後は判事が全部やってくれた
No wedding day smiles, no walk down the aisle, no flowers, no wedding dress
晴れの日の笑顔もない。礼拝堂を歩くこともない。花もない。ウェディングドレスもない
That night we went down to the river and into the river we'd dive
その夜、二人で川へ行き、二人で泳いだ
On down to the river we did ride
川にそってバイクを走らせた

I got a job working construction for the Johnstown Company *4
ジョンズタウン社で建築の仕事についた
But lately there ain't been much work on account of the economy *5
でも近頃じゃ不景気で仕事がなくなってきた
Now all them things that seemed so important
大切に見えてたことが、今はみんな
Well mister, they vanished right into the air
空しく消えて行った
Now I just act like I don't remember, Mary acts like she don't care
俺はそれを忘れたふりをしてる。メアリーは気にしないふりをしてる

But I remember us riding in my brother's car
でも俺は覚えてる。兄貴の車で二人でドライブしたんだ
Her body tan and wet down at the reservoir
彼女の日焼けした肌が水に濡れた貯水池
At night on them banks I'd lie awake
夜、堤防に寝ころがって
And pull her close just to feel each breath she'd take
彼女を引き寄せた。彼女の息を感じたかった
Now those memories come back to haunt me, they haunt me like a curse *6
こんな思い出が俺につきまとう。呪いのように俺を悩ます

Is a dream a lie if it don't come true
実現しない夢は偽りになるのか
Or is it something worse
それとももっと悪いものなのか
That sends me down to the river though I know the river is dry
でも、その夢が俺を川へと導く。川は枯れてると分かってるのに
That sends me down to the river tonight
川へと導くんだ、今夜も

Down to the river, my baby and I
川にそって、可愛い彼女と俺は
Oh down to the river we ride
俺たちは川にそって走る


※曲前の語りの部分は下のサイトに掲載された英文を訳した。
 QUOTATIONS: Family, war, & love in Bruce Springsteen's preamble to 'The River'


備考
  1. mister : 呼びかけの言葉
  2. That's all she wrote. : それでおしまい。以上。万事おしまいだ。「物語が終わってもうこの後はないこと」「突然に何かが終わってしまったこと」等を示す慣用句。
    man : *1 と同じ
  3. ※アメリカの婚姻手続は<役所で結婚許可書を取得→結婚式で許可書に立会人が署名→それを別の役所に提出>となっているらしい。立会人は州の認可を受けた聖職者や裁判官・役人などで、教会で結婚式を行なわない場合裁判所や役所でも簡易な式を執り行ってくれるらしい。行政に宗教が完全に入り込んでいるさまは、大統領選で宗教が重要なテーマになるのと同様、日本の政教分離とアメリカの政教分離の観念が異なっていることを示している。
  4. ※ジョンズタウンはペンシルベニア州(ニューヨーク州とニュージャージー州に隣接)南西部の都市。1950年代まで6万人を超えていた人口はその後漸減し、2010年には2万人にまで過疎化している。
  5. on account of : ~の理由で、~のせいで、~の利益のために、~のためを思って
  6. haunt : よく訪れる、心に絶えず浮かぶ・付きまとう・悩ます、幽霊がよく現れる
    curse : のろい、呪文、のろいの言葉、悪罵、悪態、たたり、わざわい


 1980年のアルバム The River より。1949年生まれのスプリングスティーンが30歳頃の作品です。この歌詞には Blinded By The light(1973年)の奔流のような饒舌や Born To Run(1975年)の強烈な情熱の鼓動はありません。主人公の「俺」がどんな夢を抱いていたのかは明らかにされず、メアリーがどんな女なのかも語られません。一人称なのにどこか鳥瞰的に描かれた物語のように見えます。経済的に衰微しつつあるペンシルベニア州の片田舎。バイクに乗るか川で遊ぶくらいしか娯楽のない谷間の町。夢など持ち得そうにない風景が目に浮かぶようです。

    johnstown.jpg

 ジョンズタウンは上の写真のように南北に流れる川沿いに作られた盆地の町です。私の故郷も盆地で、周りの山がもっと高いですが少し似ています。冒頭の down in the valley はこの町を指しているのでしょう。そうすると、ここで誰かに昔語りをしている今、この男とメアリーはジョンズタウンを離れていることになります。仕事がなくなり故郷を離れたもののあまりうまく行かず、悶々としている様子が伝わってきます。いつも川と共にあった前半生、メアリーとの思い出、二人で語り合った夢。この男にとって川こそが自分の運命を縛る鎖であり、同時に自分を支える土台なのではないでしょうか。



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