Raise Hell

2012年11月28日

Raise Hell : Brandi Carlile




I've been down with a broken heart since the day I learned to speak
私は沈み、心砕かれてきた。言葉を覚えた日からずっと
The devil gave me a crooked start when he gave me crooked feet *1
悪魔が私にゆがんだ始まりをもたらした。曲がった足を与えられた時だ
But Gabriel done came to me and kissed me in my sleep *2
だがガブリエルが現れ、眠りの中の私にキスをした
And I'll be singing like an angel until I'm six feet deep *3
だから私は天使のように歌い続ける。6フィートの地下に埋められるまで

I found my self an omen and I tattooed on a sign *4
私は自分の中に予言を見つけ、その印に墨を入れた
I set my mind to wandering and walk a broken line *5
私は心を決めた。道をはずれよう、途切れ途切れの道を歩こうと
You have a mind to keep me quiet and although you can try
お前は私を静めようとするが、好きにすればいい
Better men have hit their knees and bigger men have died *6
より善き者たちは自分たちの膝を撃ち、より偉大な者たちは死んでしまった

I'm gonna raise, raise hell *7
起こそう。地獄を呼び起こそう
There's a story no one tells
誰も語らない物語がある
That you gotta raise, raise hell
だからお前が起こさねばならない。地獄を呼び起こさねば
Go on now ring that bell
さあ行け。あの鐘を鳴らせ

It came upon a lightning strike and eyes of bright clear blue *8
突然の雷光に輝くお前の両目は青く澄んでいた
I took that tie from around my neck and gave my heart to you *9
私は首に巻かれたタイをはずし、お前に私の心を与えた
I sent my love across the sea and though I didn't cry
私は海を越えて愛を送ったが、泣くことはなかった
That voice will haunt my every dream until the day I die
ただその声がいつも私の夢につきまとう。死ぬ日まで

I'm gonna raise, raise hell
起こそう。地獄を呼び起こそう
There's a story no one tells
誰も語らない物語がある
That you gotta raise, raise hell
だからお前が起こさねばならない。地獄を呼び起こさねば
Go on now ring that bell
さあ行け。あの鐘を鳴らせ

I dug a hole inside my heart to put you in your grave
私は心に穴を掘り、お前の墓としてお前を埋めた
At this point it was you and me, and mama didn't raise no slave *10
ここにいるのはお前と私だった。そして私の母は奴隷を育てたわけではない
You took my face in both your hands and looked me in the eye
お前は両手で私の顔を抱き、見つめた
And I went down with such a force that in your grave I lie
私は圧倒的な力に服し、お前の墓に横たわった

I'm gonna raise, raise hell
起こそう。地獄を呼び起こそう
There's a story no one tells
誰も語らない物語がある
That you gotta raise, raise hell
だからお前が起こさねばならない。地獄を呼び起こさねば
Go on now ring that bell
さあ、行け。あの鐘を鳴らせ


備考
  1. crooked : 物事が不正な、心の曲がった、腹黒い、ゆがんだ、湾曲した
    ☆ crooked foot は「偏見や差別」を示唆すると思われる。
  2. Gabriel : キリスト教ではミカエル、ラファエルと並ぶ三大天使の一人。神の言葉を伝える天使で、マリアの元に現れ受胎告知をする。
  3. six feet deep = six feet under : 埋葬されて、死んで。欧米の伝統的な埋葬では6フィートの地下に埋めるらしい。
  4. omen : 前兆、きざし、前ぶれ、予感、予言、予知
  5. set one's mind on : ~を心に決める
    wander : あてもなく歩き回る、道からそれる、仲間からはぐれる、脱線する、正道をそれる
    broken line : 破線
  6. ☆地に膝をぶつける、限界に達する→屈する、のイメージからこの1行は「失敗する、限界を迎える、諦める」という解釈もできそうである。
  7. raise : 上げる、立てる、起こす、生じさせる、出現させる
  8. come (up)on : 思いがけず出会う、偶然見つける、災難等がふりかかる、心に湧く
    come on : 上記の他に、来る、進軍する、攻めて来る、始まる、登場する、雨・雪が降り始める
  9. ※ took that tie from は社会的な見せかけの仮面を取り去って本来の自分を見せるという意味だろうか?
    ☆あるいは、首に巻かれた社会的な束縛や規制を振り払うという意味だろうか?
  10. ☆二重否定はおそらく否定の強調。raise は「子どもを育てる、養う」


 2012年のアルバム Bear Creek より。ブランディ・カーライルは1981年、米ワシントン州生まれのシンガー・ソングライターです。
 彼女のことはサイドバーお奨めサイトの「_: ̄⋯~ふらいんhU◇Gオクトパス~⋯ ̄:_」さんで知りました。動画の彼女があまりに格好良かったので衝動的にここでも紹介したくなってしまいました。が、やはり背景知識が足りずあまりうまくいきません。おそらく恋愛とそれに関わる人生観を主題にしているように見えるのですが、細部に分かりにくいところが残りました。
 彼女は同性愛者で自ら公言しているようなのですが、そのこととこの歌詞は関係がありそうにも思えます。


