気に入った洋楽の歌詞を和訳しています。

Jackie and Wilson : Hozier



So tired trying to see from behind the red in my eyes *1
疲れたよ。見ようとしても、酔った目に赤い膜がかかって見づらい
No better version of me I could pretend to be tonight *2
これ以上ないくらいの自分、この夜にふさわしい見せかけの自分を作ってる
Soul deep in this swill with the most familiar of swine *3
魂は残飯のような安酒に沈んでる。"豚" には慣れ親しんだ所さ
For reasons wretched and divine
哀れで不幸な、だが神聖な理由があってのことなんだ

She blows outta nowhere, roman candle of the wild *4
彼女はいきなり怒り出す。まるで野生のローマ花火だ
Laughing away through my feeble disguise *5
僕の貧弱な偽装を見抜いて笑い飛ばす
No other version of me I would rather be tonight
僕は、この夜にふさわしいできる限りの自分になろうとしてるのに
And, Lord, she found me just in time
いよいよという時に彼女はその偽りを見破るんだ

'Cause with my mid-youth crisis all said and done *6
何を言ったところで結局は "青年期危機" ってやつなんだ
I need to be youthfully felt 'cause, God, I never felt young
若さを見せなきゃいけないのに、僕自身がそんなもの感じたことがないのさ

※ She's gonna save me
彼女は僕を救ってくれるだろう
Call me "baby"
"愛しい人" と呼んでくれるだろう
Run her hands through my hair
僕の髪に手を滑らせてくれるだろう
She'll know me crazy
彼女はまともじゃない僕を理解してくれるだろう
Soothe me daily
僕の日常を穏やかにしてくれるだろう
Better yet she wouldn't care
そして、彼女はそれをちっとも嫌がらないだろう
We'll steal her Lexus *7
二人で "彼女の" レクサスを盗もう
Be detectives
探偵ごっこをしよう
Ride 'round picking up clues *8
車を乗り回して、解決の糸口を見つけるんだ
We'll name our children
二人の子供たちには
Jackie and Wilson *9
ジャッキーとウィルソンって名づけよう
Raise 'em on rhythm and blues ※
リズム・アンド・ブルースに乗せて育てよう

Lord, it'd be great to find a place we could escape sometime
素晴らしいことだろう。いつの日にか二人で逃げ出せる場所を見つけられたら
Me and my Isis growing black irises in the sunshine *10
そこで、僕とイシスは日の光の下で黒いアイリスを育てるんだ
Every version of me dead and buried in the yard outside
そこで、本来のものでない自分はすべて死に、裏庭に埋められる
Sit back and watch the world go by *11
そこで、僕はじっと座ってこの世界を傍観するんだ

Happy to lie back watch it burn and rust
楽しい。寝転がってこの世界が燃えたり錆びて朽ちたりするのを見るのは
We tried the world, good God, it wasn't for us
僕たちはこの世界を試した。それは僕たちのためのものじゃなかった

※~※

Cut clean from the dream at night, let my mind reset
"夢" からすっぱりと切断される。心を "初期化" してやり直す
Looking up from a cigarette, and she's already left
煙草に火をつけ、顔を上げると、彼女はもういない
I start digging up the yard for what's left of me in our little vignette *12
裏庭を掘って探し始める。僕たちが描いたささやかな場面の中の "残り物の僕" を
For whatever poor soul is coming next *13
また次に僕の許を訪れる哀れな魂のために

