The Foggy Dew

2009年12月10日

The Foggy Dew : The Chieftains & Sinéad O'Connor




As down the glen one Easter morn to a city fair rode I *1
復活祭の朝、峡谷を馬でくだり、祭りの市へと向かう途上
There armed lines of marching men in squadrons passed me by *2
武装した騎兵隊が列をなして、私を追い越す
No pipe did hum, nor battle drum did sound its loud tatoo *3
笛も吹かず、戦いの太鼓を打ち鳴らすこともない
But the Angelus bells o'er the Liffey swells rang out in the foggy dew *4
ただ、朝の祈りの鐘が、霧のたちこめたリフィー川に鳴り渡る

Right proudly high in Dublin town hung they out the flag of war *5
ダブリンの町に、まさしく誇り高く、彼らは戦いの旗を掲げる
'Twas better to die 'neath an Irish sky than at Suvla or Sud-El-Bar *6
アイルランドの空の下で死ぬ方がいい。スーヴラ湾やサデルバの村で英軍に従うよりは
And from the plains of Royal Meath strong men came hurrying through *7
やがて、由緒あるミースの平原から、強者たちが駆けつけた
While Britannia's Huns with their long range guns sailed in through the foggy dew *8
今まさに、ブリタニアの蛮族が長距離砲を構えて霧の中を来航しようとしている

※ Oh the night fell black, and the rifles' crack made perfidious Albion reel *9
夜が黒く降り来たり、轟く銃声に不実のアルビオンがよろめきうろたえる
In the leaden rain, seven tongues of flame did shine o'er the lines of steel *10
鉛の雨の中、七つに割れた炎の舌が、鋼鉄の戦線に光を浴びせる
By each shining blade a prayer was said, that to Ireland her sons be true
閃く一太刀ごとに祈りを捧げる。「アイルランドよ。汝が息子らに真実を」
But when morning broke, still the war flag shook out its folds in the foggy dew *11
闇が曙光に破れてもなお、戦いの旗は朝靄に振り広げられた

'Twas England bade our wild geese go, that "small nations might be free" *12
イングランドは我らがワイルド・ギースに出兵を命じた。「小国たちに自由を」
Their lonely graves are by Suvla's waves or the fringe of the great North Sea
彼らの墓は、遥か寂しいスーヴラ湾岸や北海の果てに打ち捨てられている
Oh, had they died by Pearse's side or fought with Cathal Brugha *13
彼らもピアースの傍らで死にカハル・ブルハとともに戦いたかったであろうに
Their graves we'd keep where the Fenians sleep, 'neath the shroud of the foggy dew *14 ※
彼らの墓は我らが守ろう。フェニアンの戦士が眠るこの地で、この霧に包んで

Their bravest fell and the requiem bell rang mournfully and clear *15
彼らが遺した勇敢な毛皮。哀しく澄んだ音で鳴り響く鎮魂の鐘
For those who died that Eastertide in the springing of the year *16
春の萌え出ずる復活祭の日々に死んだ彼らのためだ
While the world did gaze with deep amaze at those fearless men but few
世界中が深い驚きで見つめていた。この類まれな恐れを知らぬ者たちを
Who bore the fight that freedom's light might shine through the foggy dew
戦いに倦むことなどあろうか。この深い霧の向こうから自由の光が差し込むまでは

As back through the glen I rode again and my heart with me fell sore *17
峡谷を戻りながら、私の心は悲しくいらだっていた
For I parted then with valiant men whom I never shall see 'more *18
私は勇壮な彼らと別れ、もはや二度と会うことはない
But to and fro in my dreams I go and I kneel and pray for you *19
しかし、私は夢の中だろうと現実だろうと、いつでも、跪いて君たちのために祈る
For slavery fled a glorious dead when you fell in the foggy dew *20
隷属を避け栄光ある死を望んだ君たちの思いに。この深い霧の中で


