Cloudbusting

2012年05月27日

Cloudbusting : Kate Bush




I still dream of Organon *1
今でもオルゴノンの夢を見るよ
I wake up cryin'
泣きながら目覚めるんだ
You're making rain
あなたは雨を降らそうとしている
And you're just in reach
あともう少しだ、というその時に
When you and sleep escape me *2
あなたと眠りは僕の前から消え去る

You're like my yo-yo
あなたは僕のヨーヨーみたいだ
That glowed in the dark
暗闇に光を放っていた
What made it special
特別なものだった
Made it dangerous
そして危険なものだった
So I bury it
だから僕はそれを埋める
And forget
そして忘れる

But every time it rains
でも雨が降るたびに
You're here in my head
あなたは僕の頭の中に現れる
Like the sun coming out
太陽が出てくるように
Ooh, I just know that something good is gonna happen
分かるんだ。何かいいことが起きようとしている
And I don't know when
何時なのかは分からないけれど
But just saying it could even make it happen
ただ言えるのは、それがきっと起きるということ

On top of the world
この世の頂から
Looking over the edge *3
その果てまで見渡す
You could see them coming
あなたの目に彼らが来るのが映った
You looked too small *4
あなたはとても小さく
In their big, black car
彼らの大きく黒い車の中では
To be a threat to the men in power *5
権力者たちを脅かすような存在には見えなかった

I hid my yo-yo in the garden
僕はヨーヨーを庭に隠したけれど
I can't hide you from the government
あなたを政府機関から隠せなかった
Oh, god, daddy
ああ神よ。父さん
I won't forget
僕は忘れない

'Cause every time it rains
雨が降るたびに
You're here in my head
あなたは僕の頭の中に現れる
Like the sun coming out
太陽が出てくるように
Ooh, I just know that something good is gonna happen
分かるんだ。何かいいことが起きようとしている
And I don't know when
何時なのかは分からないけれど
But just saying it could even make it happen
ただ言えるのは、それがきっと起きるということ

It's you and me, daddy
あなたと僕なんだ。父さん

E-yeah yeah yeah yeah yo
そうだよ

And every time it rains
雨が降るたびに
You're here in my head
あなたは僕の頭の中に現れる
Like the sun coming out
太陽が出てくるように
Ooh, I just know that something good is gonna happen
分かるんだ。何かいいことが起きようとしている
And I don't know when
何時なのかは分からないけれど
But just saying it could even make it happen
ただ言えるのは、それがきっと起きるということ

Ooo-ohh, just saying it could even make it happen
きっと起きるんだ

I'm couldbusting daddy
僕が雲を蹴散らしてるんだ。父さん

Your son's coming out
あなたの息子の登場だよ


備考
  1. Organon : 1941年、米メーン州につくった研究所をライヒはオルゴノン(オーガノン)と名づけた。
  2. escape : [他] 追跡をまく、はぐらかす、あやうく免れる、注意等を免れる、記憶を逸する
    His telephone number escapes me. 彼の電話番号が思い出せない
  3. edge : 刃、鋭さ、縁、へり、端、果て、丘、稜
    over the edge : 気が狂って
    ※ウィリアム・ライヒは晩年パラノイアだと診断されていた。
  4. ※この too は *5 の to に掛かっているように見える
  5. threat to ~ : ~を脅かすもの


 ケイト・ブッシュ(1958年、英ロンドン生まれ)の1985年のアルバム "Hounds of Love" より。ピーター・ライヒが書いた父親の回想録 "A Book of Dreams" を読んでインスピレーションを受け作った歌だそうです。
 歌詞中の「あなた」はウィルヘルム・ライヒ(1897-1957)を指しています。500年続いたハプスブルグ帝国末期のオーストリアのユダヤ人家庭に生まれたライヒは、若い頃からフロイトの優秀な弟子として活躍した精神分析家でした。後、社会主義に傾倒し、移住したベルリンでドイツ共産党に入党し、精神分析と共産主義を結び付けようと努めます。ナチスを批判したこともあって、デンマーク、ノルウェーへと亡命し、1939年にアメリカへ渡りました。この頃から彼の関心は生化学、物理学に次第に移り、オルゴンという生命エネルギーを発見したと主張するようになります。オルゴン集積器なるもので癌患者の治療をしたり、クラウド・バスターなるもので宇宙人と戦ったりしていたようです。クラウド・バスターは黒い「死のオルゴン雲」を散らし払うために作られたのですが、副作用として雲を集めることもできたそうです。
 1954年10月、ライヒは米東部のメーン州から4000キロも離れたアリゾナの砂漠まで降雨実験に向かいます。翌年3月にはカリフォルニアに移り4月までの計6ヵ月にわたる実験でした。その後、以前から米食品医薬品局から命令されていたオルゴン集積器の販売中止やパンフの出版停止等に従わなかった彼は起訴され、1956年に懲役2年の判決を受けます。そして、翌年4月に収監され、半年後に心臓発作で急死します。
 ライヒはフロイト派の精神分析学者として高名ですが、後年オカルトに走ったこともあり、一般的には似非科学者と評価されるのでしょう。1950年前後のアメリカでもセックスカルト的な新興宗教とみなされていたふしもあります。しかし、彼の波乱万丈の人生や飽くなき探求心にはどこか惹かれるものを感じます。13歳の時に母親が家庭教師と関係しているのを見てしまい、それを父親に告げ、その結果母親は自殺します。そして、4年後には父親も自殺のような死に方をします。彼は独善的、自己中心的な性格であったらしく、周りの精神分析家たちから疎まれ、師のフロイトからも嫌われ、ドイツ共産党から除名され、精神分析学協会からも追放されます。嫉妬深く癇癪もちで浮気性であった彼は、内縁も含めると4人の妻にも逃げられるのですが、50歳近くになって生まれた息子のピーターをとても可愛がり、二人の仲はとても良好であったそうです。ピーター・ライヒの本を読んでいないので詳細は知りませんが、アリゾナへの降雨実験には当時10歳の彼も連れて行っています。
 フロイトの精神分析学が現代精神医学でどのように評価されているか知りませんが、無意識を発見あるいは理論化した彼の業績は極めて偉大なものだと思います。しかし、無意識の力を過大視するあまり意識の問題をないがしろにしているように見えます。性欲への過大視も同様です。ライヒはこれらフロイトの欠点とも言える部分をさらに発展させ、ある意味戯画化してしまったようにも思えます。ただし、死の衝動など悲観的理論に次第に傾倒していったフロイトと違い、ライヒは終生楽天的で性的解放により人間は満ち足りた生を送ることができると信じていました。両者のこの違いは性格の違いなのか、理論的なものなのか、興味深いところです。



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