Bad Girls : M.I.A.

2016年02月29日




※ Live fast, die young, bad girls do it well *1
好きなように生き、若くして死ぬ。悪い女はこれを上手にやる
My chain hits my chest when I'm bangin' on the dashboard *2
鎖が私の胸を叩いている。私の身体はダッシュボードに何度もぶつかっている
My chain hits my chest when I'm bangin' on the radio ※
鎖が私の胸を叩いている。ラジオでは私の歌が轟いている

☆ Get back, get down *3
退がって。伏せて
Pull me closer if you think you can hang *4
もっと私を引き寄せないと。私を吊るすことができると思うのなら
Hands up, hands tied
両手を上げて、縛らないと
Don't go screaming if I blow you with a bang *5 ☆
でも、悲鳴をあげないでね。もし私があなたを撃ち抜いたとしても

Suki suki *6
ハンドルを握っている
I'm coming in the Cherokee *7
私はチェロキーで、行く
Gasoline
ガソリンと共に
There's steam on the window screen *8
車の窓ガラスが曇っている
Take it, take it *9
我慢して。耐えて
Wheel's bouncing like a trampoline
トランポリンのように車輪が跳ねる
When I get to where I'm going, gonna have you trembling
私が行きたい所に達する時、あなたも身震いさせてあげる

※~※

Yeah back it, back it
そうよ。もっと退がって
Yeah pull up to the bumper game *10
お尻のバンパーにくっつけるんだから
Read the signal *11
この警告を察してよ
Cover me, cause I'm changing lanes
援護して。車線を変えるんだから
I had a handle on it *12
私が操ってるのよ
My life, I broke it
私の人生は私が自分で壊す
When I get to where I'm going, gonna have you saying it
私が望む所に行き着く時は、あなたにもそう言わせてあげる

※~※

☆~☆

Going up to bitch I'll see it for a million *13
売女と呼ばれるまで昇りつめる。それは、百万人の女のためよ
Accelerating fast I could do this in a second
急加速なんて一瞬でできる
Lookin' in the rear view, swagger going swell *14
すべてを後景にしながら、颯爽と駆け抜ける
Leavin' boys behind 'cause it's legal just to kill *15
男たちは置き去りにする。だって、女だけが合法的に殺されるのよ
Shift gear, automatic, damned if I do *16
ギアは自分で決める。オートマ? とんでもない。自動的に変えられるなんて真っ平
Who is gonna stop me when I'm coming through? *17
障害を跳ね除けて生き抜こうとする私を止めようとするのは誰?
What we've got left is just me and you
私たちに残されたものは、私とあなただけでしょ
But if I go to bed, baby, can I take you?
私がベッドに行く時は、一緒に行ってくれる?

☆~☆

※~※


備考
  1. live fast : 放埓な生活をする
  2. ※ chain は「ネックレス」だが「自分を拘束する鎖→女性を縛る社会慣習」も暗喩している。
    chest : 胸、胸郭、肺。蓋付きの頑丈な収納箱。胸中の思い
    ※ bang はここではおそらく「セックス」の意味だろうが、同時に「銃を撃つ→体制への反抗」も暗喩している。
    dashboard : 自動車のフロントウインドウ下、前席正面の内装部分
  3. get back : 取り戻す、取り返す。元の場所に戻す、送り届ける。後方へ下がる。戻る、帰って来る、返却される、復帰する、よりを戻す
    get down : 下げる、降りる、降ろす。身をかがめる、ひざまずく。倒す、撃ち落とす
  4. hang : 吊るす、掛ける、垂れ下がる、のんびりくつろぐ、たむろす、絞首刑にする、首を吊る
  5. blow : 吹き動かす、吹き倒す、吹きつける、吹きかける、楽器を鳴らす、口淫する
    bang : 轟音、ズドン(ドスン・バタン)という音。強打。強烈な興奮、麻薬注射。性交
    with a bang : ズドン(ドスン・バタン)と。上手く、成功して、華々しく
  6. ※ "suki" はアラビア語で "drive" と同義らしい。
    ※サウジアラビアは、世界で唯一女性の車の運転を法的に禁止している国である。
  7. Cherokee : ジープ・チェロキー。アメリカの自動車ブランド名。悪路走行用の四輪駆動車
    ※チェロキーは北米で侵略者である白人と戦い続けた先住民の一部族名である。また、バスク人の独立を目指す過激派組織「バスク祖国と自由(ETA)」のコマンド部隊指導者だったミゲル・ガリコイツ・アスピアス・ルビーナの通称がチェロキーという。スペインのフランコ独裁政権に抵抗する組織として1959年に結成された ETA はその主な活動は政治家やジャーナリスト、軍人、知識人、企業家などを標的とする暗殺や爆破などのテロリズムであり、とくに自動車爆弾を常套手段としていた。
  8. window screen : 窓につける網戸。ただし、ここでは車の窓ガラスを指しているのだろうと思う。
  9. take it : 分かる、理解する、我慢する、耐える
  10. pull up to : 追いつく、並ぶ
    pull up to a red light : 赤信号の手前で車を止める(手前まで車を寄せる)
    pull up to the door : 車を玄関に着ける(乗り入れる)
    bumper : 緩衝器、緩衝装置、車のバンパー。ぶつかる人。女性の尻
  11. signal : 合図、信号、信号機。メッセージ、意図、警告
  12. handle : 取っ手、ハンドル(車のハンドルは steering wheel)、柄。機会、手段。陰茎、乳房
    have a handle on : 把握する、理解する、操る、管理する
  13. go up to : ~まで上がる・増す、~の所に届く、~に及ぶ・達する、~の所へ行く、~に近寄る
    go up to 100 miles per hour : 最高速度は時速100マイルだ
  14. swagger : 威張った態度(行為)、肩を怒らせた歩き方、闊歩、自慢、自信たっぷりな態度、粋なこと
    swell : 粋な、気の利いた、風雅な、流行の服装をした。一流の、立派な、素敵な、素晴らしい
  15. ※サウジアラビアでは女性が婚外交渉を行なった場合、死刑にされることが多いらしい。
  16. shift : 位置や方向を変える、移す。同種の別の物に換える
    I'm damned if ~ : 断じて~しない、そんなことあるもんか
  17. come through : 通り抜ける、通り過ぎる、突き抜ける。やり遂げる、成し遂げる。生き延びる、生き抜く。切り抜ける、耐え抜く