 ・上の動画の歌唱では ※~※ の2小節は省略されている。


備考
  1. glen : スコットランドやアイルランド山間の峡谷
  2. squadron : 騎兵大隊
  3. tatoo : 帰営らっぱ(太鼓)。強く早くトントンと打つこと。
  4. Angelus : 聖母への信心とイエス降誕の感謝のため朝、昼、夕に行う祈り。bell はその時を告げる鐘。
    o'er = over
    swell : [動・名] ふくれる、はれる、増水する、増加する、音が高まる、感情が高まる
    dew : 露、しずく、新鮮さ、さわやかさ
  5. hang out : 看板・旗等を掲げる、出す
  6. 'Twas = It was
    'neath = beneath : 下に。(比較的あらたまった言い方)
    Suvla Bay : スーヴラ湾。第一次大戦中の1915年、アンザック(Australian NewZealand Army Corps)がトルコに上陸した場所。オーストラリアとニュージーランドは当時イギリスの半植民地(事実上の独立国ではあった)で、アンザックはイギリス軍の一軍団として募兵された。
    Sud-El-Bar = Sedd el Bahr : トルコのガリポリ半島先端にある村の名前。サデルバという表記が適切かどうかは不明。上記同様トルコ上陸作戦の一舞台となった場所。
  7. Meath : ミース。アイルランド東部の州名。Royal Meath は古代アイルランド王に由来する通称。
  8. Britannia : ローマ時代にローマの属州だったイギリス南部の名称。
    Hun : フン族。4~5世紀に欧州を侵略したアジアの遊牧民。転じて、破壊者、野蛮人
  9. Albion : アルビオン。グレートブリテン島の古名で「白い島」の意(同島南部海岸の絶壁が白く見えることから)。
    reel : よろめく、ぐらつく、よろよろする、戦列が浮き足立つ、しりごみする、動揺する
  10. ※『使徒行伝』2章3・4節「また、舌のようなものが炎のように分かれて現れ、ひとりびとりの上にとどまった。すると、一同は聖霊に満たされ、御霊が語らせるままにいろいろの他国の言葉で語りだした」
    ※「七つの舌」はイースター蜂起の独立宣言に署名した首謀者七名(全員銃殺刑)を指しているのかもしれない。
  11. shake out : ちりなどを振って落とす、~を振り広げる
    fold : しわ
  12. bid - bade - bidden : 命令する、指図する
    Wild Geese : 16~18世紀にヨーロッパ大陸で活動したアイルランド傭兵。ここでは、おそらく第一次大戦で英軍がアイルランド人を徴兵あるいは募兵したことを指しているのだろう。
  13. Pearse : パトリック・ヘンリー・ピアース。イースター蜂起の中心人物。5月3日に銃殺刑。
    Cathal Brugha : カハル・ブルハ。蜂起では南ダブリン部隊の副指揮官、後にIRAの参謀長、暫定政府の国防大臣を務める。アイルランド内戦中に重傷を負い1922年7月7日死亡。
  14. Fenian : 2~3世紀頃のアイルランドの伝説的戦士団。または、アイルランド独立をめざした19世紀の秘密結社。
    shroud : 死者を包む経帷子。覆う物。
  15. fell : 獣皮、毛皮
    mournful : 悲しみに沈んだ、悲しげな、哀調を帯びた、哀悼の、死者を悼む
  16. Eastertide : 復活祭の季節
    spring : 生える、芽を出す、発生する、曙光などが見えてくる
  17. sore : 痛い、ヒリヒリする、おこっている、いらいらさせる、悲嘆に暮れた
  18. valiant : 雄雄しい、勇壮な、剛勇の
    'more : any-more (もはや、これ以上)の略称だろうか。
  19. to and fro :(二点間を)あちらへこちらへ、前後に、行ったり来たり
    kneel : 跪く
  20. slavery : 奴隷であること、隷属の身分
    flee : 逃げる、逃れ去る、身を避ける


 チーフタンズは1962年に結成されたアイルランドのバンドで、伝統音楽、民間伝承曲を発掘し現代的に編曲、紹介し続けています。この歌は1995年発売のアルバム The Long Black Veil に収録されています。ゲストボーカルに、スティング、ミック・ジャガー、ヴァン・モリソンなどを招いた豪華なアルバムです。
 この歌のメロディは元々アイルランドに伝わるもので別の歌詞があったようですが、1919年にイースター蜂起の歌として作り直され発表されました。作詞はアイルランドの司祭 Canon Charles O’Neill、楽譜の所有者が Kathleen Dallat だとされています。
 内容は、1916年に起きたアイルランドのイースター蜂起事件をもとにしています。4月24日から7日間続いた武装蜂起は、イギリス、アイルランド合わせて400人以上の死者を出した後、鎮圧され、指導者たちは逮捕、処刑されます。しかし、この後アイルランド市民の間で独立への機運が高まり、本格的な独立戦争へと進んでいくことになります。1921年に英連邦下でアイルランド自由国を設立、そして、1949年には英連邦から離れた完全独立国家となったのですが、北アイルランドの領有をめぐって両国の緊張は継続し、いまだ完全な解決にはいたっていません。
 こういう歌を歌うこと、そして聞くことにどういう意味があるのだろうか、と自問することがあります。このアルバムが発売された1995年には、アイルランド、イギリス双方のテロ活動は以前よりも沈静化し、1998年には両国の間で北アイルランドの領有に関する一応の合意がなされています。そのような中で、こういうナショナリズムを鼓舞するような音楽を発表することにどれほどの意義があるのでしょうか。ただ、彼らが自らの国の歴史を知ることは必須でしょうし、また私のような外国人にアイルランドの歴史を知らしめるという意味はあるかもしれません。


 <関連記事>
   ☆ The Wind That Shakes the Barley : Dolores Keane
   ☆ Zombie : The Cranberries
   ☆ Sunday Bloody Sunday : U2



