The Heathen

2014年12月28日

The Heathen : Bob Marley & The Wailers




Rise up fallen fighters
立ち上がれ、倒れた戦士よ
Rise and take your stance again *1
立ち上がり、再び構えろ
'Tis he who fight and run away *2
戦うのも彼であり、逃げるのも彼だ
Live to fight another day *3
そして再び戦うために生きる
And de heathen back dey 'pon de wall *4
だが、異教徒は壁の陰に隠れる
De heathen back, yeah, 'pon de wall
神を信じられない者は壁に隠れる

As a man sow, shall he reap *5
自らの行いは自らに報いをもたらすと言うが
And I know that talk is cheap *6
それは言葉で言うほど易くはない
But the hotter the battle
だが戦いが激しければ激しいほど
A the sweeter Jah victory
神の勝利の喜びは大きくなる
And de heathen back dey 'pon de wall
神を信じられない者は壁に逃げ隠れることになる
De heathen back, yeah, 'pon de wall
神を信じない者には勝利はもたらされない


備考
  1. stance : 思想・心情的な立場・態度・姿勢、立った姿勢・構え
  2. 'Tis = It is
  3. another day : 後日、他日
  4. de = the, dey = they or their, 'pon = upon
    heathen : 1.ユダヤ・イスラム・キリスト教の唯一神以外のものを信奉する者 2.一般的に異教徒、不信心な未開人・野蛮人 3.古代宗教を復活させようとする Neopaganism の信奉者
    ※この一文が 1.The heathens have their backs up on the wall.(異教徒=敵は壁を背にし追いつめられている)なのか 2. The heathens are back upon the wall.(不信心者=信念のない者は戦いから逃げ壁の後ろに隠れる)なのか 3.The heathen are back, and they are upon the wall.(再来した敵は壁を越え攻め込む、敵は再来したが苦戦している)なのか分からない。ここでは、一応 2. の解釈で翻訳した。
  5. As a man sows, so shall he reap. : [諺] 蒔いた種は刈らねばならぬ。自ら起こしたことには責任を負うべき。因果応報。身に降りかかる善も悪も自らの行動が引き起こすことだ。
  6. Talk is cheap. : 言うだけでは金はかからない、口先の言葉に価値はない、口では何とでも言える、言うだけなら簡単だ


 1977年のアルバム Exodus より。
 ラスタファリアニズムの神 Jah(ジャー)はユダヤ・キリスト・イスラムの創造主と同じです。この観点からはこの歌詞の heathen は Jah を信仰しない異教徒すなわち「敵」を意味するものと解釈できそうですが、曲名が heathen であることや曲調、文脈から、敵味方に関わらずもっと一般的に「神を信じない者、戦いの大義に対する信念を持てない者」などの意味ではないでしょうか。一見、神と大義を信じ不屈の戦士となれというアジテーションに見えますが、このような檄を発せねばならない状況に対する悲痛な思いが表れた歌だと思います。

In The Woods Somewhere

2014年12月22日

In The Woods Somewhere : Hozier




My head was warm, My skin was soaked *1
僕の顔はほてり、肌は濡れていた
I called your name 'til the fever broke
君の名を呼んだ。高熱が下がるまで
When I awoke the moon still hung
目覚めた時、月はまだ空に掛かっていた
The night so black that the darkness hummed *2
夜はとても黒く、暗闇がざわめいていた

I raised myself, mylegs were weak
体を起こしたが、この脚は弱く
I prayed my mind be good to me
僕は祈った。自分の心が自分に優しくあるようにと
An awful noise filled the air *3
恐ろしい音が辺り一面を満たした
I heard a scream in the woods somewhere
悲鳴が聞こえた。森の中のどこかだ

A woman's voice, I quickly ran
女の声だ。僕はすぐに駆け出した
Into the trees with empty hands
木々の中へと。手に何も持たずに
A fox it was. He shook afraid *4
それは狐だった。恐れに震えている
I spoke no words, no sound he made
僕は何もしゃべらず、彼も物音一つたてない

His bone exposed, his hind was lame  *5
骨がさらされ、後ろ脚は動かない
I raised a stone to end his pain
彼の痛みを終わらせるために、僕は石を持ち上げた
What caused the wound? How large the teeth?
どうしたらこんな傷が? どれだけ大きな牙なんだ?
I saw new eyes were watching me
その時僕は見た。別の目が僕を見つめているのを

