気に入った洋楽の歌詞を和訳しています。

Broken Crown : Mumford & Sons



Touch my mouth and hold my tongue *1
この口に触れてくれ。この舌を黙らせてくれ
I'll never be your chosen one
私は "あなたに選ばれた者" にはならない
I'll be home safe and tucked away *2
安全な家の中で夜具にくるまっていよう
Well You can't tempt me if I don't see the day *3
日の光を見ることもなければ、あなたに誘い惑わされない

The pull on my flesh was just too strong *4
この肉体を惹きつけるその魅力はまったく強すぎる
Stifled the choice and the air in my lungs *5
抑えつけられた選択。肺の中で止められた空気
Better not to breathe than to breathe a lie *6
"嘘" を吐くくらいならば、いっそ息をしない方がいい
'Cause when I opened my body I breathe in a lie *7
この体を開くと "嘘" を吸い込んでしまうから

I will not speak of your sin
あなたの罪について何かを言うつもりはない
There was a way out for Him *8
"彼" に近づくためにここから出る道はある
The mirror shows not
その鏡には映っていないけれど
Your values are all shot *9
あなたの倫理観はもうぼろぼろなんだ

But oh my heart was flawed I knew my weakness *10
私の心は傷ついていた。自分が弱いからだと分かっていた
So hold my hand consign me not to darkness *11
私の手をとってくれ。暗闇へと追いやらないでくれ

※ So crawl on my belly 'til the sun goes down *12
呪われた誘惑の蛇のように這って進む。日が沈むまで
I'll never wear your broken crown *13
私はあなたの "壊れた王冠" を被ることはないだろう
I took the road and I fucked it all away *14
私は道を踏み出した。そして、すべてを台無しにして失った
Now in this twilight, how dare you speak of grace *15 ※
このたそがれの中で、どうして "慈悲" や "恩寵" を口にできる?

※~※

So crawl on my belly 'til the sun goes down
誘惑の蛇のように這って進む。日が沈むまで
I'll never wear your broken crown
私はあなたの "壊れた王冠" を被ることはないだろう
I can take the road and I can fuck it all away
私は道を踏み出した。そして、すべてを台無しにして失った
But in this twilight, our choices seal our fate *16
だが、このたそがれの中で、"私たちの選択" こそが "私たちの運命" を決めるんだ


