気に入った洋楽の歌詞を和訳しています。

Avalanche : Leonard Cohen



I stepped into an avalanche, it covered up my soul *1
私は雪崩に足を踏み入れ、魂をおおわれた
When I am not this hunchback that you see, I sleep beneath the golden hill *2
このような背中の曲がった姿でなければ、黄金の丘の下で眠るだろう
You who wish to conquer pain, you must learn, learn to serve me well *3
痛みを克服したいのなら、私のよき僕たることを学べ

You strike my side by accident as you go down for your gold *4
お前たちは意図せず私の脇腹を刺し貫く。黄金を求めて落ちて行く際に
The cripple here that you clothe and feed is neither starved nor cold *5
お前たちが着物と食べ物を恵む不具者は、餓えにも寒さにも苦しんでいない
He does not ask for your company, not at the centre, the centre of the world *6
彼はお前たちの友だちになりたいと頼んではいない。(お前たちは)世界の中心ではないのだ

When I am on a pedestal, you did not raise me there *7
仮に私が台座の上にいたとしても、お前たちは私を崇めはしないだろう
Your laws do not compel me to kneel grotesque and bare *8
しかし、お前たちの掟も、私に裸で奇怪な形をして跪かせることはできない
I myself am the pedestal for this ugly hump at which you stare *9
私自身が台座なのだから。お前たちが崇めるこの醜いらくだの瘤の

You who wish to conquer pain, you must learn what makes me kind
痛みを克服したいのならば、何が私を寛大にするのかを学べ
The crumbs of love that you offer me, they're the crumbs I've left behind *10
お前たちが私に捧げるパンくずのような愛は、私が食べ残したパンくずだ
Your pain is no credential here, it's just the shadow, shadow of my wound *11
お前たちの痛みは信用のおけるものではない。それは、ただ私の傷の影にすぎない

I have begun to long for you, I who have no greed *12
私はお前たちの存在を求めてしまったが、私は貪欲なのではない
I have begun to ask for you, I who have no need *13
私はお前たちに頼みごとをしてしまったが、私は必要としているわけではない
You say you've gone away from me, but I can feel you when you breathe
お前たちはすでに私から離れたと言うが、私はお前たちの息を感じられる

Do not dress in those rags for me, I know you are not poor *14
私の前でぼろを着るのはやめろ。私はお前たちが貧しくないのを知っている
You don't love me quite so fiercely now when you know that you are not sure *15
お前たちはそれほど強くは私を愛していないのだ。お前たちが確信を持てないのならば
It is your turn, beloved, it is your flesh that I wear
今度はお前たちの番だ。お前たちの肉体に私が宿るのだから


備考
  1. avalanche : なだれ。雨あられと降りかかるもの。殺到
  2. hunchback : せむし、猫背の人。十字架を背負わされたイエスの暗喩か?
    gollden hill : シオンの丘=神殿の丘はユダヤ教の神殿のある土地であり、またイエスが埋葬された場所。紀元前10世紀に建てられたエルサレム第一神殿は紀元前587年にバビロニアにより破壊され、その後再建された第二神殿も西暦70年にローマにより破壊される。7世紀にイスラム教のモスクが建てられシオンの丘はユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地となる。11世紀~13世紀には聖地奪還を期すキリスト教十字軍とイスラムとの間で多くの血が流される。20世紀のイスラエル建国によりこの地は再び戦争を象徴する地となり今も解決の道は見出せない。
    ※ただし、この golden hill が神殿の丘を指すのかどうかは不明。 
  3. who :(~する)その人、(~する)人は誰でも → ここでは仮定を示す接続詞的に使われているのではないか
    conquer : 征服する、攻略する、激情等を抑える、習慣等を打破する、困難等を克服する
    serve : 仕える、奉仕する、尽くす、~の役に立つ、~の目的にかなう、~の要求を満たす
  4. side : イエスは脇腹を槍で刺し貫かれて死ぬ
  5. cripple : 肢体不自由者、いざり、ちんば、不具者
    clothe : 衣服を身に着ける、人に衣服を支給する
    starve : 餓死する、飢えに苦しむ、凍死する、極寒に苦しむ
  6. company : 交際、交わり、話し相手(になること)、交友、仲間、友だち
  7. pedestal :(彫像などの)台、基台、台座
    set sb on a pedestal :(人を)たてまつる、尊敬する、あがめる
    ※文法が分からないが、[When 現在形. you 過去形] を仮定法過去的に解した
  8. compel : 強いて(無理に)~させる、従わせる、服従させる、強要する
    kneel : ひざを曲げる、ひざまづく
    grotesque : 人間・動物・植物の空想的な形象を組み合わせた装飾芸術の様式。怪奇主義
  9. hump : らくだ等の(背)こぶ、くだらぬ奴、くず
  10. crumb : パンくず、小片、わずか、パン粉
    offer : 提供する、申し出る、差し出す、ささげる、供える
    leave behind : 置き忘れる、置き去りにする、あとに残す、(場所等を)あとにする・去る
  11. credential : 信用証明書、人物学業証明書
  12. long for : 思い焦がれる、あこがれる、熱望・切望する
  13. ask for : 請う、請求する、~を要する
  14. rag : ぼろ、ぼろきれ、おんぼろの服
  15. fierce : 荒々しい、獰猛な、すさまじい、猛烈な、(風雨などが)荒れ狂う、(痛みなどが)激しい
    when : ~ならば、~の後に、~にもかかわらず、たとえ~だからといって

