気に入った洋楽の歌詞を和訳しています。

Avenue : Agnes Obel



What is wrong at the end of the day *1
いったい何が "間違い" なんだろう。結局何が "誤り" なんだろう
What is really wrong no one dares to say
"本当の悪業" とはどんな事なんだろう。誰もあえて言おうとしないけれど
You know you're wrong when there's only one right
正しい事がただ一つしかないのなら、自分が間違っていると分かるかもしれない
But what is wrong when right is out of sight
でも、正しい事が見えない時は、何が間違いになるんだろう

※ Right rode away long ago *2
"正しさ" なんてとうの昔に走り去ってしまった
Before rescuing wrong from below
この下界から "悪" を救うこともなく
I might be mistaken, I know
私は間違っているかもしれない。それは分かってる
But hey we need to be somewhat *3
でもね。私たちも少しはなる必要があるのよ

Foolish, feebleminded *4
馬鹿になりなさい。愚かになりなさい
Wrong and senseless
間違ってもいい。分別を無くしてもいい
Right rode off long ago
"正しさ" などとうの昔にいなくなってしまった
There's nothing more you need to know
もうこれ以上知るべきことなどない
There's nothing more you need to show
もうこれ以上誰かに示すべきことなどない
Let us disagree *5
異議を唱えさせて。私たちは違う、と
'Cause wrong was made, for you to be ※
なぜなら、間違いや誤りは、あなたが存在するために作られたのだから

What is false when we can't hear no more *6
何が偽りなのだろう。人の声が聞き入れられないような時には
And there is nothing to cover for *7
そして、私をかばってくれるものが何もない時には
What is wrong in this old wasted game *8
何が悪なのだろう。この古くさく無益な駆け引きのお遊戯では
May right and wrong be one and the same *9
正しさと誤りが一つの同じものであればいいのに

※~※


備考
  1. at the end of the day : 一日の終わりに。最後には。最終的には。結局は。つまりは。
  2. ride-rode-ridden : 馬などに乗る、馬などを操る。乗り物に乗る、乗って行く。
  3. somewhat : 多少、幾分、やや、少々、ちょっと、いささか、若干
    ※名詞としても使われるが、ここはおそらく副詞で次行以下の foolish 等にかかっているのではないだろうか。
  4. feeble : 体力の弱った、虚弱な。頭の弱い、意志の弱い。音・光などが弱い、かすかな。力・勢力などが弱い
    feeble-minded : 意志の弱い、頭の弱い、愚かな、知能の低い
    ※ feeble-minded は知能検査で子どもたちを分類する際にかつて学校教育法で使われた「精神薄弱」という言葉に該当する英語。精神薄弱に当たる英語は法的・行政的用語として他に "mental deficiency" という言葉もあるため、feeble-minded はおそらくより一般に使われた言葉で日本語の「知恵遅れ」あるいは「白痴」などのニュアンスを持つのではないかと思われる。現在の日本では「知的障害 intellectual disability」という言葉が使われている。知的能力の劣る子どもを指す医学的・法律的用語は時代とともに、低能・劣等(明治~大正初期)→精神薄弱(大正末期~平成9年)→知的障害(平成10年~)と変遷している。アメリカでもこの用語は "mental deficiency 精神薄弱"→ "mental retardation 精神遅滞"→ "intellectual disability, developmental disability 知的障害, 発達障害" と変遷している。
    ※この歌詞に差別的な意思は全くないと思われ、また私自身も言葉狩りをする意図は全くないが、feeble-minded を検索すると「精神薄弱」という語が頻繁にヒットするのでこの英語のニュアンスを誤解しないように調べてみた結果を記述しておく。「精神薄弱」という語はかつて差別的な意思を込めて「精薄」などの言い方で使われた歴史があり、このことを日本人は忘れてはならないと思う。ちなみに、アグネス・オベルはデンマーク人であり英語は母語ではないため、英語の細かなニュアンスやそれぞれの言葉の歴史的経緯などは知らないと思われる。
  5. disagree : [自動詞] ~と一致しない、食い違う。人と意見が合わない。~に異議がある。口論する、争う。~に同意しない、異議を唱える。賛成できない、反対である。
  6. false : 正しくない、誤った、正確でない。見当違いな、適切でない。本物でない、偽物の、ごまかしの。虚偽の、裏切りの、不誠実な。
  7. cover for : 代理をする。身代わりになる。他人の不正をかばう
  8. wasted : 浪費された。無駄な、役に立たない、使われていない。衰えた、壊れた。疲れきった、酔っ払った。殺された、死んだ。
    game : 遊戯、娯楽、ゲーム。競技、試合、勝負。競争、駆け引き、計略、上手い手段。狩猟の対象となる獲物、白鳥等の群れ。
    ※ここでの game は恋愛の駆け引きを示唆しているように思える。
  9. May A 動詞 : A が~でありますように。祈願・願望・呪いなど。

 agnes obel philharmonics

 2010年のデビューアルバム Philharmonics より。
 訳し初めた時は、善と悪について考える哲学的な歌詞なのかと思いましたが、備考 *8 の "old wasted game 古くからある無駄なゲーム" を見て、恋愛に関わる心情をモチーフにしたものだと思うようになりました。「人は過ちも犯すし、誰かを傷つけたり後悔したりもする。それでも、道理や分別で自らの自然な感情を抑えることはしたくない。少しくらい間違ったっていいんだ」と言っているように思えます。
 曲名の avenue は「大通り、本通り、並木道」ですが、他に「目的を達するための手段・方法・道、ある地点に至る道筋」という意味もあるそうです。

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