The creature lunged, I turned and ran *6
何かが突進して来る。僕は振り向き逃げ出す
To save a life I didn't have
なかったはずの命を守るために
Dear, in the chase there as I flew
恋人よ。僕は追いかけられ逃げ回っている間
Forgot all prayers of joining you
君と一緒になりたいという祈りを忘れていた

I clutched my life and wished it kept
僕はこの命を掴み、それが永らえることを望んだ
My dearest love I'm not done yet
最愛の人よ。僕はまだ終わらない
How many years I know I'll bear
どんなに長い年月も僕は耐えるだろう
I found something in the woods somewhere
僕は何かを見つけた。森の中のどこかで


備考
  1. head : 1.頭部。首から上の頭(脳)、目、耳、鼻、口などを含む部分 2.知力の中心としての頭脳、頭
  2. hum : 蜂・独楽のようなブンブンという音を立てる、不明瞭な声をあげる、ふむふむ(ぶつぶつ)言う、鼻歌を歌う
  3. awful : 恐ろしい、すさまじい、ひどい、いやな
  4. afraid : 怖がって、恐れて、嫌で、心配して、気がかりで
  5. expose : 危害・攻撃・非難にさらす、物・事に触れさせる・向ける、風雨・寒さ・日光にさらす、見せる、あばく、暴露する
    hind : 後ろの、後方の、後部の
    hind legs : 後ろ足
  6. lunge : 突く、ボクシングのストレートを出す、突進する


 ホウジァ(Andrew Hozier-Byrne)は1990年アイルランド生まれの歌手です。この歌は2014年のデビューアルバム Hozier(Deluxe version)のボーナストラックとして収録されています。
 この歌についてホウジァはインタビューで次のように語っています。「ただ、再び誰かが、生きるとまではいかなくても、せめて死なない理由を見つける物語が書きたかった。誰かがもう既に死んだ恋人に歌っているような、そんな小さな物語のようなもの。彼らは森の中で、何かマジで心底恐ろしいものを目撃して、あまりに怖くて、その瞬間、彼はもう死にたいと願っていない事を自覚するんだ」(http://www.absolutepunk.net/showthread.php?t=3711040 参照。翻訳は知人にお願いしました)。

Story of Isaac

2014年12月18日

Story of Isaac : Leonard Cohen




The door it opened slowly, my father he came in, I was nine years old.
戸がゆっくりと開き、父が入って来た。私は九つだった。
And he stood so tall above me, his blue eyes they were shining and his voice was very cold.
父は私の上に聳え立った。その青い瞳は輝き、その声はとても冷たかった。
He said, "I've had a vision and you know I'm strong and holy, I must do what I've been told."
そして、言った。「私は主の御心を幻視した。私はとても信心深い。私は教えに従わねばならない」
So he started up the mountain, I was running, he was walking, and his axe was made of gold. *1
父は山に登り始めた。私は走った。父は歩いた。父の持つ斧は金でできていた。

Well, the trees they got much smaller, the lake a lady's mirror, we stopped to drink some wine.
登るに従い木々はどんどん小さくなった。湖は女の鏡のようだ。私たちは立ち止まり葡萄酒を飲んだ。
Then he threw the bottle over. Broke a minute later and he put his hand on mine.
父は壜を遠くに投げた。一分も経ってその割れ音がすると、父は手を私の手に重ねた。
Thought I saw an eagle but it might have been a vulture, I never could decide. *2
鷲が見えたような気がした。だが、禿鷲だったかもしれない。私には結論が出せなかった。
Then my father built an altar, he looked once behind his shoulder, he knew I would not hide. *3
父は供物を捧げる祭壇を作った。一度肩越しに私を顧みた。ただ、私が逃げ隠れなどしないと知っていた

You who build these altars now to sacrifice these children, you must not do it anymore.
あなたたちは今、この子らを供犠とするために祭壇を作っている。しかし、もうやってはならない
A scheme is not a vision and you never have been tempted by a demon or a god. *4
謀り事は御心の幻視ではない。そして、あなたたちは悪魔にも神にも誘惑されたわけではないのだ
You who stand above them now, your hatchets blunt and bloody, you were not there before, *5
あなたたちは子らの上に立ち、その斧は鈍く血なまぐさい。あなたたちはかつてそこにはいなかった
when I lay upon a mountain and my father's hand was trembling with the beauty of the word.
そう、私が山の上に横たわっており父の手が主の御言葉の美しさに震えていた時には