 leonard cohen songs of love

 1971年のアルバム Songs of Love and Hate より。
 とても分かりにくい歌詞です。男女の恋愛に絡めて訳そうと努めてみたのですが、難しくてあきらめました。
 翻訳の便宜上 I を神またはイエス、you を人間一般としていますが、解釈の趣旨は聖地シオンの丘の歴史にあります。3つの宗教の聖地として、また地政学上の要衝として、人間の争いの焦点となってきたこの土地を描くことで人間と宗教の愚かさを言いたいのではないかと勝手に解釈しました。宗教的な暗喩が随所に使われているので、聖書に通じている人が読めばもっと深い解釈の翻訳ができるのだろうと思います。
 3行6連が英詩の形式に則っているのかどうかは知りませんが、各連の行末はすべて脚韻を踏んでいます。
 どなたか恋愛の歌として翻訳できる方がいたら、教えてください。

Comments 2

ざいお  

素晴らしい解説に感激しました。

この詩はユダヤ教とキリスト教の神、また彼の提示する真理から離れていく聖職者と信徒に対するイエスの嘆きという解釈以外にないと私も思います。
ユダヤ教徒のコーエンが度々キリスト教的なテーマ
を詩に持ち込むというのは興味深いですが、どちらか一方への偏執は真の信仰ではないということでしょうか。

「私の前でぼろを着るのはやめろ。私はお前たちが貧しくないのを知っている」
一連のロシア文学にみられる教会に対する不信と厭世観を思い起こしますが、この詩で最も重要な節だと思います。
自身の強い信仰と宗教に対する嫌悪の中で生きる彼だからこその歌ですね。
「Anthem」とは好対照な曲だと思います。

2014/02/21 (Fri) 22:11 | EDIT | REPLY |   
Kalavinka  
ざいお 様

 お返事が遅れ申し訳ありません。
 レナード・コーエンは日本人の僧侶に本格的に禅宗を学んだそうですので宗教に深い思い入れのある人なのでしょう。そして彼のいくつかの歌詞を翻訳した経験から判断するに、仰る通り彼は宗教に対して相反する二つの思いを抱いているように感じます。私自身は何の信仰も持ちませんが宗教の功罪に関心があるので彼の作る歌詞はとても興味深いと思っています。
 ただ、この歌詞については翻訳するのが精一杯で実はあまり深く考えていませんでした。宗教的誠実から離れていく聖職者・信徒、教会に対する不信など具体的な事柄を挙げていただいて、この歌詞の趣旨がよりよく分かったような気がします。
 とても参考になる、また心のこもったコメントをありがとうございました。
 

2014/02/24 (Mon) 07:14 | EDIT | REPLY |   

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