2012.12.2 追記
 *6 について調べているうちにたまたま下の歌が検索にヒットしました。直接関係はないだろうと思いますが、ブランディ・カーライルはカントリー歌手なのでおそらくジョニー・キャッシュを尊敬しているでしょうし、この歌を知っている可能性は高いと思います。無理やりこじつけるとすれば、*6 の善き者はキリスト教徒を偉大な者は非キリスト教徒を指し、そのどちらでもない「私」と「お前」が地獄を呼び起こすしかないのだ、と読めなくもありません。すなわち、道をはずれたキリスト教徒が宗教的価値観の偏狭な部分を否定しているのだろうかと解釈しました。下のコメント欄でも書きましたが、キリスト教の頑固な善悪の観念に異議を唱える歌詞ではないかと今のところ思っています。大きく勘違いしているかもしれませんので、違うと思われる方はご意見をいただけると有難いです。
 私はカントリーを好んでは聞きません。ジョニー・キャッシュも名前を知るだけです。カントリーはアメリカの演歌あるいは保守の象徴で、それを好むのも保守的な政治信条、宗教観念の強い層なのだろうと無根拠に偏見を持っていました。カントリーはアメリカのルーツ音楽の一つなので、ロックもその派生の一つと考えられるのに、今までそのように意識したことがありませんでした。"Raise Hell" との関連性は別として、個人的に自分のこれまでの無知と偏見を自戒するためにも有用かと思い、ジョニー・キャッシュの歌を紹介することにします。

Big Foot : Johnny Cash




But the land was already claimed by a people when the cowboy came and when the soldiers came. The story of the American Indian is in a lot of ways a story of tragedy, like that day at Wounded Knee, South Dakota. カウボーイや兵士が来た時、この地にはすでに所有権を主張する人々がいた。アメリカインディアンの物語は、サウスダコタのウーンディドニーのように、いろいろな意味で悲劇の物語なんだ。

Big Foot was an Indian chief of the Minneconjou band
ビッグフットはミニコンジュ団の酋長だった
A band of Minneconjou Sioux from South Dakota land
ミニコンジュ団はサウスダコタのスー族に属す
Big Foot said to Custer,"Stay away from Crazy Horse"
ビッグフットはカスター将軍に言った。「クレイジーホースに近づくな」
But Custer crossed into Sioux land, and he never came back across
だがカスターはスー族に侵攻し、二度と戻って来なかった

Then Big Foot led his people to a place called Wounded Knee
その後、ビッグフットは人々をウーンディドニーと呼ばれる場所に導いた
And they found themselves surrounded by the 7th Cavalry
そこで彼らは第七騎兵隊に包囲されたのだった
Big chief Big Foot, rise up from your bed
偉大なる酋長、ビッグフットよ。病床より立ち上がれ
Minneconjou babies cry for their mothers lying dead
ミニコンジュの赤子たちが母親を殺され泣いている

Big Foot was down with a fever when he reached Wounded Knee
ウーンディドニーに着いた時、ビッグフットは高熱に倒れていた
And his people all were prisoners of the 7th Cavalry
そして仲間たちはみな第七騎兵隊に捕らわれていた
Two hundred women and children and another hundred men
二百人の女たちと子どもたち、そして百人の男たちは
Raised up a white flag of peace, but peace did not begin
白旗を掲げたが、平和が訪れることはなかった

An accidental gunshot and Big Foot was first to die
偶発的に銃が暴発され、ビッグフットが初めに死んだ
And over the noise of the rifles you could hear the babies cry
鳴り渡る銃声の向こうに、赤子たちの泣き声が聞こえる
Big chief Big Foot, it's good that you can't see
偉大なる酋長、ビッグフットよ。あなたがそれを見られないのは幸いだ
Revenge is being wrought by Custer's 7th Cavalry
カスターを殺された第七騎兵隊には復讐は正義である

Then smoke hung over the canyon on that cold December day
煙が峡谷をおおった。十一月の寒い日だった
All was death and dying around where Big Foot lay
ビッグフットが横たわるまわりはすべて死者と瀕死者ばかり
Farther on up the canyon some had tried to run and hide
峡谷の上まで逃げ、隠れようとした者もいたが
But death showed no favorites, women, men, and children died
死は選り好みをしなかった。女も男も子どもも死んだ

One side called it a "massacre", the other a "victory"
一方はこれを「大虐殺」と呼び、他方は「勝利」と呼ぶ
But the white flag is still waving today at Wounded Knee
しかし、白い旗は今日も依然としてウーンディドニーに翻っている
Big chief Big Foot, your Minneconjou band
偉大なる酋長、ビッグフットよ。あなたのミニコンジュ団は
Is more than remembered here in South Dakota land
このサウスダコタの地で決して忘れられることはない


