No Shelter : Rage Against The Machine

2016年03月21日




The main attraction, distraction *1
多数の気を引く呼び物は、人々の気を逸らすただの気晴らし
Got ya number then number than numb *2
それは、お前たちの本心を見抜き、正常な感覚を麻痺させる
Empty ya pockets son
お前たちのポケットを空にする
They got you thinkin' that what ya need is what they selling
お前たちに思い込ませる。必要な物は奴らが売っている物だと
Make you think that buying is rebelling *3
思い込ませる。買うことこそが格好いい「反抗」だと
From the theaters to malls on every shore *4
映画館からショッピングモールまで、この国のあらゆる所では
Tha thin line between entertainment and war *5
娯楽と戦争の間は紙一重だ
The front line is everywhere, there be no shelter here *6
いたる所が「前線」だ。どこにも避難所などない
Spielberg, the nightmare works so push it far *7
スピルバーグと "悪夢工房" は、この事実を遙か遠くに追いやってしまう
Amistad was a whip, the truth was feathered and tarred *8
「アミスタッド」(友情)こそが "鞭" だ。真実にタールと羽根を塗りたくり晒し物にした
Memory erased, burned and scarred
記憶は消去され、焼かれ、傷跡を残された
Trade in ya history for a VCR *9
お前たちの歴史は、ビデオレコーダーのための商品となった

Cinema, simulated life, ill drama
映画。模造の人生。吐き気のする芝居
Fourth Reich culture, Americana *10
第四帝国の文化。アメリカ的なるもの
Chained to the dream they got ya searchin' for
お前たちは、探し求めることを強いられた「夢」に鎖で縛られている
Tha thin line between entertainment and war
娯楽と戦争の間は紙一重だ

There be no shelter here
過去にも現在にも未来にも、ここには避難所などない
Tha front line is everywhere
あらゆる場所が「前線」だ

Hospitals not profit full *11
病院は利益を膨らませる所ではない
Yet market bulls got pockets full *12
ところが、市場の強気な雄牛たちはポケットをいっぱいに膨らませている
To advertise some hip disguise *13
まやかしの素敵な商品を宣伝するために
View tha world from American eyes
奴らは世界をすべてアメリカ人の視点で見る
Tha poor adore keep fiendin' for more *14
貧乏人たちは崇拝でもするように限りなく欲望を膨らませる
Tha thin line between entertainment and war
娯楽と戦争の間は紙一重だ
They fix the need, develop the taste *15
奴らは人々が欲しがる物を決め、新たな味覚を作り出す
Buy their products or get laid to waste *16
「俺たちの商品を買え。そして、壊せ」
Coca Cola is back in the veins of Saigon *17
コカコーラはサイゴンの血管に再び入り込んだ
And Rambo too, he got a dope pair of Nikes on *18
ランボーも今ではナイキを履いてコカコーラを飲んでいる
Godzilla, pure muthafuckin' filler *19
「ゴジラ」はふざけたほどに観客を呼び込んでいるが
To keep ya eyes off the real killer
本物の殺人鬼からお前たちの目をそらしている

Cinema, simulated life, ill drama
映画。模造の人生。吐き気のする芝居
Fourth Reich culture, Americana
第四帝国の文化。アメリカ的なるもの
Chained to the dream they got ya searchin' for
お前たちは、探し求めることを強いられた「夢」に鎖で縛られている
Tha thin line between entertainment and war
娯楽と戦争の間は紙一重だ

There be no shelter here
過去にも現在にも未来にも、ここには避難所などない
Tha front line is everywhere
あらゆる場所が「前線」だ

American eyes, American eyes
アメリカの目
View the world from American eyes
アメリカの目で世界を見る
Bury the past, rob us blind *20
過去を埋葬し、俺たちの金を盗みまくる
And leave nothing behind
そして、後には何も残さない。それがアメリカの目

Just stare, just stare, just stare, just stare
ただ、公正にじっと見つめろ
Relive the nightmare *21
悪夢を解放せよ


