Born Free

2012年11月10日

Born Free : M.I.A.




Yeah, man made powers
人間は力を作り出した
Stood like a tower, higher and higher, hello
塔のように立ち上がった。高く、もっと高くと
And the higher you go, you feel lower, oh
でも高く上るほどに低く感じる

I was close to the end
私は終わりかけてた
Staying undercover, staying undercover *1
諜報活動に潜んで
With a nose to the ground, I found my sound *2
地面に鼻をくっつけて嗅ぎ回り、自分の音を見つけた

Got myself an interview tomorrow *3
明日インタビューがある
I got myself a jacket for a dollar *3
1ドルの上着を手に入れた
And my nails are chipped but I'm eager *4
爪が欠けてるけどインタビューは受けたい
And the car doesn't work, so I'm stuck here *5
でも車が壊れてるからここから動けない

Yeah, I don't wanna live for tomorrow, I push my life today *6
明日のためになんか生きたくない。私は今この日の人生を押し開く
I throw this in your face when I see ya, I got something to say
あなたの顔にこれを投げつけてやる。言うことがあるんだ
I throw this shit in your face when I see ya 'cause I got something to say
このクソを投げつけてあなたの顔を見てやる。言うことがあるのよ

I was born free, born free
私は自由に生まれた
Born free, born free
自由に生まれたのよ

You could try to find ways to be happier
あなたは幸せになる道を探せばいいわ
You might end up somewhere in Ethiopia *7
エチオピアのどこかで終わるかもしれないわね
You can think big with your idea
自分の思いつきがすごいと思ってればいいわ
You ain't never gonna find Utopia
ユートピアなんて見つけられないと思うけどね

Take a bite out of life, make it snappier, yeah *8
せいぜい人生を削ればいいのよ。さっさとやりなさいよ
Ordinary gone super trippier *9
日常なんてなくなったの。ぶっ飛んでるのよ
So I check shit 'cause I'm lippier *10
だから出しゃばりな私はこんなクソみたいなことまで気にして調べて
And split a Czech like Slovakia
チェコやスロバキアみたいにばらばらになっちゃった

Yeah, I don't wanna live for tomorrow, I push my life today
明日のためになんか生きたくない。私は今この日の人生を押し開く
I throw this in your face when I see you 'cause I got something to say
あなたの顔にこれを投げつけてやる。言うことがあるんだ
I throw this shit in your face when I see you
このクソを投げつけてやる。あなたに会ったら
'Cause I got something to say
言いたいことがあるのよ

I was born free, born free
私は自由に生まれた
Born free, born free
自由に生まれたのよ

I don't wanna talk about money 'cause I got it
お金の話なんかしたくない。だって、持ってるから
And I don't wanna talk about hoochies 'cause I been it *11
フーチーズの話なんかしたくない。だって、やってたから
And I don't wanna be that fake but you can do it
偽ものになんかなりたくない。あなたみたいな
And imitators, yeah, speak it
模倣者たちよ。何とか言いなさいよ

Oh lord, whoever you are
ああ主よ。あなたが誰だろうと
Yeah, come out wherever you are
出てきてよ。どこにいようと
And tell 'em
そしてあいつらに教えて

