気に入った洋楽の歌詞を和訳しています。

Arsonist's Lullaby : Hozier

Arsonist's Lullaby 放火犯の子守歌



When I was a child, I heard voices...
子供の頃、声が聞こえていた
Some would sing and some would scream
ある時は歌うように、ある時は叫ぶように
You soon find you have few choices..
「すぐに分かるだろう。お前には選択の余地はない」
I learned the voices died with me
そして、悟った。この声は自分が死なない限り消えないのだと

When I was a child I'd sit for hours
子供の頃、ずっと座っていた
Staring into open flame *1
むき出しの炎を見つめていた
Something in it had a power,
火には何かしらの "力" があった
Could barely tear my eyes away *2
容易には目を離すことができなかった

All you have is your fire... *3
「お前が持つ特質は、その "火" だけだ
And the place you need to reach -
そして、お前がたどり着くべき居場所…
Don't you ever tame your demons *4
飼い馴らすな。無害なものにするな。お前の中の悪鬼を
But always keep them on a leash *5
ただ、いつも紐をつけて抑えておけ」

When I was 16 my senses fooled me *6
16歳の頃、自らの感覚に騙されていた
Thought gasoline was on my clothes
着る物にガソリンが染みていると思っていた
I knew that something would always rule me... *7
知っていた。何かがいつも自分を支配していると
I knew this scent was mine alone
知っていた。この香りは自分一人のものだと

All you have is your fire...
「お前が持つ特質は、その "火" だけだ
And the place you need to reach -
そして、お前がたどり着くべき居場所…
Don't you ever tame your demons
飼い馴らすな。無害なものにするな。お前の中の悪鬼を
But always keep them on a leash
ただ、いつも紐をつけて抑えておけ」

When I was a man I thought it ended
大人になった頃、やっと終わるのかと思った
Well I knew love's perfect ache *8
だが、分かってしまった。愛は、真の痛みであると
But my peace has always depended *9
心の安穏の拠りどころはいつでも
On all the ashes in my wake *10
自分の後に残るこの灰だけだった

All you have is your fire...
「お前が持つ特質は、その "火" だけだ
And the place you need to reach -
そして、お前がたどり着くべき居場所…
Don't you ever tame your demons
飼い馴らすな。無害なものにするな。お前の中の悪鬼を
But always keep them on a leash
ただ、いつも紐をつけて抑えておけ」


備考
  1. open flame : 裸火。囲いや覆いのないむき出しの炎。
    NO OPEN FLAME : マッチやライター、煙草、ろうそくなどを禁止する警告。
  2. barely : 1. 辛うじて、やっと、どうにかこうにか 2. ほとんど~しない
    tear : 引き裂く、もぎ取る、(目・注意・人を)強引に引き離す
  3. ※この have は「身体的・精神的特徴や性質を持っている」という意味で、「お前の特質は "火" である」と言っているのではないだろうか。
  4. Don't you ever ~ : ~するな。(命令文)
    tame : 飼い馴らす、手なずける。服従させる、従順にさせる
  5. leash : 動物をつなぐ綱、鎖、革紐。拘束、束縛
    keep ~ in leash : (感情・人などを)抑制する
  6. sense : 視覚、聴覚等の感覚。五感の一つ。感じ、心持ち、印象。(~に対する)感覚、センス、観念、意識。思慮、良識、分別、判断力。
    one's senses : 正気、平常心、本心
    fool : 分別(思慮)のない人、馬鹿者、間抜け、愚人、道化師。馬鹿にする、からかう。かつぐ、だまして~させる。
    ※ここは、単純に「自分の感覚とくに嗅覚がおかしかった」という意味だろうと思う。
  7. ※ "S know that ~" は「 that 以下が真実だと知っている」という意味だが、「知っている」といっても、that 以下が客観的に真実ではなく単に S が真実だと信じているだけという場合もあり得る。
  8. ache : 絶え間なく続く鈍い痛み、疼き。切望、熱望
  9. depend on : 頼る、依存する、~によって決まる、~次第である、~を当てにする、信頼する
  10. wake : 1. 徹夜、通夜、寝ずの番 2. 船の通った跡、航跡。物が通った道(跡)
    leave ~ in one's wake : 後に~を残す
    in someone's wake : (人の)通った跡で、(人に)倣って

 hozier hozier

 2014年のデビューアルバム "Hozier (Deluxe version)" に収録。
"The Walking Dead" と "Tidelands" という二つのテレビドラマで使われたこともあってか、この歌詞から殺人やゾンビ、吸血鬼等のイメージを抱く人が多いようです。YouTube で検索すると "The Punisher" という暴力シーンの多いドラマの映像にこの曲を載せて動画制作している人も結構います。確かにこの歌詞の字面は、快楽殺人者や大量殺人者に見られる異常な精神状態とその起因となった幼児期の心的外傷、あるいは人の血を吸わなければ生きられないゾンビやバンパイアの悲劇的な宿命などが感じられる内容だろうとは思います。
 ただ、個人的な感想レベルですが、宿命や異常者などの特殊な例ではなく誰にでも起こり得る精神状態を表している歌詞ではないかと私は思います。
 夫婦愛や家族愛などをあまり感じられない家庭に生まれ育った彼は、ある頃から "声" を聞くようになります。その "声" は "悪" を唆すようにも聞こえますが、一方で、生命や力、エネルギーの象徴である "火" を絶やすな、"生きろ" と彼を励ましているようにも聞こえます。思春期になってもその声は止むことなく、彼は他者との心の交流を持てず、自分が孤独な運命にあると思うようになります。大人になった彼は、恋愛を経験することにより、運命を変えられるのではないかと期待しますが、上手く行かず、また他者と自分を傷つけるだけだったと嘆いています。
 この歌での "火" は、生きるための根元的な欲求とそれによって生じるさまざまな感情を象徴させているように思えます。そもそも "火" は善でも悪でもありません。主人公である "arsonist 放火犯" はその "火" を上手く操り制御することができないために、自分や他者を傷つけてしまうのではないでしょうか。子守歌を歌っているのは彼の心のどこかですから、彼自身も本来他者を傷つけたくはないはずです。いつの日にか、彼の "火" を消すことなく覆い包めるような他者が現れることを祈りたくなります。

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