 2013年のアルバム "Matangi" より。M.I.A. が幼少期を過ごしたスリランカは仏教国であり世界初の女性首相が生まれた国でもあるということで、女性の社会的地位は低くないそうです。しかし、インドのヒンズー教思想の性差別やカースト制度の社会階層差別に象徴されるように第三世界ではまだ女性の地位が低くいろいろな社会的差別が根深く残っている国が多いようです。
 そして、この歌で批判の標的とされているのはサウジアラビアの女性差別であるようです。女性の社会的自立を阻むために車の運転が法的に禁止されており、婚外交渉に対する刑罰の厳しさはもとより、女性の行動にはさまざまな慣習的規制があるそうです。冒頭の動画での M.I.A. は「女たちよ、自立せよ。今だ馬に乗って古臭い考えに囚われている男たちを置き去りにして、自らハンドルを握り、人生を駆け抜けろ」と呼びかけているように見えます。ただし、この歌詞は表面上、bang や blow など性的な表現が目立ち、また自らをビッチと呼ぶなど自分を露悪化または戯画化しているところがあり、聞き流しているとそのような政治社会的主張に気が付かない人もいるかもしれません。

Fields Of Gold

2016年02月21日

Fields Of Gold : Sting




You'll remember me when the west wind moves upon the fields of barley *1
あなたは私を思い出すでしょう。西風が大麦畑を揺らす春に
You'll forget the sun in his jealous sky as we walk in fields of gold *2
あなたは嫉妬の空の太陽を忘れるでしょう。二人で黄金の世界を歩いていれば

So she took her love for to gaze awhile upon the fields of barley *3
かくして女は、大麦の畑を眺めようと恋人の手をたずさえた
In his arms she fell as her hair came down among the fields of gold
黄金の畑で男の腕にいだかれ、女の髪はほどけた

Will you stay with me, will you be my love among the fields of barley?
ずっと一緒にいてくれる? 私の恋人でいてくれる? この大麦畑に囲まれて
We'll forget the sun in his jealous sky as we lie in fields of gold
嫉妬の空の太陽なんて忘れましょう。私たちが黄金の世界で寝転んでいる間は

See the west wind move like a lover so upon the fields of barley *4
あの西風を見て。まるで恋人がするみたいに、大麦の畑を揺り動かしている
Feel her body rise when you kiss her mouth among the fields of gold
彼女の体を感じる。あなたにキスされると私の体も浮き上がる。あの黄金色の大麦と同じ

I never made promises lightly and there have been some that I've broken
何度か破ったこともあったけれど、決して軽々しく約束したわけじゃない
But I swear in the days still left we'll walk in fields of gold *5
でも、ここに誓う。残された日々、黄金の世界を二人で歩く
We'll walk in fields of gold
黄金色の世界を二人で歩く