I was born free, born free
私は自由に生まれた
Born free, born free
自由に生まれたのよ


備考
  1. undercover : 秘密の、内密の、スパイ活動(秘密調査)に従事する
  2. keep one's nose to the grindstone : こつこつ働く、休まず懸命に働く、精を出す
    keep one's ear to the ground : 世論に注意している、社会の動向に通じている、世の中の動き・噂に注意する
    ※上記二つの常用句の誤用あるいは意図的な混用として "keep one's nose to the ground" という言い方があるらしい。意図的な場合はおそらく「犬が嗅ぎ回るように懸命に働く」というイメージで使われているらしい。この歌詞は「スパイ、犬、鼻、地面」の連想で誤用ではないように見えるが、常用句に似た言葉遣いは誤解を招きやすい。
  3. ※ got myself は「自分自身のために」という意味に加え、「got = have = 持っている」という現在形を示唆するのではなく「get = 手に入れる」の過去形であることが強調される。tomorrow なのに過去形なのは決まったのが過去であるからだろう。
  4. chipped : 茶碗・皿などの縁が欠けている
    eager : しきりに求めて、熱望して、熱心な。興味深いこと、役に立つことをすることにとても意欲的である様子。
  5. stick : 突き刺す、はめ込む、突っ込む、貼る、くっつける、動けなくさせる、立ち往生させる
  6. push : 道を押し開いて進む、目的・要求を追求する
  7. end up : 最後は~になる、最後は~に行く、結局~(すること)になる
  8. take a bite : 一口かじる・食べる
    take a bite out of ~ : ~を減らす、~から奪って減少させる
    make it snappy : さっとやる、急ぐ
  9. trippy : 麻薬でぼうっとした、ラリっている、すごくいい
  10. lippy : 出しゃばった、無礼な、無作法な、大きい唇の
  11. hoochie : 体の線を強調した服を着て濃い化粧をした誰とでも寝る女。軽蔑の対象であるが同時に羨望の対象でもあり得る。(ネット情報を総合したものなので間違っているかもしれない)


☆注意。下の動画は 危 険 です。嫌悪感を催す過度な暴力描写があるので、18歳未満の方、心臓の弱い方などは視聴しないで下さい。

      

 2009年のアルバム Maya に収録。自由を主題としていることは分かりますが歌詞の内容は明確ではありません。とくに undercover, interview, Ethiopia などの言葉が何を意図しているか分かりませんでした。ただ、自由とは何なのかを自問しているような内容だろうと思います。力を得ること、高みに上ること、お金を持つこと、奔放な生活をすること、ユートピアを探すこと、これらをすべて否定して、目の前の理不尽な現実と戦うことであると言っているようです。
 上の危険な動画は兵士の肩の星条旗から何らかのアメリカ政府批判であることは明らかでしょう。理由もなく虐殺される子どもたちと大麻やセックスに興じる怠惰で無気力な大人たち。赤毛は差別される者を、少年は抵抗する者を象徴しているように見えます。

2012.11.12 追記
 植杉さんから解釈の助言をいただき M.I.A. とこの歌について改めて調べ考え直してみました。
 エチオピアという国名については、植杉さんが仰るようにこれはアフリカ諸国の政情不安や非民主政治、民族紛争などを示すと受け取るのが妥当なように思います。それに加えて思い出すのがボブ・マーリーです。彼の信奉したラスタファリアニズムでは最後のエチオピア皇帝を神の化身として崇めます。皇帝はクーデターにより囚われた後1975年に死去、エチオピアはその後共和制になります。ハッピーになる方法、ユートピアなどの前後の歌詞と併せて考えていると、ボブ・マーリーかぶれの白人がわけもわからず黒人のアフリカ回帰主義やスピリチュアリズムにのめり込んだあげくアフリカの過酷な現実を見て途方に暮れる、という情景が思い浮かびました。
 チェコとスロバキアの分離については、政治的には共産主義一党独裁体制からの解放ととるのが妥当であり負の要素はないと思います。ただし、チェコスロバキアでは紛争はありませんが、旧ユーゴスラビアやロシアの民族紛争のきっかけは共産主義の崩壊ですから、民族国家の乱立というイメージを湧かせることはできます。
 上のPVに出てくる Our day will come(我らの時は来る)という言葉はゲール語の Tiocfaidh ár lá の英訳で IRA(アイルランド共和国軍)のスローガンです。またアメリカにおいては "アイリッシュ=赤毛でそばかす" という俗説が昔からあるそうです。そうすると投石している少年たちは IRA を象徴させているのでしょう。IRA は英政府と戦争している組織ですから、M.I.A. は米政府のみならず英政府にも喧嘩を売っていることになります。イギリスの一般市民からすれば IRA は過激派テロ組織ですから、もちろんこれをもって彼女が IRA の政治思想に共鳴していると断定するわけにはいきません。ただ、彼女の父親がスリランカのテロ組織の一員であることが事実であるならば、彼女が IRA に心情的に共感することはあり得ると思います。
 しかし、上に見てきたことを総合的に判断すると、人間が人間を差別すること、民族と民族が争うことは間違いであり、そこから解放されることこそが自由である、私たちは生まれながらにして自由なはずなのだ、と訴えている歌詞ではないかと思います。戦いは必要であるが、それが差別意識に根ざしているものであってはならないし民族主義の過度な高まりは危険である、とも受け取れます。
 ただし、英詩は脚韻を重んじるそうなので、エチオピアとスロバキアはその前後の happier, idea, snappier, trippier などに合わせるためにそれほど深く考えることなく適当に選んだのかもしれません。
 