And if you call me brother now, forgive me if I inquire, "Just according to whose plan?" *6
あなたたちが私を兄弟と呼ぶのなら、こう問うことを許してくれ。「誰の目論見に従っているのか」
When it all comes down to dust I will kill you if I must, I will help you if I can. *7
すべてが塵へ帰する時、定めなら私はあなたたちを殺す。でき得るならあなたたちを助ける。
When it all comes down to dust I will help you if I must, I will kill you if I can.
すべてが塵へ帰する時、定めなら私はあなたたちを助ける。でき得るならあなたたちを殺す。
And mercy on our uniform, man of peace or man of war, the peacock spreads his fan. *8
私たちの軍服に対する憐れみ。平和に生きる人間または戦争に生きる人間。孔雀は羽を広げる


備考
  1. axe = ax : 斧、鉞、戦斧(いくさおの・せんぷ)
  2. ※ eagle は「狩りをする大型の猛禽類。鷲」、vulture は「ハゲワシ・コンドルなど狩りをしない死肉食の大型猛禽類」を指す。
  3. altar : 祭壇、供物台、聖餐台
  4. tempt : 誘惑する、誘って連れ出す、欲望をかき立てて誘い込む
  5. hatchet : 手斧、北米原住民の鉞(まさかり)・戦斧(tomahawk)
    blunt : (刃などが)鈍い、なまくらの、丸い、ずんぐりした
    bloody : 血の、血で汚れた、血まみれの、流血の、血なまぐさい、残虐な、残忍な
  6. inquire : 聞く、尋ねる、問う
    ※ ask …一般的に「質問する」 inquire …改まった形式的もしくは公的な質問 question …何度も繰り返し尋ねる
    ※ "call me brother" は、イサクを先祖とする、即ち同じ神を信仰するという意味ではないだろうか。
  7. ※ must は「しなければならない、すべきである…当為」と「する運命にある…必然」の両義があり、can は「能力がある」「可能である」「許可される」「起こり得る、あり得る…可能性」などの意味がある。また、ここでの will が意志未来なのか単純未来なのか判断がつかなかったが、一応意志未来で訳した。
  8. ※マタイ伝(10-34)のイエスの言葉に「地上に平和をもたらすために私が来たと思うな。平和ではなく剣を投げ込むために来たのである」とある。
    ※ *2 の鷲や禿鷲は軍隊や戦争を貪る人間を隠喩しているように見える。一方、孔雀が直接に平和を隠喩しているとは思えないが、鷲・禿鷲とは対照的に使われているのだろうとは思う。


 1969年のアルバム "Songs from a Room" より。
 旧約聖書『創世記』には太祖と称されるユダヤ人の先祖の物語が記されています。この歌はそのうちのアブラハムとその子イサクを素材として書かれたものです。ユダヤ人の始祖とされるアブラハムは、信仰の試練として「イサクを生贄として捧げよ」と神から命じられます。神の指定したモリヤの山にイサクを連れて登ったアブラハムがためらいながらもイサクの上に斧を振りかざした瞬間、天使が舞い降りてイサクを止め、アブラハムの信仰心の真正さを神が祝福します。
 この歌詞はイサクの一人称で語られています。そして、前半は聖書の記述にある程度沿った二人の行動描写ですが、後半は現代に蘇ったイサクが私たち現代人に対して語っているような印象を受けます。ここから想像できるこの歌の主題は、「現在私たちは子供たちを何かの生贄にしており、それは人間のあるべき姿ではない」というものではないかと思います。とくに、子供を若者にまで敷衍すれば若者を戦争の犠牲にしてはならないと歌っているようにも見えます。
 アブラハムとイサクが登ったモリヤ山はユダヤの伝承では神殿の丘(シオンの丘)とされています。ここは、ユダヤ教及びキリスト教の聖地であるとともにムハンマドが昇天した場所としてイスラム教の聖地でもあり、また、古代から現代に至るまで諸国諸民族の侵略を受け多くの血が流された場所です。神殿の丘は現在パレスチナ自治政府が管理しており、ユダヤ教徒はここで祈りを捧げることはできません。そして、ユダヤ=イスラエルの祖であるイサクにはイシュマエルという異母兄がいましたが、このイシュマエルはイスラム教ではアラブ人の祖とされています。ユダヤ教徒であるレナード・コーエンの目には神殿の丘は戦争の象徴のようにも見えるのではないでしょうか。
 ただ、隠喩に富んだ歌詞の細部には意味の分からないところが多く、彼の真意は実はよく理解できません。



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