I've Seen It All / New World : Björk

2010年07月11日

I've Seen It All : Björk




I've seen it all, I have seen the trees
私はすべてを見てきた。木々を見た
I've seen the willow leaves dancing in the breeze *1
柳の葉がそよ風に舞うのを見た
I've seen a man killed by his best friend
親友に殺される男を見た
And lives that were over before they were spent
そして、全うされずに終わっていく数々の命を見た
I've seen what I was and I know what I'll be
自分がやってきたことも見てきたし、自分がどうなるかも分かってる
I've seen it all - there is no more to see
私はすべてを見てきた。もう見るべきものはない
<*2>

You haven't seen elephants, kings or Peru
見たことがないものもあるだろう。象や王様、それにペルーとか
I'm happy to say I had better to do
見られたらいいなと言えることが幸せよ

What about China? Have you seen the Great Wall?
中国は? 偉大な万里の長城を見たことある?
All walls are great, if the roof doesn't fall
どんな壁だって偉大よ。屋根が落ちさえしなければね

And the man you will marry? The home you will share?
結婚相手をまだ見てないだろう? 一緒に暮らす家だってまだ見てない
To be honest, I really don't care
正直言って、興味ないわ

You've never been to Niagara Falls?
ナイアガラの滝も見たことないよね?
I have seen water, its water, that's all
水は見たことあるわ。それだってただの水でしょ

The Eiffel Tower, the Empire State?
エッフェル塔は? エンパイア・ステート・ビルは?
My pulse was as high on my very first date *3
脈拍はそれと同じくらい高かったわ、初めてのデートの時にね

Your grandson's hand as he plays with your hair?
孫息子がきみの髪で遊ぶのを見たくない?
To be honest, I really don't care
正直に言うけど、ほんとに興味ないの
<*4>

I've seen it all, I've seen the dark
私はすべてを見てきた。暗闇を見た
I've seen the brightness in one little spark
ほんのわずかなきらめきの中にまばゆいばかりの明るさを見た
I've seen what I chose and I've seen what I need
私が選んだこと、私が必要としたことも、見てきた
And that is enough, to want more would be greed
そしてそれは充分だった。これ以上求めるのは貪欲というもの
I've seen what I was and I know what I'll be
私の過去のありようも見てきたし、これからどうなるかも分かってる
I've seen it all - there is no more to see
私はすべてを見てきたの。もうこれ以上見るべきものはない

You've seen it all and all you have seen
きみはすべてを見てきた。そして、きみの見てきたものはすべて
You can always review on your own little screen *5
いつでも見返すことができる。きみ自身の小さな映画なのだから
The light and the dark, the big and the small
光も闇も、大きいものも小さいものも
<*6>
Just keep in mind - you need no more at all
ただ、心しておきなさい。きみはこれ以上何も必要としない
You've seen what you were and know what you'll be
きみは自分の過去を見てきたし、きみがこれからどうなるかも分かっている
You've seen it all - there is no more to see
きみはすべてを見てきた。これ以上見るべきものはない


備考
*1 willow : ヤナギ
  wear the willow : 失恋する、愛人の死を嘆く
*2 歌詞不明。ビョーク独自のハミングのようなものか?
*3 pulse : 脈、脈拍、鼓動、動悸
*4 *2に同じ
*5 review : 再び見る、再検討する、概説する、回顧する、精密に調べる、批評・論評する
*6 *2に同じ


 ラース・フォン・トリアー監督(1956年、デンマーク生まれ)の映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000年)の中で歌われた歌です。主人公セルマはアメリカに住むチェコ移民で、トレーラーハウスを借りて幼い息子と二人暮らしをしています。セルマは遺伝性の目の病気にかかっており近く失明することが分かっています。そして、息子も同じ病気で13歳までに手術をすれば治るため、工場で働きながら倹約して手術費用を貯金しています。厳しい毎日の生活、不運な境遇のためか、セルマには空想癖があります。この歌のシーンはセルマを気にかけている工場の同僚ジェフと会話しているうちに湧き上がってきた彼女の妄想の内容を示しています。
 トリアー監督は1996年の『奇跡の海』では個人の愛と信仰を、2003年の『ドッグヴィル』では個人に対する社会の抑圧をテーマにしているようです。この中間にあるこの映画では、社会が個人を救うことができるのかということをテーマにしているように思えます。そして、3つの作品に共通するのは絶望をいかに希望に変えることができるかという問いではないでしょうか。
 実はこの歌を取り上げようと思ったきっかけは、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』という小説を読み、この映画を思い出したからです。女優を目指す姉と高校生の妹との確執を描いたこの小説には根深い絶望感と孤立感が漂っています。そして、同時に「私は唯一人で世界に対峙する」という覚悟も表現されており、絶望の淵からどのように人は世界に向かっていくのかという問いを立てる志の高さに心打たれました。

 最後に、映画のエンディングロールで流れる美しい歌を載せます。

New World : Björk




Train-whistles, a sweet clementine
汽車の警笛 甘いミカン
Blueberries, dancers in line
ブルーベリー 踊り子の列
Cobwebs, a bakery sign
クモの巣 パン屋さんの看板

A sweet clementine
甘いミカン
Dancers in line
踊り子の列

If living is seeing
もし生きることが見ることなら
I'm holding my breath in wonder
私は 驚いて息を呑んでいるのだ
I wonder
どうしたのだろう
What happens next?
何が起こるのだろう 次は?
A new world, a new day to see
新しい世界 新しい日 見えるだろうか

I'm softly walking on air
私は静かに宙を歩いている
Halfway to heaven from here
道の半ば ここから天国への
Sunlight unfolds in my hair
日の光が私の髪の中で蕾を開く

I'm walking on air
私は宙を歩いている
to heaven from here
ここから天国へと

If living is seeing
もし生きることが見ることなら
I'm holding my breath in wonder
私は 驚いて息を呑んでいるのだ
I wonder
どうしたのだろう
What happens next?
何が起こるのだろう 次は?
A new world, a new day to see
新しい世界 新しい日 見るために

to see
見るために
see
見る


 黒、黄、青、赤、白、茶。警笛、甘さ、酸っぱさ、華やかな音、顔にからみつく気持ち悪さ、美味しそうな香り。見えない色と姿。それでも感じられる色と姿。絶望の果てのつつましい希望……なのでしょうか?



コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://kawasaki5600.blog64.fc2.com/tb.php/93-95756b70
    この記事へのトラックバック


    最新記事