I Shot The Sheriff

2012年09月13日

I Shot The Sheriff : The Wailers




I shot the sheriff
保安官は撃ったよ
But I didn't shoot no deputy, oh no *1
だが副保安官なんか撃っちゃいない

Yeah! All around in my home town, they're tryin' to track me down
町じゅうをくまなく回って、奴らは俺を追ってる
They say they want to bring me in guilty
奴らは俺を犯人に仕立てたいんだ
For the killing of a deputy, for the life of a deputy *1
どこかの副保安官を殺した容疑、そいつの命の代償のため
But I say
だが、違うんだ

I shot the sheriff
俺はあの保安官は撃った
But I swear it was in selfdefence
だが誓って言う。あれは正当防衛だ
I say: I shot the sheriff - Oh, Lord
確かに保安官は撃ったよ。ああ、神様
And they say it is a capital offence *2
奴らはそれが死刑に値する犯罪だと言う

Sheriff John Brown always hated me
保安官のジョン・ブラウンはいつだって俺を憎んでた
For what, I don't know
なぜだか分からない
Every time I plant a seed *3
俺が種をまくたびに
He said kill it before it grow, he said kill them before they grow
奴は言うんだ。育つ前に枯らしてやるって
And so
そんなことばかりさ

Read it in the news
事件は新聞で読んだ
Where was the deputy?
だが、どこに副保安官なんかがいたんだ?
I say: I shot the sheriff
保安官は撃ったさ
But I swear it was in selfdefence
誓って言うが、正当防衛だ

Freedom came my way one day, and I started out of town *4
ある日、自由が手に入って俺は町を出ようとしたんだ
All of a sudden I saw sheriff John Brown
突然俺の目に保安官のジョン・ブラウンが飛び込んできた
Aiming to shoot me down
俺を撃とうと狙ってる
So I shot - I shot - I shot him down and I say
だから俺は撃った。撃ったよ、奴を撃った
If I am guilty I will pay
もし俺に罪があるなら償おう

But I say
だが
I didn't shoot no deputy
副保安官なんか撃っちゃいない
I shot the sheriff. I did
確かに保安官は撃ったさ
But I didn't shoot no deputy
でも副保安官は撃ってないんだ

Reflexes had got the better of me *5
反射的だったんだよ
And what is to be must be *6
しかたがなかったんだ
Every day the bucket a-go a well, one day the bottom a-go drop out *7
毎日バケツを井戸で使えば、いつかは底が抜けるってことさ

I - I - I - I shot the sheriff
俺は、俺は保安官を撃った
But I didn't shoot no deputy, yeah, no
だが、副保安官なんて撃っちゃいない。断じて


備考
  1. sheriff : 保安官   deputy sheriff : 副保安官
    ※ the sheriff は定冠詞付きで後のジョン・ブラウンを指しているのに対し、a deputy は不定冠詞で歌い手が知らない誰かであることを示唆している。
  2. capital : 最大限の、大文字の、主要な、第一級の
    capital offence : 死刑に値する犯罪
  3. ※ plant a seed は直接には大麻を育てることを指すのだろうが「俺が何か事を起こすたびに邪魔をする」という意味だろう
  4. come a person's way : 起こる、身に降りかかる、手に入る、うまく運ぶ
  5. get the better of : 勝つ、出し抜く、感情などが~を圧倒する
  6. What must be, must be. [諺] なるようになる
  7. a- : ジャマイカ・クレオール語で、動詞の前に置かれ「be ~ing」を示すアスペクト助詞。a-go は未来時制を示す。
    ※この1行は、虐げられ搾られ続ける民衆の我慢にも限度があると言いたいのではないか。


 1973年のアルバム Burnin' に収録。1670年にイギリスの植民地となったジャマイカにはアフリカから多くの黒人奴隷が強制移入させられ、国民の9割をアフリカ系が占めています。以来三百年にわたるイギリス支配の間、幾多の奴隷反乱が起こり、1962年にようやく独立を果たします。1945年生まれのボブ・マーリーが17歳の時です。
 ジャマイカでは独立前から労働組合を基盤とする政党が結成されており、1944年には普通選挙も行なわれてジャマイカ労働党と人民国家党の二大政党制が確立していました。独立後10年間はジャマイカ労働党が政権を握っていましたが、両党の激しい対立が続きました。当時のジャマイカの政党抗争は現代日本のそれなどとは全く違い、市街戦で死者が出るような激しいものだったようです。
 この歌の「俺」と「保安官ジョン・ブラウン」は、例えばこれがアメリカの話ならば「黒人貧困層対白人警官の対立」という分かりやすい図式が描けるのですが、警察=政府=政党の構成員はおそらく黒人なのだろうと思えるので、事はそう単純ではありません。イギリス帝国主義からの独立を果たして自らの国を作ったジャマイカ国民は、イギリスやアメリカ、キューバなどの様々な内政干渉を受けながらも、政治的には白人の支配から脱却できていたはずなのです。ところが、深刻な貧困からの脱却がなかなかできず、犯罪の横行、ギャングの抗争等で相当治安が悪かったようです。これは、現代にも引き継がれ、ウィキペディアによれば「2009年の殺人事件は1660件であるなど、ジャマイカは長年に渡って世界で最も殺人事件発生率の高い国の一つであり…(中略)…2000年から2009年の10年間に1900人以上が警察に殺害されている。2010年6月には麻薬王クリストファー・コークの逮捕を巡り、軍・警察とキングストン・チボリガーデン地区の住民及びギャングとの間で激しい銃撃戦が起き、乳幼児を含む76名が死亡するなど、ギャングや政党間の闘争も苛烈である」ということです。ボブ・マーリー自身も1976年にはこの政党の抗争に巻き込まれ銃撃を受けて重傷を負っています。ボブ・マーリーの信奉していたラスタファリアニズムは大麻の常習や過激なアフリカ回帰主義など、政府の秩序維持の観点からは危険なものに映ったらしく一頃激しい弾圧を受けていたそうです。この歌はそのようなラスタファリアンの視点で描かれているのかもしれません。
 歌詞の内容は、別に犯人がいる副保安官殺しの罪を着せるため「俺」を撃とうとしたジョン・ブラウンを過って撃ってしまった「俺」が、相変わらず副保安官殺しプラス保安官銃撃の容疑で追われているというものではないでしょうか。