備考
  1. attraction : 引き付ける力、魅力。引き付ける場所、注目の的、呼び物。引き付けること、牽引力、引力
    distraction : 気を散らすこと、注意散漫、放心、上の空。乱心、動転。気を散らすもの、気晴らし、娯楽、慰み
  2. ya = you
    get a person's number : (人の)本心・正体・狙いなどを知る。弱みを握る、一枚上手である
    numb : 感覚のない、無感覚な、麻痺した、痺れた。頭の鈍い、馬鹿な
    ※私の耳では聞き取れないが、初めの number は「ナンバー」、次の number は numb の比較級の「ナマー」ではないだろうか?
  3. rebel : (自国の政府・支配者に)反逆する、謀反・反乱を起こす、反抗する
  4. shore : 岸、海岸、湖畔、河岸。(ある特定の)地方、国
  5. tha = the
  6. front : 前線、戦線(敵兵力と武装対峙している境界)
  7. nightmare works : スティーブン・スピルバーグが共同設立した映画会社 "Dreamworks 夢工房" のもじり。次行の『アミスタッド』はスピルバーグが監督し同社が配給した。
  8. Amistad : 1839年に起きたアミスタッド号事件を元にした1997年の米映画。スペイン船籍のラ・アミスタッド号で移送されていたアフリカ人奴隷たちが反乱を起こし船を乗っ取るが、アメリカ海軍に逮捕される。映画は、その後の裁判の過程、彼らが自由の身となりアフリカに帰還するまでを描いている。amistad はスペイン語で「友情」を表す。
    tarring and feathering : 体の全面にタールを塗り鳥の羽をくっつけて、公衆の面前でさらし者にし屈辱を与える私刑の一種。
  9. trade in : 売買・取引・商売をする
  10. The Third Reich : 第三帝国。キリスト教神学で、来るべき理想国家を意味する。ナチスが自らの統治体制の自称に用いた。
    Americana : アメリカに関する文献・資料、アメリカの文物。アメリカ誌(アメリカに関するもののコレクション)。アメリカ文化に典型的と考えられる資料。アメリカの文化
  11. ※アメリカは医療に市場原理を取り入れており、病院の一割以上は株式会社によって経営され、医療保険も主流は民間の保険会社によるものである。その弊害として医療を受けられない多数の無保険者の存在や医療費自体の高騰などが挙げられる。当然のことではあるが、株式会社病院では利益追求と株価上昇が経営目標となる。
  12. bull market : 強気相場。相場の上昇が続いている市場のこと。雄牛が攻撃する際に角を振り上げるイメージから。
  13. hip : 流行の、最先端の、格好いい
    disguise : 変装、偽装、見せ掛け、擬態、隠れ蓑、まやかし。扮装、仮装、仮面
  14. adore : 深く敬慕・敬愛する、熱愛する、崇拝する。~が大好きである
    fiend : 強い欲望を抱く
  15. fix : 直す、治す、決める、指定する、定める、固定する、
  16. lay something (to) waste : (物を)完全に破壊する
  17. ※1995年にベトナムとアメリカは和解し国交が回復、通商禁止も解かれた。両国は2000年に通商協定を結び、フォード、GM、コカコーラ等アメリカの大企業がこぞってベトナム市場に進出し始めた。この歌詞は、ベトナムから逃げ帰ったアメリカが、今度は経済的な脅威として、麻薬のような依存性を駆使しベトナム内部に入り込んで来る様を表している。
  18. Rambo : ベトナム帰還兵を描いたシリーズ映画でシルベスター・スタローンが演じた主人公の名。
    dope : 麻薬、麻酔剤、興奮剤、麻薬常用者、ぐうたら・まぬけ。炭酸飲料とくにコカコーラ(薬用酒として開発された当初コカインが調合されていた)
  19. Godzilla : 1998年に公開された米映画。1億3千万ドルという巨額な制作費が投じられたが、興行的に大成功し、世界で約4億ドルの興行収入を得た。
    filler : 埋める物、詰める物、充填材。多数の人を集める魅力
  20. rob a person blind : 手当たり次第に盗む、法外な金を請求する
  21. relieve : 和らげる、緩和・軽減する、苦痛・心配等を取り除いて楽にさせる


 経緯は知りませんが、なぜか映画 "Godzilla" のサウンドトラックアルバムに収録されています。また、彼ら自身の1999年のアルバム "The Battle of Los Angeles" の日本盤・オーストラリア盤には、ボーナストラックとして収録されています。以下は、冒頭の動画に現れるいくつかの言葉の訳文と注釈です。繰り返される "does matter" は、映画 "Godzilla" の宣伝文句 "Size does matter(大きさは重要だ)" をもじったもののようです。

Mumia Abu Jamal's cell is this big
ムミア・アブ・ジャマールの独房はこんなに大きい
Justice does matter!
正義は重要だ
※ムミア・アブ・ジャマールについては当ブログ内の記事 "Guerrilla Radio" の備考 *19 参照。

Vanzetti, Sacco
※サッコ・ヴァンゼッティ事件。1920年代に起きた冤罪と目される事件。強盗殺人事件の容疑者として逮捕されたイタリア移民のニコラ・サッコとバルトロメオ・ヴァンゼッティは有罪判決の後電気椅子で処刑されたが、判決後、審理の不公正さに対する抗議活動が全米各地やヨーロッパで起きていた。二人は第一次大戦時徴兵を拒否したアナキストであったため、警察や検察、判事、陪審員らは彼らに先入観を持っていたと思われる。死刑執行の50年後、1977年にマサチューセッツ州知事は裁判の誤りと二人の無実を公表した。ただし、彼らの冤罪が立証されたわけではなく事件の真相は明らかになっていない。