コメント

  1. ETCマンツーマン英会話 | URL | hfCY9RgE

    Re:The Foggy Dew

    The Foggy Dewを調べていて、こちらに辿りつきました。映画『マイ・レフトフット』の通夜のシーンでThe Foggy Dewが歌われていて、とても印象に残っていました。こちらで歌詞の意味と、この歌にまつわる歴史を知り、アイルランドの人々の思いに触れることができました。感謝です。

  2. Kalavinka | URL | -

    Re:The Foggy Dew

     コメントありがとうございます。
    『マイ・レフトフット』は見ようと思いながらも今まで見ずにいた映画です。とても良作のようなので近いうちに見てみようと思います。公開するのも恥ずかしい素人の拙訳ですが、いくばくかの参考になったのならば幸いです。
     また、いろいろなご意見をお聞かせ下さい。

  3. ETCマンツーマン英会話 | URL | hfCY9RgE

    Re:The Foggy Dew

    Kalavinkaさん、お返事ありがとうございました。

    The Foggy Dewの翻訳、備考ともとても参考になりました。分かりにくく感じていたアイルランドの歴史が、急に理解が深まった感覚に包まれました。

    『マイ・レフトフット』是非ご覧になってください。
    The Foggy Dewは、亡くなった父が好きだった曲だったということで、父の行きつけのバーで行っていた通夜で歌われます。ところが、歌っている途中で他のアイルランド人の客と取っ組み合いの喧嘩になってしまうのです。単にうるさかっただけなのか、それともイースター蜂起に対する思いの違いが背景にあるのか、などと思いを巡らせています。もしご覧になったらご意見をお聞かせいただけると嬉しいです。

  4. Kalavinka | URL | IeOjDy9U

    ETCマンツーマン英会話 様

     返事が遅くなり申し訳ありませんでした。ようやく映画を見たので少しだけ感想を書かせていただきます。The Foggy Dew が歌われる場面では、次のような台詞のやりとりがありました。

     <静かに歌い出すクリスティ>
     トム : うるせえぞ。Will somebody shut him up?
     <ブラウン家の者たちが大声で歌い始める>
     客 : 父親の思い出だ。He was singin' that for his father,
     トム : あのペテン師か。ガキも似たな。His father was nothin' but a mouth, Like all the Browns,
     <その場が凍りつき、ブラウン家の面々が殺気立つ>
     クリスティ : やめろよ。落ちつけ。All right, lads, take it easy,
     <若干の間>
     クリスティ : 父さんが泣く。In respect for Da,
     <挑むようにトムの正面に行くクリスティ>
     トム : 障害者め。I don't fight cripples,
     <トムのグラスを蹴り飛ばすクリスティ。そのままブラウン家対トムの仲間たちの乱闘へ>

     ここは初め字幕だけで見た時には微妙な部分が分かりませんでした。字幕と英語の違いで気になるのは三つです。正確には次のような意味だろうと思います。all the Browns = ブラウン家の連中はみんな同じだ、In respect for Da = 父さんを侮辱するのは俺が許さない、I don't fight cripples = 障害者たちとは戦わないよ。
     トムは幼い頃からクリスティたちと遊んでいた隣人ですが、トムたちは貧乏で子沢山のブラウン家を内心軽蔑していたのかもしれません。クリスティは、女の子にもてるトムに対し自分を卑下し悩んだ経験もあります。この映画は差別を主題にしているのでしょうが、第一印象としては家族愛を強調した作りだと感じました。とくに、クリスティを最も深く理解している母親の描き方と俳優の演技にとても感動しました。この乱闘場面がイースター蜂起に対する思いの違いと関係しているのかどうかは私には分かりませんが、障害者を抱えた貧乏なブラウン家に対する隣人たちのほのかな差別意識を表現しているように思います。

     ちなみに、いちばん印象に残った台詞はクリスティの次の一言です。終盤、かつて恋焦がれた末に失恋した医師コール先生に請われ参加した慈善会で、特別ゲストとして登場するのを渋っている場面です。

     コール : 行きましょ。We've got to go.
     クリスティ : 行くよ。射撃部隊の標的になる。 Take me out to the firing squad, so.

     他人から見れば、画家・作家としての才能を認められ障害に打ち勝った優れた人格者として人々の前に紹介されるという華々しい舞台なのでしょうが、クリスティはそれを「人々から撃たれる」と感じています。この映画は、クリスティが才能があり人格者だったから最終的に幸せを手に入れたのだと観客に思われないように、丁寧に意識して作られていると思います。クリスティは癇癪も起こすし、失恋から立ち直れない弱さも持つごく普通の人間として描くことを意図しているように見えました。クリスティのような人たちを他人はおそらく深く理解することはできないのでしょうが、理解しようと努めることは万人の義務であり、この映画はそのための貢献に成功していると思います。
     とても素晴らしい映画をお奨めくださって有難うございました。本当に見て良かったと思える映画でした。

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://kawasaki5600.blog64.fc2.com/tb.php/66-690943b2
この記事へのトラックバック


最新記事