2015.12.12 追記
 先日、この歌詞の背景に関する記述をネットで見つけました。以下の内容は文化研究者で現在はロンドン大学キングスカレッジ教授であるポール・ギルロイという人が2007年10月10日に和光大学で行なった講演に拠っています。(https://www.wako.ac.jp/_static/page/university/images/_tz0923.a09241dbf8ed34647e0a79c25dd69e1c.pdf)
 ボブ・マーリーは20代の頃何度かアメリカで生活していますが、その初めが1966年の8ヵ月間の滞在です。当時のアメリカは1964年に公民権法が成立したものの黒人と白人の対立が簡単に解消するはずもなく、各地で両者の衝突が起きていました。また、過激なブラックパンサー党が設立され、それまで主流だったキング牧師の非暴力平和主義と一線を画す「ブラックパワー」という黒人主導的思想も台頭してきた頃です。
 そのような中でボブ・マーリーはアメリカの実情を目の当たりにします。「非暴力から自己防衛目的での武力の正当な使用へ、というこの変移は、マーリーの想像力の中にしっかりと刻まれた。それは『アイ・ショット・ザ・シェリフ』の語りの中で、殺風景な感じの劇として表現されている。そこでは驚くべきことに、アメリカを背景として用いつつ、不正義のある所ならばどこで勃発してもおかしくないような抵抗が、寓話化されていたのである。保安官や保安官代理といった職階はジャマイカにはないが、マーリーが合州国で過ごした最初の夏には、アトランタやデトロイトやフィラデルフィアやその他の主要都市で暴動が頻発した。…(中略)…デュポン・ホテルでモップと箒を握って働いた時間と同様、アメリカというバビロンでの生活にあった汚らしい浅薄さにマーリーが抱いた道徳的政治的な嫌悪を、はっきりと条件づけた。」(カギカッコ内は講演からの引用。)
 つまり、この歌はジャマイカが舞台ではなく渡米時にボブ・マーリーが見聞きした出来事を背景としたものであり、登場人物はおそらくアメリカの白人警官と黒人容疑者が想定されているらしいということです。
 下のコメントを投稿してくださった方の黒人差別を主題としているという考えはおおむね正しいと思います。自分の不明も省みず失礼な物言いをしてしまったかもしれません。この場を借りてお詫び申し上げます。また、大変貴重なご意見をいただき本当にありがとうございました。



コメント

  1. 名無し | URL | -

    コメント失礼します
    僕の記憶ではこの曲の主人公は黒人で少し前に保安官代理を撃って逃げようとしたら所保安官が前に立ち塞がりこちらを撃とうとしたから撃ったんだ。っていう曲だったと思うんですがどうなんでしょう。だから「俺は保安官を撃った。保安官代理じゃなくて保安官を」っていう歌詞だったような。元々黒人差別を題材にした曲と聞きました。歌詞にもあるように黒人というだけで保安官達から度を過ぎた嫌がらせをされていて、みたいな。濡れ衣を着せられているっていう解釈もなるほど、と思いましたが。

  2. Kalavinka | URL | -

    匿名様

     コメントありがとうございます。お返事が遅くなり申し訳ありません。
     ご指摘の点につきましては、私には正確な所は分かりません。この歌の背景に関する資料的なものを読んだことがないので、記事の終わりに書いた解釈はあくまでも想像です。歌詞から分かるのは保安官は撃ったけれども保安官代理は撃っていない主人公が、おそらく両者を撃った容疑で追われているらしいということくらいです。このことだけからはこの事件の内容を正確に想像することは不可能だと思います。そして、貴方も仰っているようにこの歌詞の趣旨は主人公が警察から犯罪予備軍として不当に差別されているということだと思いますので、事件そのものの細かな経緯を知る必要性もあまりないような気がします。
     そして、もう一つの黒人差別に関することですが、これも私はジャマイカの国情を知らないため正確に答えることができません。この歌の保安官ジョン・ブラウンは白人なのかもしれませんが、白人人口が1%にも満たずほとんどが黒人と混血で占められるジャマイカでは白人警官による黒人差別という図式が成立しにくいと思い上の記事のような書き方をしたのですが、これも確信を持って書いたわけではありません。
     以上、質問に対するお答えにはなりませんでしたが、偏った内容になりがちなブログですのでこのようなコメントは有難いです。もし根拠になるような資料や事実をご存知であれば教えていただけると、このブログの他の読者の方の参考になるのではと思います。貴重なご意見有難うございました。

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