Scottsboro
※アラバマ州で1931年に起きたスコッツボロ事件。9人の黒人少年が2人の白人女性を強姦した容疑で逮捕され死刑判決を受けた。共産党と全米黒人向上協会が無罪釈放運動を起こし、裁判がやり直されたが、死刑は覆されたものの結果的に有罪判決は変わらず、全員が懲役刑を受けた。

The crater at Hiroshima would stretch....
広島への爆撃で開いた穴は、、、
From here........to here
ここから、、、、ここまでの広さだ
History does matter
歴史は重要だ

Babies born into poverty in the U.S. each year would fill this building...
アメリカで貧窮家庭に生まれる赤子は一年でこの建物をいっぱいにする程だ
Inequality does matter!
不平等は重要だ

Land stolen from Mexico equals 5 states
メキシコから盗んだ土地はアメリカの五つの州の広さに等しい
Imperialism matters!
帝国主義は重要だ

 注釈が長くなったので、歌詞の解釈はしないでおきます。ただ、この翻訳のために『アミスタッド』という映画を見たのでその感想を記します。映画では、奴隷制度の非人道性に対する嫌悪感、奴隷制度廃止が歴史的な必然であること、行政に対する司法の独立が大切であることなどが描かれています。そして、人種に関わらず人は皆貴重な「その人の人生の物語」を持っていることが主張され、見終わった後の初めの感想としては「面白くはないが、健全で良心的な映画だなあ」というものでした。批判されるほどの危険な思想もないのではないかとも思いました。
 そして、この歌詞を読みながら映画の内容を思い出して考えてみると、この映画に対するいくつかの疑問点が浮かんできました。なお、その前に、この歌に関する海外の掲示板やレビュー等でこのことについて「映画は奴隷の非人道的な境遇を薄めて描いている、歴史の描き方が不正確である」等の意見も読みました。
 その上で思い浮かぶこの映画の問題点は次のようなものです。一つは、やはり奴隷が非人間的に扱われる描写が淡白であることです。奴隷船では奴隷を積荷として扱うために、一隻の船にいかに多くの奴隷を詰め込むかが積み込みの際の重要課題だそうです。板を何層にも並べた棚を作りそこに奴隷を鎖でつなぎ、奴隷は寝たままの状態で身体を起こすこともできず数ヶ月を過ごします。上の人間の大小便はそのまま下の人間に落ちてきます。映画にも一部奴隷船でのひどい扱いは描かれてはいましたが、2時間半を超える長い映画の中ではわずかなものだったと思います。
 もう一つは、アメリカが基本的に奴隷制度を廃止する良心的な国として描かれていることです。スペイン女王は奴隷と船の所有権を主張するのですが、当時10歳だったこの女王の描き方が、確かに子供ではあるのですが必要以上に幼さを強調しています。また、裁判の証人として登場するイギリスの軍人がとても格好良く描かれています。スペインは奴隷制度を維持している遅れた国、イギリスは奴隷制度をいち早く廃止した先進的な国であることを象徴させたかったのでしょう。確かにイギリスは1833年に奴隷制度廃止法を成立させ1834年には国内の奴隷をすべて解放し、奴隷の売買も禁止しています。しかし、18世紀後半からイギリスは一方で清とインドを相手に茶、綿、阿片を使った悪どい商売で利益を上げる方法を開発していました。奴隷貿易という野蛮な搾取からより資本主義的な搾取への変遷がここに現れていますが、映画ではこのような背景の説明は一切ありません。奴隷制度の廃止は間違いなく歴史的進歩だと思います。しかし、この経緯は貿易でイギリスに遅れを取っていたアメリカが本格的な資本主義国として成長し帝国主義化していく中で追い風として働いた面も持っています。
 最後に物語の演出についてですが、象徴的なのは主人公の黒人シンケの描き方です。彼は反乱の首謀者で映画の冒頭、獣のような冷酷な表情で暗闇に乗じて乗組員たちを襲い、殺します。その彼がアメリカに長く滞在するうちに洋服を着て、片言の英語を発するようになります。裁判の途中、彼が "Give us free" と初めて英語を発し、回りのアメリカ人たちが一同に驚く場面は情緒的な音楽を流しなんとか視聴者を感動させようとします。これは、アメリカ人たちが当初人間だと思っていなかった黒人奴隷を同じ人間であると認識する過程ではあるのですが、それが洋服を着ること、英語を話すことと合わせて演出されると多少興ざめする感じがしました。
 反乱を起こした黒人達の解放に尽力する若い弁護士とそれをしぶしぶ手助けする元大統領。この二人とシンケとの心の交流も丁寧に描かれており、ザック・デ・ラ・ロッチャが批判するほどには私はひどい映画だとは思いません。興味のある方はご覧になることをお奨めします。



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