コメント

  1. 植杉レイナ | URL | -

    Re:Born Free

    ひとつの曲から,これだけのメッセージを読み取られていらっしゃて感心しております。これがアーティストの眼に入ることがあれば,きっと感激されるのではとおもいます。

  2. Kalavinka | URL | IeOjDy9U

    植杉様

    こんばんは。
    昨日は解釈のヒントをいただきありがとうございました。とても参考になりました。貴方が仰るように、undercover は政治的活動を、interview は政治的表明の場を示唆し、M.I.A. にとって重要なものだから eager なのだろうと思います。彼女の歌詞自体多分に政治的表明であり、それを売りにすべく狙い過ぎだとの批判すらネット上で散見しました。やはり彼女の歌詞はその出自と父親を抜きにしては理解しにくいのでしょうね。
    終盤にある「模倣者」は M.I.A. がレディ・ガガを批判した言葉らしいのでここでもそれを意識しているのかもしれません。ちなみに、レディ・ガガはよく分かりません。テレビや動画サイトで見たことはありますが、歌詞を聞き取れないせいもあって、とくに興味を引かれませんでした。植杉さんはどのように評価なさるのかなあ、とふと思いました。
    一度訳したものは理解できなくても面倒でそのままにしてしまいがちなのですが、このようにご意見をいただけると考え直すきっかけになります。

  3. 植杉レイナ | URL | -

    Re:Born Free

    Lady GAGA 声も好きですが,なにしろ歌がほんとうに巧い。曲ごとに衣装やダンスを考え,全身全霊でパフォーマンスしているエネルギーも素晴らしいと感じます。女性としても尊敬できます。Cold Play『MYLO XYLOTO』4曲目Princess Of China(やはり歌詞は,いま一つ,ですけれど)のRihannaの声も好きです。蛇足になりますが,私はラヂオ主体で,音楽を聴きます。ロック番組では,AFN (日~土)00:00~02:00 『Z-Rock(Alternative Rock)』 (月~金)02:00~04:00『Adult Rock(Classic Rock)』 たまにNHK『渋谷陽一ワールド・ロック・ナウ』などです。気に入った曲があったら,山野楽器かタワレコでCDまで買います。クラシックならドヴォルザークのような土俗的な旋律やリズムが感じられるものが,気に入っていることが多いかもしれません。我ながら,めちゃくちゃな聴き方だとは思いますが,最近買ったCDは,Bobby Womack『 The Bravest Man In The Universe 』とLinkin Park『 BURN IT DOWN』です。

  4. Kalavinka | URL | IeOjDy9U

    植杉様

    こんばんは。たしかに「めちゃくちゃ」かもしれませんが、音楽が本当にお好きだという気持ちが伝わってきました。コメントを読んでふとレディ・ガガは同性に好まれるタイプのアーティストなのではないかと思いました。M.I.A. は攻撃的な歌詞の反面PVは男に媚びているように見えます。レディ・ガガのPVは肉体を強調しているわりには異性を意識している面が少なく芸術を追求しているように見えます。私はもともとヴィジュアルに興味がないのでレディ・ガガの良さを分かる前に遠ざけていたのかもしれません。今度いろいろ聞いてみようと思います。
    昔よく聞いていたラジオが渋谷陽一さんとピーター・バラカンさんの番組でした。この二人に教わったことはとても多いです。クラシックはほとんど聞きませんから有名なものしか知りませんが、ドヴォルザークは私も好きです。スメタナのモルダウなども好きですが「我が祖国」を通して聞くと眠くなってしまいます。
    たくさん書いてくださって本当にありがとうございました。最近の新しい音楽についてまたいろいろ教えてください。

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