Viva La Vida : Coldplay

2008年09月13日




I used to rule the world.
かつて私は世界を支配していた
Seas would rise when I gave the word. *1
私が命じれば海の潮も満ちた
Now in the morning I sleep alone,
ところが今では、朝私は一人ぽっちで眠っている
sweep the streets I used to own.
昔は私のものだった道路を掃いている

I used to roll the dice, *2
サイコロを転がして人の生死を決めたこともある
feel the fear in my enemies eyes.
敵の目に浮かぶ恐怖をいつも感じていた
listen as the crowd would sing:
群集が歌うのを聞いた
"Now the old king is dead! Long live the king!"
「古い王は死んだ! 新しい王、万歳」

One minute I held the key, *3
短い間、私は鍵を握っていたのに
next the walls were closed on me.
次の瞬間には、城壁は私の前で閉められてしまった
And I discovered
やっと私は気づいたのだ
that my castles stand upon pillars of salt, and pillars of sand. *4
私の城が塩の柱と砂の柱で建っていたことを

I hear Jerusalem bells are ringing,
エルサレムの鐘が鳴るのが聞こえる
Roman Cavalry choirs are singing. *5
ローマの騎兵聖歌隊が歌っているのが聞こえる
Be my mirror my sword and shield,
私の鏡になってくれ、剣と盾になってくれ
my missionaries in a foreign field.
外国の荒野にいる私の宣教師たちよ
For some reason I can't explain,
うまく理由を説明できないが
once you'd gone there was never,
きみたちがいなくなってから
never an honest word.
正直な言葉がなくなってしまった
And that was when I ruled the world.
ただ、それも私が世界を支配していた昔の話だ

It was the wicked and wild wind.
邪悪な風が荒れ狂っていた
Blew down the doors to let me in.
私を巻き込もうとドアを吹き倒した
Shattered windows and the sound of drums.
粉々になった窓と太鼓の音
People could not believe what I'd become.
人々は私の身に起こるだろうことを信じられなかった
Revolutionaries wait for my head on a silver plate. *6
革命家たちは、銀の皿に載った私の首を待っている
Just a puppet on a lonely string.
まるで孤独な操り人形だ
Oh who would ever want to be king?
ああ、いったい誰が王になりたいと思うだろう?

I hear Jerusalem bells are ringing,
エルサレムの鐘が鳴るのが聞こえる
Roman Cavalry choirs are singing.
ローマの騎兵聖歌隊が歌っているのが聞こえる
Be my mirror my sword and shield,
私の鏡になってくれ、剣と盾になってくれ
my missionaries in a foreign field.
外国の荒野にいる私の宣教師たちよ
For some reason I can't explain,
うまく理由を説明できないが
I know Saint Peter won't call my name. *7
聖ペテロが私の名を呼ばないことは分かっている
Never an honest word.
偽りのない言葉など一つもなかった
And that was when I ruled the world.
しかし、それも、私が世界を支配していた遠い昔のことだ


備考
  1. give the word : 命令する、指図する
  2. dice は die の複数形でサイコロのこと。「死ぬ」die とは語源が違うらしいが、イメージは重なる。
  3. key は世界を支配する権力、城を出入りする自由の二重性。
  4. pillars of salt(塩の柱)は、旧約聖書の神に焼かれた背徳の街、ソドムとゴモラの暗喩?
  5. エルサレムの鐘、ローマの騎兵聖歌隊、鏡・剣・盾、宣教師などは、聖地エルサレム奪還を期した十字軍を連想させる。
  6. ヘロデ王の前で舞を踊った少女(サロメ)は褒美に洗礼者ヨハネの生首を欲しがった。ヨハネはイエスに洗礼を授けた宗教者で、イエスが現れる前民衆から救世主ではないかと期待されていた。
  7. ペテロはイエスの一番弟子。新約聖書では、イエスの名を知らないと言うことにより、イエスを裏切る。そうするとこの詩句は「自分が裏切られる運命にあるのは分かっている」という意味になる。また、聖人伝説では聖ペテロは天国の門番として天国に入る者を審査するという。そうすると、この詩句は「自分が天国に行けないのは分かっている」という意味になる。


 2008年のアルバム Viva La Vida or Death And All His Friends に収録。
 全体としては「凋落した支配者を憐れむ歌、権力者を蔑む歌」と言えそうです。キリスト教の隠喩が随所に散りばめられていますが、歌詞の全体像からはあまり宗教性や信仰心などは感じられず、むしろ政治的な権力者の姿が強調されています。セントヘレナ島に幽閉されたナポレオンやギロチンにかけられたルイ16世、信頼する弟子に裏切られたイエスや救世主になりそこね首を切られたヨハネ、あるいはローマに蹂躙されたユダヤの王など、聞く人によっていろいろなイメージを描けるように作られていると思います。
 しかし、タイトルの Viva la vida は、スペイン語で「充実した人生を!」「長生きしてね!」「人生万歳」などの意味だそうです。
 ここから歌詞の意味を考えると、栄華を極めたり凋落したりすること、裕福であったり貧窮であったりすることなどと、人生の価値、幸福は一致しない、と言っているように思えます。そして、ただここに生きていること、生命そのものに価値があり、幸福があるのだと歌っているのではないでしょうか? And that was when I ruled the world. という台詞は、「戦争も、栄華も、クーデターも、裏切りも、今となってはすべてどうでもいい、価値のないことだ。むしろ、落ちぶれた今のほうが、ある意味平穏で幸せだ」と言っているように聞こえてくるのです。
 そう解釈すれば、この歌のタイトルが「生きてるって、素晴らしい」とされているのも納得できるような気がします。
 クリス・マーティンはローリングストーン誌の取材に対して、難病と闘いながら絵筆を握り続けたメキシコの画家フリーダ・カロの最後の作品の名前をもらったという意味のことを話しています。

kahlo_viva la vida

 ここのサイトで、彼女の作品を見ることができます。
 翻訳のために海外の掲示板なども読んでみたのですが、「いろんなことを書いてる奴がいるが、これは明らかにブッシュとアメリカのことだ!」との書き込みは面白かったです。「アメリカは過去さんざんあこぎなことをしてきたんだよ!」というようなことが書かれていて、なるほどそういう見方もあるのかと感心してしまいました。英語を日常語とする人たちの間でさえ解釈がいろいろ分かれるのですから、私などが翻訳に悩むのも当たり前かもしれません。いずれにせよ人々の想像力をかきたてるということは、やはりいい詞なのでしょう。



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