Many years have passed since those summer days among the fields of barley
あの大麦畑での夏の日々から長い年月が過ぎた
See the children run as the sun goes down among the fields of gold
見て。子供たちが夕暮れの黄金色の畑の中で走っている
You'll remember me when the west wind moves upon the fields of barley *6
あなたは私を思い出すでしょう。西風が大麦畑を揺らす春に
You can tell the sun in his jealous sky when we walked in fields of gold
あの嫉妬の空の太陽に伝えて。私たちが黄金の世界を歩いていた頃のことを
When we walked in fields of gold, when we walked in fields of gold
私たちが黄金の世界を歩いていた頃…


備考
  1. ※ユーラシア大陸の西岸に位置する西ヨーロッパでは、暖流である北大西洋海流に温められた偏西風により、一年中暖かい西風が吹いている。そして、ボティチェリの『ヴィーナスの誕生』や『春』にも描かれたギリシャ神話の西風の神ゼビュロスに象徴されるように、古来、暖かい西風は春の訪れを告げる優しい風としてとらえられてきた。
    ※大麦は、秋に播種して翌春に収穫する秋蒔き種と春に播種して初夏に収穫する春蒔き種がある。両方を栽培している土地であれば、黄金に色づいた大麦の姿が年二回見られることになる。従って、冒頭のこの一行は、1.春→初夏、2.春→春、3.初夏→春、3.初夏→初夏の四種類の時間の経過が成り立ち得るが、西風が春を象徴する風だとすると西ヨーロッパ人には 2 か 3 がイメージされやすいのではないだろうか。そして最後の連の初めに「あの大麦畑での夏の日々」とあることから、特に「3.初夏→春」がふさわしいのではないかと思う。それで訳文に「春に」という言葉を入れたが、これは全くの想像であり直訳では「揺らす頃に、揺らす時に」となる。
  2. ※前行の定冠詞付きの "the fields" は現実世界、現実的存在を示し、ここの無冠詞の fields は精神世界、観念的存在(イメージの拡がりとしては天上界も含意されているように思える)を示しているのだろう。
    ※ "his jealous" の his は直近の sun を指すと解するのが妥当だろうが、この歌詞では "the west wind" が男性、"the fields of barley" が女性の比喩として使われているので、"the west wind" を指すのかもしれない。そのいずれにせよ、jealous は二人の関係を阻むものを暗示している。具体的には書かれていないが、三角関係的な男か女、二人の関係に反対する親族、宗教や習慣他諸々の環境的な障壁あるいは兵役による別離などが想像できる。しかし、この歌詞にはかすかに「死」のイメージが込められているので、この「嫉妬」は二人を死によって引き裂き運命を司る「天上界や神的存在」が最も強く想像できるのではないだろうか。
  3. ※ "for to" は11世紀頃から使われていた古い形の不定詞で、現代でも方言として使われるらしい。
    awhile : しばらく、少しの時間。(文語的表現)
    ※2014年に出版された"The Art of Noise: Conversations With Great Songwriters"(by Daniel Rachel)というインタビュー集に次のような言葉がある。
    ―― "Fields of Gold" には古風な表現の歌詞がありますね。"So she took ~"
    スティング : 僕は詩に許される文法的な破格を使うことがあるんだ。(ここでは)時代を超えた観念、まるで16世紀に書かれた歌であるかのような観念を作り出したかったんだ。
    <http://www.songfacts.com/detail.php?id=1684>
    ※つまりスティングはこの2行だけを三人称の神の視点にすることで「これは二人の男女の古い物語である」というイメージを歌詞全体に付け加えたかったのだろう。
  4. 2007年に出版された "Lyrics by Sting" という本にスティングはこの歌について次のように語っている。「イングランドの自宅は大麦畑に囲まれていて、夏になると、風がその表面を揺り動かす様がまるで海原の金色に光る波のようで、見ていてとても面白いんだ。そして、この景色には、性の生得的な何か、何か根源的なものがある(と思った)…まるで風が大麦と愛を交わしているような。恋人たちはここで約束をした。そして、きっと、季節が毎年決まって巡り来ることの安心感によって彼らの絆は強められるんだ。(直上と同じURL参照)
  5. ※「残された日々」という表現は微かに「死」を暗示させる。
  6. ※この一行は冒頭と全く同じ文だが、その内容は大きく異なっている。冒頭は「あなたはこれから先私を忘れることはできない。あなたと私は一緒になるだろう」と言っており、ここの一文は「私はあなたのいる世界を離れてしまった。あなたはこれから先私を想像の世界でしか感じることができない」と言っているように見える。