 この歌は1890年11月29日の「ウーンディドニーの虐殺」という事件を元にしています。Wikipedia によると先住民側120人の男、230人の女と子どもに対し、米軍側は約500人。先住民は90人の兵士と200人の女、子どもが死に、51人が負傷、米軍は25人が死に、39人が負傷、だそうです。クレイジーホースは1876年のリトルビッグホーンの戦いで、カスターの第七騎兵隊を破った時のリーダーの一人で、ビッグフットは彼の甥にあたります。以下のサイトで紹介されている本によると、米軍の死傷者の多くは自分たちの撃った弾によるものだそうです。誰かが落とした銃が暴発して突然に戦闘が始まり、キャンプ地を取り囲んでいた彼らはかなり混乱して銃弾がテントの向こうにいる味方に当たったということです(http://www.folkarchive.de/bigfoot.html)。
 ジョニー・キャッシュの歌詞は、先住民側の視点から書かれているように見えますが、米軍側を一方的に悪と決め付けた調子は感じられません。悲劇の歴史を正しく後世に伝えていくべきだという主張が伺えます。


2012.12.4 追記
 「_: ̄⋯~ふらいんhU◇Gオクトパス~⋯ ̄:_」の鳩井さんから助言をいただき、いくつか訳文の誤りを訂正しました。備考欄の ☆ の部分は鳩井さんからの助言を元に追加して書き込んだものです(私の主観が混じっているので文責は私にあります)。
 鳩井さんはこのアルバムについての Brandi Carlile のインタビューを読まれていました。その知識を背景として、向こう見ずになって自身の身を滅ぼす結果となっても、立ちはだかる壁にぶつかっていこう、というある種の宣戦布告あるいは人生に対する挑戦状、という感想を持たれたそうです。また、善悪に対する価値観やセクシュアルマイノリティとしての視点も反映しているだろうと思われたそうです。ただし、深く考えた結果ではなく、聞きながらなんとなくイメージしていたとのことです。




コメント

  1. 植杉レイナ | URL | -

    Re:Raise Hell

    こんにちは,寒くなりました。毎日とても努力を続けていらっしゃいますね。
    この曲は,初めて聴きましたが,ガブリエルは〈神のお告げを伝える〉天使ガブリエルかもしれないと,なんとなく想像しています。大間違いかもしれませんので,あまり深く考えないでくださいね。

  2. Kalavinka | URL | IeOjDy9U

    植杉様

    こんばんは。地獄、天使、悪魔等の語句がありますから、やはり大天使ガブリエルなのでしょうかね。「悪魔が堕天使であり、また自ら悪徳へ誘惑する人間の心性を暗喩するものならば、私は悪魔にもなろう、地獄を蘇らせもしよう」という歌詞なのかなと思いました。世間的な悪徳が本当の悪なのか、善と悪は誰が決めるのか、と問いかけているように見えます。

  3. 植杉レイナ | URL | -

    Re:Raise Hell

    ますます努力をなさっていらっしゃいますね。
    詩の翻訳は,ほんとうに困難を極め,表出の内的動機などを思いめぐらすと,文法的に正確でなくても伝わることもあったりします。古くは,堀口大學訳詞集『月下の一群』の意訳がありますが,ポール・ヴァレリィ真っ青だろうけれど,フランス語の教科書にはならなくても,意外に受けたりしました。『およげ!対訳くん』という,英語の歌詞を和訳するサイトはご存知ですか。そちらは意訳もありの独自のスタイルを貫いていらっしゃるのですが, endeavorとして,『工場日記』さんと比肩する感じです。

  4. Kalavinka | URL | IeOjDy9U

    植杉様

    困難……そうですね。日本語の現代詩などでも理解できないものの方が多そうです。このブログは英語を理解することを主目的としており、他人に発表するというより自分用のノート的性格の強いものです。そのため、訳文はできるだけ直訳になるよう心がけ、独自の解釈には補足文をつけるようにしています。通常、1.辞書で英語を翻訳する、2.分からない英語の言い回しをネットで検索、3.作詞者の意図を考える、4.背景知識をネットで探す、という手順で記事を書いているのですが、だいたい1と2の段階で力尽き、そのまま投稿することも多いです。
    その方のサイトは以前少し拝見したことがありますが、今日あらためて読ませていただきました。このブログとは方向性が違いますが、英語の理解、音楽の知識、日本語の表現力ともに私などよりだいぶ優れています。たとえ「努力」という観点からであってもここと比べるのは少しおこがましいように思いました。
    ちなみに、歌詞和訳サイトをやっている方たちは英語に堪能ではない人が多いのではないかと思います(例外はあります)。堪能な人は翻訳することなく歌詞を理解できるだろうからです。英語ができない人間にとって理解するとは即調べることなので、多少の労力がかかるのは当然で努力というほどのものではありません。
    でも、いつもお声をかけていただき、ありがとうございます。

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