備考
  1. ※『イザヤ書』6章5-7節。"そこで、私は言った。「ああ。私は、もうだめだ。私はくちびるの汚れた者で、くちびるの汚れた民の間に住んでいる。しかも万軍の主である王を、この目で見たのだから。」すると、私のもとに、セラフィムのひとりが飛んで来たが、その手には、祭壇の上から火ばさみで取った燃えさかる炭があった。彼は、私の口に触れて言った。「見よ。これがあなたのくちびるに触れたので、あなたの不義は取り去られ、あなたの罪も贖われた。」"
    ※上記のセラフィムは「天軍九隊」説によるところの最上位の天使の名称。"汚れたくちびる" とは、預言者イザヤも人間である限り罪に穢れた存在であり真実の言葉を発することができないという意味だろう。
    hold one's tongue : 口をつむぐ、黙っておく、言わないでおく
  2. tuck : 衣服・布などの裾、縁を巻き込む、挟み込む。何かを寝具などに包み込む
    tuck away : 狭い所、安全な所にしまい込む
  3. tempt : 欲望をかき立てて快楽などに誘惑する、悪事を唆す
  4. pull : 引くこと、引く力、引き、牽引力、引力
  5. stifle : 息を止める、窒息(死)させる、息を詰まらせる。声・感情などを抑える・こらえる。反乱などを鎮圧する。自由・思想などを抑圧・弾圧する
  6. breathe : 呼吸する、話すため息を調節する。吸い込む、一息つかせる、言葉に出す・ささやく、表現する・明示する。吐く、吹きかける
    ※『伝道の書』5章5-6節。"誓って果たさないよりは、誓わないほうがよい。あなたの口が、あなたに罪を犯させないようにせよ。使者の前で「あれは過失だ。」と言ってはならない。神が、あなたの言うことを聞いて怒り、あなたの手のわざを滅ぼしてもよいだろうか。"
  7. breathe in : 息を吸い込む
  8. ※大文字の Him は通常「創造主、神、イエス」等を表す。ここでは、後述の *13 との関連で「イエス」を指すと思われる。
  9. value : 価値、値段、有用性
    values : 倫理・社会的な価値基準、価値観
    shot : 見る角度によって色が変化するように織られた、玉虫色(織り)の。ぼろぼろの、だめになった、いかれた、くたくたに疲れ果てた
  10. flaw : 傷・割れ目を生じさせる、損なう、だめにする、傷をつける・ひびを入れる
  11. consign : 動物や人の世話を誰かに委ねる・任せる、不快な状況に追いやる・処分する、販売や保管のために商品を配送する・引き渡す
  12. crawl on one's belly : 腹這いになって進む
    ※『創世記』3章13-14節。"(中略)女は答えた。「蛇が私を惑わしたのです。それで私は食べたのです。」神である主は蛇に仰せられた。「おまえが、こんな事をしたので、おまえは、あらゆる家畜、あらゆる野の獣よりものろわれる。おまえは、一生、腹ばいで歩き、ちりを食べなければならない。"
  13. broken crown : 「壊れた王冠」は、イエスが磔刑の際に被せられた "茨の冠 a crown of thorns" を指すように思われる。十字架に掛けられる前に背中や肩から腰、脚までも全身を鞭打たれ血まみれになったイエスは、さらに棘だらけの茨の枝で作った冠を被せられ頭からも血を流した。
  14. take the road : 旅行に出る、出発する
    fuck : しくじる、台無しにする、
    all the way : はるばる、わざわざ。道中ずっと。さまざまに、完全に。行き着く所まで。
  15. How dare you ~ : よくもまあ(図々しくも)~できるものだ
    grace : 優美、上品。恩恵、親切。慈悲、寛容。神の恩寵
  16. seal : (開けられないように)封印する。(漏れないように)密封する、密閉する、(証明のために)押印する
    seal one's fate : 運命を決める

 Mumford & Sons Broken Crown

 2012年のアルバム Babel より。
 歌詞の中でいちばん分からないのが第三連の "I will …" から "Your values …" までの四行です。掲載した和訳では自分を誘惑する女への歌い手自身の言葉としていますが、そうではなく、第三者あるいは相手の女の言葉として解釈することもできそうです。その場合翻訳は、例えば「お前の罪は問わない。まだ神へ至る道は残されている。鏡に映らず今のお前には見えないだろうが、そのぼろぼろになった倫理観を見直せ」などとなるのではないでしょうか。
 実は、歌詞全体の趣旨もあまりよくは理解できていません。ごく大雑把に言うと、恋愛や肉欲などの欲望と宗教倫理が自分の中で闘っているというイメージが湧きます。あるいはもっと単純に自分の信仰心の弱さを嘆くともとれるかもしれません。マーカス・マムフォードの両親はプロテスタント系の教会の指導者らしいので、おそらく彼も幼い頃から宗教教育を受けていたのだろうと思います。彼自身の宗教観や信仰心がどのようなものかは知りませんが、彼の書くいくつかの歌について言えば、教条的な信仰心を吐露するものではなく、キリスト教の倫理や思想をある程度客観視しながら自分や人間一般の生き方について考えているといった感じがします。
 しかし、キリスト教というのはつくづく面倒臭い宗教だと思います。翻訳のための調べ物で疲れ果て「もう勝手に悩んでろ」という気分になり、深く考えることを途中でやめてしまいました。そのため、掲載した翻訳も中途半端な解釈の分かりにくいものとなっています。
 ただ、自分のように寄る辺となる思想や信条を持たず日々のんべんだらりと生きている者にとって、このような強力な倫理や生きる指針を与えてくれる思想にはある種の魅力も感じます。そして、そういう思想を元に真摯に物事を考え続けるマーカス・マムフォードの書く歌詞も結構好きです。

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