※~※


備考
  1. from behind : 背後から
    from behind a tree : 木の後ろから
    from behind one's spectacles : 眼鏡の奥から
    from behind the curtain : カーテンの奥から、カーテン越しに
  2. version : 特定の視点からの意見。他の言語への翻訳。本来のものと異なる型、版。
    pretend : ふりをする、偽る、見せかける
  3. swill : 流動飼料、豚に与える残飯。ビールのがぶ飲み、深酒、安物の酒
    ※ "swine 豚" は「僕自身」を自虐的に表現している。
  4. blow : 吹く、汽笛・管楽器が鳴る、ヒューズが飛ぶ、電球が切れる、タイヤがパンクする、かっとなる、かんかんに怒る
    out of nowhere : どこからともなく、知らない内に、いつの間にか、降って湧いたように、出し抜けに、いきなり
    roman candle : 乱玉。一本の筒から星が連続して打ちあがる花火。玩具として販売される小型の物も多いが危険で手に持つことはできない。
  5. disguise : 変装、扮装、偽装
  6. ※中年期にしばしば現れうつ病などを引き起こす心理的危機を心理学で "mid life crisis" または "mid age crisis" と呼ぶ。"mid-youth crisis" はこれを援用した一般的な言葉。
    after all said and done = after all : 結局、やはり、どっちみち
  7. Lexus : トヨタの自動車ブランド名。造語で由来は不明らしい。
    ※ "高級車を盗む、探偵になる、証拠を見つける" 等は非現実の空想遊びなのだろう。そのため、他人のレクサスではなく泥棒ごっことして "彼女のレクサス" としているのではないだろうか? また、この空想遊びは、現実には二人が結婚して子供を作ることなどあり得ないという諦念のもと、現実逃避して夢の世界で過ごしたいという願望も込められているのだろう。
  8. clue : 解決のための手がかり、鍵、端緒、糸口
    ※ "picking up clues" には、夢でもいいから二人で幸せに暮らす端緒を見つけたいという思いが表されているように思える。
  9. Jackie Wilson : アメリカのソウル・R&Bの歌手。1934-84。ローリングストーン誌の選ぶ「歴史上最も偉大な100人の歌手」において第26位。
  10. Isis : エジプト神話の豊穣の女神。殺され分断されてエジプトじゅうにばら撒かれた夫オシリスの体を拾い集め、つなぎ合わせて復活させた。献身的な妻と母としてのイメージが強い。
    ※ここで彼女をイシスに譬えているのは、主人公が彼女が自分を救ってくれるあるいは再生してくれる存在であって欲しいという妄想または願望の表現だろう。
    iris : 眼球の虹彩。アヤメ。
    Iris : イリス。ギリシャ神話の女神。天地を結ぶ虹の化身であり高速で移動できるため、最高位の女神へーラーの伝令係を務める。
    ※ "black iris 黒いアイリス" はヨルダンの国花であり「成長、再生、変化」を象徴するらしい。
  11. sit back and watch things go by : 何もせず成り行きを見守る
  12. ※ "what's left of me" は直訳すると「僕の中の残っている部分である何か」となるのだと思う。すなわち「これまで使ったり捨てたりしてきたいろいろな "仮面" の中でまだ使えるもの」という意味ではないだろうか。
    vignette : 書物の扉などの飾り模様。文章による短い描写。感じのいい小さな絵や写真。小品。写真や絵の周囲をぼかしたり暗くしたりすること。
  13. whatever : ~するものは何でも。どんなことが~しても。いかに~でも。
    ※この最後の2行は、一度裏庭に埋めた沢山の "version of me 仮面" を再生させて、これから現れるであろう新たな女のために準備しておくという意味ではないだろうか。

 hozier hozier

 2014年のデビューアルバム "Hozier" より。
 ホウジァは、ファッションモデルとしても生業が立てられそうなその容貌から想像するに相当異性にもてるのでしょうが、これまで訳してきたいくつかの歌を見ると、異性に対して自分を卑下する内容のものが多いようです。これは聴く人に対する謙虚さの表れなのかもしれませんが、彼が極度に女性を神聖視していることの表れでもあるように思います。
 他の歌でも見られますがこの歌詞でも女性を "女神" に譬え、自分を救ってくれる存在であると規定しています。そして、この人となら自分も幸せになれると妄想を働かすのですが、現実には刹那的な快楽を得るだけの関係に終わってしまい、失望してしまいます。主人公は、何らかの理由でこの世の中から疎外されているという感じを抱いており、その疎外感を埋めるために異性との関係を求めているようです。恋愛感情を読み取るのは非常に苦手なのでこれくらいで止めますが、ホウジァはある意味とても生真面目な人なのではないでしょうか。

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