 1993年のアルバム "Ten Summoner's Tales" に収録。
 この翻訳に際して、次のサイト様の解説を参考にさせていただきました。このブログで翻訳をする際は、できるだけ他の方の翻訳は見ないようにしているのですが、たまたま検索にヒットした次のサイト様の解説が丁寧で分かりやすく見事であったため、自分が翻訳する前につい読み込んでしまいました。この歌詞について深く理解したい方は、私のブログの訳文を読む前に、リンク先の解説と訳文を読まれることをお奨めします。
 Lady Satin's English Project(http://ladysatin.exblog.jp/20801530

 なお、このブログに掲載した和訳は、若い男女の出会いから長い連れ添いの末の死別までを描いたものだろうと想像して訳してあり、一人称を女性と規定し、死んだ女が生きている男に語りかけているという体裁をとっています。ただし、これは恣意的なものなので解釈によっては一人称を男性と規定することもできますし、二人の仲を阻害しようとするものが死ではない他の物という解釈も成り立つだろうと思います。

Ice Cream Man

2016年02月13日

Ice Cream Man : Tom Waits




Click by your house about two forty-five *1
2時45分頃あんたの家の前に来ると、俺の体にスイッチが入るんだ
with sidewalk sundae strawberry surprise *2
歩道からストロベリーサンデーの贈り物さ
I got a cherry popsicle right on time *3
サクランボの棒アイスも時間きっかりに持って来るぜ
I got a big stick, momma, that will blow your mind *4
ビッグスティックはきっとあんたをくらくらさせるよ

※ Cause I'm your ice cream man, I'm a one-man band, yeah
だって、俺はアイスクリーム屋だから。俺は一人楽団だから
And I'm your ice cream man
俺はあんたのアイスクリーム屋なんだ
Baby, I'll be good to you ※
なあ。あんたをきっと喜ばすぜ

If you missed me in the alley, baby, don't you fret *5
裏通りに俺を見失っても、大丈夫だ。やきもきするなよ
I'll be coming back around and don't forget
戻って来るから。忘れやしないから
When you're tired and you're hungry and you want something cool
あんたが退屈な時、腹が減ってる時、冷たいものが欲しい時
You know I got something better than a swimming pool
水遊びのプールなんかよりずっといいものを持って来てやるよ

※~※

Well if you see me coming, you ain't got no change *6
俺が来た時、小銭がないからって
Don't worry baby, it can be arranged *7
気にすることはないよ。手筈は整ってる
Show me you can smile, just for me
あんたの笑顔を見せてくれ。俺のために
And I fix you with a drumstick, I'll do it for free *8
ドラムスティックアイスであんたを元気にしてやる。ただでやってあげるよ

'Cause I'm your ice cream man, and I'm a one-man band
だって、俺はアイスクリーム屋だから。俺は一人楽団だから
And I'm your ice cream man
あんたのアイスクリーム屋なんだ
I'll be good to you
きっとあんたをきっと喜ばすぜ

I'm your ice cream man
And I'm your ice cream man


備考
  1. click : カチッ(カチリ)と音が鳴る。ピンとくる、ふと分かる。異性と意気投合する、異性にピピッとくる。人とウマが合う、しっくり行く
    ※ click の自動詞としての語感は「パチリという音がなる→スイッチが入る→瞬間的に何かを感じる」という感じらしい。ここでの使い方はよく分からないが「あんたの家の前に来ると自動的に俺の体が反応する」という意味だろうと想像して訳した。
    click one's fingers : 指をパチッと鳴らす
  2. surprise : 驚かす(驚く)こと。予期しないこと、思いがけないこと。思いがけないお祝い(パーティー・贈り物)
  3. Popsicle : ポプシクル。棒付きアイスキャンディー。ブランド名だが同種のものの普通名詞としても使われる。
  4. Big Stick : ポプシクルブランドの商品名
    blow a person's mind : 麻薬・音楽などが興奮させる、恍惚にさせる。人の頭をくらくらさせる
  5. fret : いらいらする、やきもきする、思い悩む、赤ん坊がむずがる
  6. ain't got no = don't have no = don't have
  7. arrange : きちんと並べる、整える、配置する。前もって準備・用意・手配・お膳立てする。問題などを調停する、決着させる。
  8. fix : 修理する、病人を回復させる、怪我を治す、狂っているものを正す、固定する
    drumstick : 打楽器のばち。調理した鶏・アヒル・七面鳥の脚。チョコとナッツが乗ったコーン型のアイスクリーム(商品名)


 1973年のデビューアルバム "Closing Time" より。ただし、冒頭の動画は1991年に発売された "The Early Years, Volume One"(デビュー前の録音曲を集めたアルバム)に収録された音源です。猥雑な歌詞とそれに相反する美しい旋律の組み合わせがとても魅力的です。



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